パッションフラワー
夕食を済ませ自室でくつろぐ、この時間が好きだ。もうシャワーも浴びたし、歯磨きもしたのでいつでも眠ることができるのだけれど、この時間が短くなってしまうと思うと、まだ眠りたくないという気持ちになる。
こんなとき私はこころのなかで声を聴く。
一番私のことを理解してくれている友人がそこにいて、似た者同士、話をするのだ。
私と友人は同じ身体で生きている。
友人はなかなか外には出てこないのだが、私が呼ぶといつでも話をしてくれる。
いつからか覚えていないが役割を分担するようになったのだ。例えば私が基本的に外に出ていて、友人は私たちの大事なこころの門番をしてくれている、といった風に。
この世界を問題なく生きていくには、この役割分担がいい方法なのだと、思っていた。しかしこれでは私と友人の距離がひろがるばかりで、私たちの身体が悲鳴をあげてしまうことに最近気がついた。会話する時間が必要だ、そう思い今に至る。
私たちはどうしたいのだろう。
“友人の方が外に出ればいい”と思い、私は私をなくしたくなったこともあった。そうせずにここまで来れたのは、今まで繋がってくれたたくさんの素敵な人たちがまわりにいてくれたから。
友人が言う。
『私たち、ひとつになってみない?』
その考えはなかった。
お互いを大事にするあまり、自分を疎かにしていた私たちは、依存しあっていた。
そうか、ひとつになってしまえば今まで抱えていた矛盾も、苦しさも、手放してしまえるのかもしれない。
そう気付いたときには、もう声は聴こえなくなっていた。
不思議と寂しくはない。
私は安心して眠りにつく。
ずっとこうしたかった。
仲良く手を繋いで外に出たかった。
【パッションフラワー】
甘い草木の香りとくせのない味に、
かすかな渋み。眠れない夜におすすめのハーブ。
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