第2話 鬼にちなんだお菓子①



……………………………………………………



……………………………………………



次の日の朝…



「材料は…オサツイモにお砂糖、

小麦粉…へえ…たったこれだけで

あのお菓子が…」


私は牡丹王国の台所を借り、

お菓子作りの作業に取り掛かっていた。


蓬「真澄さん スイートポテトの材料、

持ってきました」


「ありがとうございます 蓬ちゃん

早速始めましょうか」


蓬「はい よろしくお願い致します

どんなお菓子ができるか楽しみ!」


そうワクワクしながら、

オサツイモを手に取る

可愛らしい女の子は【風里 蓬ちゃん】。


彼女は牡丹王国の食事に

携わる仕事をしていて、

私と同じ人間。


正直、同じ人間の蓬ちゃんがいて

良かったと心の底から思っている


何故なら城の従事者は

ほとんど妖怪だと言われ、

昨日の雛美火さんの壁破壊を思い出して、

恐怖と不安が出てしまったから


当の蓬ちゃんも人間が自分しかいなくて、

心細かったとか、


その為、蓬ちゃんとはすぐに、

仲良くなった。


「まずは…オサツイモの処理から

半分は皮を剥きながら、角切り…

半分は…蓬ちゃんオサツイモを

湯がいて、茹で上がったら、

イモペースト状に潰して下さい」


蓬「了解です!オサツイモ、湯がいてきます」


大きな鍋に大量のオサツイモを入れて

湯がき始めた。


この量から見て

今回、お菓子を食べる人は、

国王様や雛美火さんだけではない。


牡丹城の従事者全員を含めて…


国王様曰く、みんな【お菓子】と言う

食べ物をとても楽しみにしているらしい…


……だけど、もし気に入らなかったら…


……彼女らは鬼だし…

城の従事者は全員、妖怪…

最悪、人間の私と協力してくれた蓬ちゃんも

食用にされる可能性も……


食用にされたら、オキニス君…

ピンキーさん、ヨーグルさん…

クモード王国の人達と二度と…


蓬「真澄さんおイモをペーストにしました

次は何をすれば良いですか?


あっそれと美味しいお菓子を作って

妖怪の皆さんにギャフンと言わせましょうね」


「……!あっありがとうございます

ギャフンですか…ふふっ面白そうですね

では……」


……最初から駄目だと決めつけてはいけない


雛美火さんは材料を用意してくれて、

蓬ちゃんも協力してくれているのに…


彼女達に失礼だ。


今は美味しいお菓子を作るのが、

一番の優先でしょ私…


…もし、上手くいったら、

その後はクモード王国に帰る方法を

探ろう。


よし!


「では、蓬ちゃんペーストしたイモの中に

クラニュー糖と生リームを加えて、

混ぜてください」




…………………………………………………



……………………………………



…………………………



……………………


………………


………


「「できた!」」


手順はどちらも複雑では無かったので、

失敗せずお菓子は完成した。



蓬「うぁぁ…美味しい!

これがお菓子…どちらも美味しいけど…

私こっちの方が好きです…」



「もしかしたら、牡丹王国の人々は

シンプルな味の方が好きかも

しれませんね…


味見が終わりましたら、

お菓子をお皿に盛り付けましょう」



蓬「はいっ…あっでも今は一休み…」


ズズッと緑茶を飲む蓬ちゃんをみて、

ふふっと笑みが溢れた。


私も鬼にちなんだお菓子、

【鬼まんじゅう】を口に入れ、

素朴で優しい味に心が温かくなった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る