第6話 大切な貴方②(オペラ)


ダージリン「シリンヌ王子待ってくれ

……姉貴、ちゃんと聞いたか?」


シリンヌ「………ぇ」


ダージリンさんの掛け声に、

ピンキーさんは、おそるおそる

私のポケットから出てきた。




ピンキー「えぇ…全部 ちゃんと聞いたわ

シリンヌ様、今の話は本当ですか」


襲われた恐怖心もあるのか、

羽を震わせていたが、紅い瞳は

まっすぐシリンヌ王子を見据えている。


まるで、『私はもう逃げない』と

彼に語っているようだった。



シリンヌ「ピンキー……生きて…いる……」


ピンキーの姿を目にした瞬間、

ボロボロと流れていた涙は、

さらに溢れ出た。



「……………」


本当にシリンヌ王子はピンキーさんの事を、

心の底から愛しているんだと、好きなんだと

私でも理解できた。


…嫁候補50人もデマだったし…

遊びじゃなく、

本気でピンキーさんを好きだから抱いた…


ピンキーさんが嫌がっている事も理解して、

ちゃんと反省をしている…


……不味い…

これはやり過ぎちゃったかな…

遊び人だと思ってコテンパにしようと

思っていたのに…


ここまで誠実な人物だったとは…


ココナ上司や職場の仲間達も

私と同じ考えなのか、苦笑いしながら、

手に持っていた聖水をさっと後ろに隠した。



シリンヌ「ピンキー!悪かったっ俺は…」


ピンキー「………シッ…シリンヌ様」(ビクッ!!)


彼が妖精姿のピンキーさんに触れようと

手を伸ばした瞬間…


バシッ!!


ダージリンさんに思いっきり、

手を叩かれた。


ダージリン「シリンヌ王子…今、

姉貴に触れるの厳禁な…見ろ…

怯えているぜ。


お前が姉貴にやった事、忘れてはないよな?」


シリンヌ「………………」


シリンヌ王子は切なそうな顔して、

手を元に戻した。


ダージリン「…シリンヌ王子、

悪かった 嘘をついて…

このまま何もしなかったら

姉貴はお前に連れて行かれると思い、

俺様達は今回の騒動を起こしたんだ 」



シリンヌ「……ダージリンの

言う通りだ 俺の気持ちだけでピンキーを

シラトス王国に迎え入れるつもりだった


……だが、今回の出来事があったからこそ、

俺の行動はあまりにも身勝手すぎる事に

気づく事ができた…」


シリンヌ王子は自重気味に頭を伏せた。


シリンヌ「……ピンキーをシラトス王国には連れて行かない」


!! よかった!ピンキーさんは

クモード王国にいられるのね!


職場仲間達もピンキーさんも、

彼の言葉に安堵の表情になった。


シリンヌ「……ただし…頼みがある

もう一度、ピンキーと話がしたい

この通り頼む!! 何もしない約束する!」


ダージリン「………どうする 姉貴?

嫌なら断ってもいいぞ」


頭を下げるシリンヌ王子に対して、

ダージリンさんは、ピンキーさんを見た。


ピンキーの答えは…


ピンキー「大丈夫よダージリン…

……シリンヌ様、お話しましょう

私も貴方様に話したい事がいっぱいあります」


…笑みを浮かべ、そう言った。


ダージリン「…だそうだ…

2人で話をするのはいいが、

俺達も後ろで同席する あっ勿論

話の内容は聞かないように耳栓をする


ただし…姉貴に触れた瞬間…」


パチンと指を鳴らすと、

職場の仲間達とココナ上司は

聖水をシリンヌ王子に向けた。


ダージリン「お前の嫌いな聖水と激辛菓子が飛んでくるからな いいな?」


……あっ だから

私に激辛お菓子を作ってくれって

言っていたんだ…


みんな聖水構えてるし

私も構えた方が良いよね


受付の机台の中に置いた激辛お菓子を

取り出し、私も構えた。


シリンヌ「……うっ……分かった

約束するから今すぐその物騒な物をおろせ」


ダージリン「みんな聖水と激辛お菓子を

降ろせ」


職場仲間1「ピンキーちゃんにもう一度触れたら アンタなんて聖水塗れにするからね!

女の敵!!!」


ココナ上司「わしの部下は優秀だからな

甘い目で見てると痛い目合うぞい!

