第9話 真澄、一旦 元の世界に戻る(アップルパイ)①




バニラビーンズをばあやさんから頂き、

無事にお城で売る《カスタードプリン》が

完成した。


ただ…城の方々が気に入ってくれるか、

わからない為、数は20個ぐらい用意して、

そのうちの10個はカボチャプリンにした。


城の方々はお金持ちばかりで

美味しい食事をしている。


貧乏人の私が作ったお菓子が

果たしてその方達に通用するのか…


不安を胸に、お城の中にある

レストラン付近で…

(レストランのオーナーには

ちゃんと許可は頂いております。)


「いらっしゃいませ!

ランチのデザートとして

プリンは いかがでしょうか」


試食+販売した所…



宰相「……美味い!これはお姉さんが

作ったのかい?家族に食べさせたいな

3つ貰おう。」


メイド「パンプキ(カボチャ)のプリンなんて…

想像もつかなかったわ。

生クリームという物と

相性がいいわ!1つ頂戴。」


大臣「1個が50ルーベンって…

赤字じゃないですか!

貴方 申し少し高くして売りなさい。

価値があるのにプリンが泣きますよ!

せめて1個140ルーベン位」


色んな方々が、

試食して購入してくれたので、

ランチの時間が終わった頃には…



ヨーグル「えっ…!もう完売しちゃったの?!

カスタードプリン…」


ヨーグルさんの子供達「「……そんなぁ……」」


20個全て完売した。

……自分の半分位は売れ残るかと

思っていたが、正直驚いている。


「こんにちは ヨーグルさん、

ココレットちゃん、アイリッシュ君、

ブルー君…ごめんなさい全て

売れてしまいました。


えっと…何故、ここに?」


ヨーグル「ここのレストランに

食材を渡す為よ!お昼時、

真澄ちゃんのお菓子が売っていると

ここのオーナーに聞いたんだけど……残念」


うっ…ヨーグルさん…それに子供達が

ションボリしてる…なんか罪悪感が…


「すみません……ヨーグルさん達には、

後日、カスタードプリンを作りますね。

なので……今回は……」


ガサ ガサ


自分のバックの中から、

15時に食べる予定だった

スイートポテトを取り出し、

ココレットちゃんに渡した。


「スイートポテトです。

おやつに良かったらどうぞ」



ココレット「わぁ ありがとうます!

真澄お姉ちゃん」


アイリッシュ「何この食べ物初めてみた!

食べるの楽しみ」


ブルー「………ごくっ」



ションボリした子供達は、

表情が明るくなり、目を輝かせた。


ほっ…よかった 元気になって…



ヨーグル「ありがとう!!真澄ちゃん

あっ…そのお菓子の値段は……」


「いっいえ、売り物でないのでお金は要らないです。」


ヨーグル「……うーん…それだと

良くないので物々交換と言う事で、

私はこのチーズをあげるよ」


「ありがとうございます。ヨーグルさん」


お礼を言葉にして、頭を下げた所、

声が聞こえた。


オーナー「ヨーグルさん、今の時間帯なら、

誰も来ないので大丈夫です。」


ヨーグル「はーい!

じゃあ3人とも行きましょうか


あっそうだ真澄ちゃん 伝言でルビーちゃ……

いやルビー様が後で1階の客室に

来て欲しいって…それじゃあまたね!」


ギクッ!!


……オキニスさんのお母さん…

もしかして……


「…………はい分かりました!

