第2話 鬼にちなんだお菓子②
蓬ちゃんにも手伝ってもらい、
スイートポテトと鬼まんじゅうが完成。
そして…
「……凄い人の数……いや妖怪さん達の数」
蓬「なんだか緊張しますね…」
時間は回って15時、
元の世界ではおやつの時間…
牡丹王国の国王様による
【お菓子の試食会】が始まった。
ガヤ ガヤ ガヤ(話し声)
試食会に指定された場所は
広々とした和室…畳の独特な香りがする。
部屋には雛美火さん以外に
妖狐、やまびこ、のっぺら坊、河童….
なんと鵺もいて…
「………ひぇ…」
思わず、悲鳴が出そうになった。
大勢の妖怪達を
初めて目の当たりにしたら、
これは現実なのか疑ってしまう。
思わず、これは夢?と頬をつねった。
ぎゅむ!
……痛い…夢じゃないや
…あの中に入るのか…怖いな
でも…国王様達がここまで準備して
くれたんだし…
もう…後戻りはできない!
緊張と恐怖で震える手を抑え、
「行きましょう 蓬ちゃん」
蓬「はいっ」
意を決して、大量のお菓子を乗せた
荷車と共に大部屋へと足を踏み入れる。
ヒソ ヒソ…(囁き声)
妖怪1「あの黒髪の嬢ちゃんが
クモード王国から攫ってきた……
お菓子と言う不思議な食べ物を作るそうだ」
妖怪4「なに?クモード王国って
獣人が多く住む…よく生きてこれたな
酷い仕打ちとかされてないだろうか
心配だ」
妖怪2「…蓬までいるぞ、
おい人間をここに出して大丈夫か
何かあったら…」
妖怪3「他の王国だと人間をぞんざいに
扱っているからな…
この屋敷内にいれば安心だ……」
ヒソヒソ…(囁き声)
………?
なんだろうこの違和感…
お菓子を所定の場所に置いてる最中
妖怪さん達の話し声が聞こえたんだけど…
……ここの王国の妖怪さん達は
人間を大事にしているのかな?
昨日の 雛美火さんのやり取りだって
やけに人間を気にかかっていたよね
……いや…なんだか
そうじゃない様な気がする…
もっと別の……
「ねぇ…蓬ちゃん この国の人達って
どうして…人間を……(小声)」
疑問に思い蓬ちゃんに聞こうとしたが、
蓬ちゃんの顔は何かに耐えている様な
悲しい表情になっていた。
蓬「………! あっごめんさない
なんでしょうか。真澄さん?」
「……ううん 何でもないですよ
…と言うか、何話そうかど忘れしちゃいました 思い出したらまた、話しますね」
蓬ちゃんの表情から見て
…これは、あまり深く関わっては
いけないと感づいた。
きっと この国 特有のしがらみが
あるのかもしれないから…
でも…せめて
お節介かもしれないけど、
蓬ちゃんの手助けはしたいな…
相談とか…
蓬「ふふっ 私もたまにありますよ」
「あはは…恥ずかしいな
(よかった!蓬ちゃんの表情が明るくなった)
……えーおっほん では蓬ちゃん…」
蓬「!ええっそうですね
お菓子を小皿に載せてっと… 」
「国王様達の所へレッツゴー!」
上品にしずしずと国王様と雛美火さんの
元へお菓子を運んだ。
「大変お待たせ致しました
国王様、王女様…この度は
牡丹王国の名産品オサツイモで
【スイートポテト】と【芋饅頭】を
作って参りました」
国王「ほう…オサツイモから…
二人とも感謝する…」
雛美火「真澄さん、蓬さん、ありがとう
…こんな大量のお菓子
作るの大変だったでしょう」
「いえ、蓬ちゃんが協力してくれたので、
助かりました」
…一人だったらこの量は無理だった…
特にお芋を鍋で茹でる作業は重くて大変だった
蓬ちゃんがいて本当に助かった。
雛美火「…ところで1品でも良かった所
用意してくれたお菓子は2品なのは
何か理由があるのですか?」
「はいっ ここの王国の人々が
どちらのお菓子が好みか、
確認をする為、今回は2種類にしました」
…そう、お菓子を1品だけにするのは
不安があったから
牡丹王国は見た感じ、昔の日本そのもの
服装は着物や和服、
食事だって和食で、
今朝の朝食で味噌汁と白米が出た時は、
懐かしすぎて感動した。
お屋敷も外の景色だって…
これらの事を考えると
洋菓子より和菓子の方が
口に合うんじゃないかと考えた。
ただ、万が一、口に合わなかった事も
考えて、洋菓子も作ったのだ。
「今回、作りましたお菓子は、
1つ目はクモード城でも販売しております
洋菓子の【スイートポテト】と
2つ目は和菓子の【芋饅頭】です」
…本当は鬼まんじゅう だけど…
雛美火さん達が【鬼】だという事は
機密事項だから…
芋饅頭と紹介させて頂きます
国王「…ふむ、どちらも美味しそうだな
まずは【スイートポテト】から食べよう
皆の者!」
国王様が従事者(妖怪)の方へ向くと、
妖怪さん達は手を合わせた。
国王「手をあわせて、いただきます!」
従事者達『『いただきます!』』
声かけした後、国王様達は
さっそく スイートポテトを
手に取り口に入れた。
雛美火「……うっ…うまい
クモード王国の人々は一足先に
こんな美味しい物を……羨ましい」
国王「舌触りが良く美味しいな
……ただな…くどくないか?食べるとしたら
1つで充分だな……」
…待ってましたその言葉!
やっぱり、ここの人達、
洋菓子は口に合わない
その証拠に一部の妖怪さん達も
口元をおさえ、
国王様と同じ表情をしている
雛美火「父上!
真澄さんになんて失礼な事を!!
それに皆も!なんて顔しているのよ!
こんな美味しいお菓子を作ってくれたのに
酷いです!!」
「雛美火さん大丈夫ですよ」
雛美火「へっ?真澄さん怒らないのですか?」
「そのお言葉は予想がついておりましたから
では、次に【芋饅頭】を食べて見てください きっとそちらの方が…お口に合うと思います」
国王「……ふむ……むぐ…!!
これは…最初に食べたお菓子より
味がシンプルで…美味い!」
雛美火「……私もこちらの味の方が…
緑茶にあいますし…」
城の従事者達も国王様同様、
スイートポテトより、
鬼まんじゅうの方に、
顔を綻びながら、食べていた。
妖怪1「美味い!お代わりちょうだい!」
妖怪2「私もちょうだい!1個じゃ足りない」
「……!はっはい ただ…」
蓬「はーい、今お持ちしますね
少々お待ち下さい」
蓬ちゃんは、
『真澄さんここは任せて下さい
真澄さんは料理場でお話した事を…』と、
私の耳元で囁き、お菓子が置いてある方へ
向かっていった。
蓬ちゃんありがとう!
じゃあ、お言葉に甘えて、
私は……
「…皆さん、和菓子の方が
口に合うのかも知れませんね…
…あの国王様…雛美火様…
私事ではございますが、
お願いがございます!」
国王様「………なんだ言ってみろ」
「この国にお菓子が必要ならば、
全身全霊で協力します…その代わりに…」
雛美火「………っ………」
ここでちゃんと言わなきゃ、
何も変わらない!
言うんだ私!!
すう…と
大きく息を吸い込んでから
「…お菓子で満足いただけましたら、
私をクモード王国に戻して
頂けませんでしょうか
大切な人達がいるんです
お願い致します」
真っ直ぐ国王様と雛美火さんを見て
私は意を決して 自分の気持ちを伝えた。
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