シラトスの王子様…」



文句を言いつつ、

渋々とみんなは聖水を降ろした。


それに合わせ私も激辛お菓子を

机の中に戻した。





シリンヌ「……じゃあ…ピンキー

いいか?」


ピンキー「はい、シリンヌ様」



本当は2人の話の内容を聞きたいが、

プライバシーという事で

私は両耳に耳栓を付けた。



シリンヌ王子とピンキーさんは

カウンター席に腰を下ろし話を始めた。



……………………………………………………


※ここからシリンヌとピンキーの会話のみと

なります。2人以外は耳栓していて、話の内容は聞こえていませんが、シリンヌが手を出さないように見張っています。


※ピンキーさんは人間サイズに戻りました。


※ピ…ピンキー

※シ…シリンヌ


……………………………………………………




ピ「では、よろしくお願い致します

シリンヌ様…」


シ「………………」


ピ「シリンヌ様?」


シ「……もう

…シリーニャ君って呼ばないのか?

言葉遣いも改めなくていいから…

他人行儀で嫌だ」


ピ「………シリンヌ様……

分かったわ 元に戻すね

ねえシリーニャ君……」


シ「なんだピンキー?

(きっと二度と私とは関わらないでと、

言われるのか?今まで正体を騙していたし…許されない事をした、ピンキーと会話するのはこれで最後かもしれない)」


ピ「今まで、ちゃんと貴方を見なくて

ごめんさない 貴方の気持ちに気づかなくて

ごめんなさい」


シ「…!!……なんで…

ピンキーが謝るんだよ……怒れよ!!

俺はお前を犯して傷付けたんだぞ…」


ピ「………」


シ「ダージリン達が止めに来なかったら、

俺はお前の気持ちを無視して、 シラトス王国に連れて行こうとしていたんだぞ」


ピ「うん……」


シ「謝るのは俺の方だ

…ピンキー…許されないのは分かってる

すまなっ「「謝らないでシリーニャ君」」


シ「でもっ…!!」


ピ「さっき謝ったでしょ もう充分よ

また、謝ると私は怒るからね


あのねシリーニャ君、私、貴方にお願いが

あるの」


シ「ああ……言ってみろ 何だって受け入れる」



ピ「ありがとう…シリーニャ君、


じゃあっ…


もう一度 私と親友になって下さい

今度は本当の貴方自身と…

貴方の気持ちも…知った上で……!」

 


シ「……はぁ?! えっ…!

俺を許してくれるのか?

いいのか?また会いに行っても?!」


ピ「許すも何も…もう!

勿論よ!改めてシリーニャ君

よろしくね」


シ「ピンキーっ…」


ガバッ!!(シリンヌがピンキーを抱きしめる)


ピ「///// !!」


ギュウウゥゥ…


シ「……っありがとう」


ピ「あっ…あの////……

シリーニャ君…私から離れた方が……」


シ「……あっ そうだった

まっ待て!これは邪な感情はっ」





バッシャーン!!!




もう既に遅し、聖水がシリンヌ王子に

降りかかった。


そして私が作った激辛お菓子も

ココナ上司によって投げられた。





……………………………………………………



……………………………………………………



………………………………………



…………………………



その後…


シリンヌ王子とピンキーさんは、

仲直りをして、わだかまりもなくなったのか

2人とも顔が晴れやかになっていた。


シリンヌ「役所の皆さん

本日は俺の私用で迷惑をかけてすまない…

後日、詫びの品を送る


じゃあ ピンキー また会いに行く」


ピンキー「えぇ 待ってるわ シリーニャ君!」


ピンキーさんの笑顔に微笑み返し、

シリンヌ王子は背を向け役所を出ていった。



シリンヌ王子が出ていった瞬間…

私もダージリンさんも、その場いる全員が

へたり込んだ。


ダージリン「………はぁぁ めっちゃ

怖かったぁぁ…良かった姉貴が攫われなくて」


「シリンヌ王子が悪い人じゃなくて

良かったです…」


ココナ上司「いや…寿命が縮んだわい…

何じゃいあの禍々しいオーラは…」


本当に今日は緊張と恐怖でどっと疲れた。

帰ったら早く寝よう…



ピンキー「皆さん…今日は本当にありがとうございます!」


笑みを浮かべ涙ぐんで頭を下げる

ピンキーさんを見て私達はこう言った。





『どういたしまして!』って




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