また後日お店にプリン持って行きますね」


ココレット「またね!真澄お姉ちゃん」


……4人に感づかれないように

笑顔で手を振った。



4人が見えなくあった後、

どっと冷や汗が出た。


どうしよう どうしよう どうしよう



まさか…バレてしまったのか…

オキニスさんに口付けされた事…


……本来であれば、無理にでも

大人の私が止めなければ、

いけなかった。


…17歳なんて…私のいた世界じゃ、

高校生2年生よ……

まだ、若いし、未来もあるのに…

8歳年上の女とスキャンダルだなんて……


ルビーさんはどう思うんだろう。


母親なら怒るだろうな…

よくも息子を傷ものにしてくれたなって……


なにより、倫理的に良くない。

もし…もしよ…刑罰が

元いた世界と同じだったら…


間違いなく私は逮捕される。


………申し訳なさすぎて

ルビーさんに合わせる顔がない。

このまま…そっと立ち去ろうか…


そう思い急いで片付けをしている所、

ルビーさんがやって来た。


ルビー「真澄ちゃーん!会いたくて

私から来ちゃった。ヨーグルちゃんから

伝言受け取った?」


「……ルビーさん…」


「わぁ凄い!カスタードプリン

全部 完売している。

……真澄ちゃん……?」


ルビーさんは、固まってしまった。


何故なら…


ボロ ボロ ボロ


「あっ…あれっ…」


私が涙を零していたから、

ルビーさんの顔を見てしまったら、

罪悪感が抑えきれなくなった。


その様子を見たルビーさんは

そっと私の頭を撫でて、


ルビー「真澄ちゃん…この後、

お茶にしましょうか


涙の理由も良かったら

教えてくれないかしら…」


…と優しく声を掛けてくれた。


………………………………………………




……………………………………



……………



ここはクモード城の1階にある客室。




ルビー「お茶をどうぞ 落ち着いた?」


カチャと私の目の前に紅茶を置く。


真澄「ずびっ…ありがとうございます。

ルビーさん…」



カスタードプリン販売後、

現在、私はルビーさんとお茶をしている。


ルビー「いえ、どういたしまして

ねぇ…真澄ちゃん…単刀直入に聞くけど…」


私が泣き止んだ所、見計らって

ルビーさんは切り出した。


ルビー「真澄ちゃんが泣いている理由って

オキニスが原因?」



ブハッ!!!


単刀直入だったので

飲んでいた紅茶を思いっきり吹き出した。



「ゲッホ ゴッホ ゲホ ゲホ!」


ルビー「だっ…大丈夫?!落ち着いて…

しっ深呼吸しましょうか」


すぅーはぁーすぅーはぁー…


深呼吸をしてやっと落ち着いた。


…流石、ルビーさん

まだ何も言っていないのに…


……言っても良いのかな…

御宅の息子さんと

口付けしてしまいました…と


ううん…ちゃんと言わなきゃいけない。

隠しては駄目。


話したら…ルビーさんはきっと怒るだろう。

最悪な場合、二度とこんな風に仲良く

出来ないかも知れない。


もちろんオキニスさんとも…


……嫌だな…


悲しいけど……

これはオキニスさんを止める事が

出来なかった私への罰だ。


すぅぅと息を吸い込んでから

真っ直ぐルビーさんの顔を見た。



「ルビーさん…申し訳ございませんでした。

私は貴方の息子さんと…「…無理矢理、キスされたんでしょ」はいっ…え?」


ルビーさんの顔をよく見ると、

怒りが含まれいる。


肩までワナワナと震わせている。


ひぇ…どうしよう物凄いご立腹だ…


「すっ…すみません!!嫌ですよね

大切な息子さんがこんな女と

口付けとかっ…」


ルビー「違うわ!!

真澄ちゃんには怒ってない!

申し訳ない気持ちでいっぱいよ!


あの子、最近自分の口元触るし、

真澄ちゃんはオキニスに対して、

挙動不審だから…


もしかしてと思ったら…やっぱり……

ちなみに今回のキッキスは……まさかっ…」


ガシッ!!


私の肩に手を置きずいっと顔を近づける

ルビーさん。


…うっ……

これも言わなきゃいけないのか。


「……初めてです……」


意を決して、ルビーにさんだけ聞こえるよう

小声で呟いた。


うわぁぁ言いたくなかった。

彼氏なし歴=年齢だし、

家庭環境も色々あったから

恋愛経験すらない…


ルビー「……初めて……」


ブチッ


何か切れる音がした。

えっ…と…ルビーさん?



ルビー「オキニス!!

真澄ちゃんになんて事をっ!!!

しかも出会ってたった2ヶ月で人様の

ファーストキスを奪うなんて許せない!」


「おお落ち着いて下さい!ルビーさん

大人である私がオキニスさんを

止める事が出来なかったのが、

そもそもの原因なんですから…」


ルビー「落ち着いてられるかー!!

それに止められる訳ないでしょ!

男と女の力の差なんて歴然よ。


……決めた…真澄ちゃん明日から1週間、

お仕事はお休みで良いから…

ちょっと…ここで待ってて!」



ガタッ!!とイスから立ち上がり、

ルビーさん部屋から飛び出した。


バタン!!



「…………」


突然のルビーさんの行動に驚き、

閉まるドアを呆然と見るしかなかった




…………………………………………………




…………………………………………



…………………………………………



(20分後…)


ルビー「ただいま真澄ちゃん!!」


戻ってきたルビーさんは、

とある人物を連れてきた。


その方は黒いコートを着ていて

コートから覗く褐色の肌に

鮮やかなアメジスト色の瞳を持っていた。



三日月「初めまして、

貴方が新川真澄さんですね。


私、クモード城の魔術師 三日月と申します。

以後お知りおきを…」


「よっ…よろしくお願いします。三日月さん

あの…ルビーさんこれは一体…」


魔術師の三日月さんにルビーさんの手には、

何に使うかわからない魔法道具。


その後ろには大きなリュックサックが

置かれている。


異世界転移ものの小説で見たことある場面…


これじゃあまるで…


「…ルビーさん…もしかして…」


私の思惑に感づいたのか、

ルビーさんはにっこり笑い、


ルビー「真澄ちゃんには、1週間だけ、

元の世界に戻って貰います。」


私に魔法道具を渡しそう告げた。




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