この作品を君に捧ぐ

樟秀人

第一章 再起する凡才

プロローグ

「ねえ、あなたは私が満足する作品を書いてくれる?」

 病室の窓際に立ち、彼女はそう言って微笑んだ。当の本人である男は頭を悩ませた。彼には自信がなかった。今まで彼女が満足した作品など書いたことなどないから。だが見栄っ張りの彼はこう答えた。

「そうだな……何年掛かるか分からないけど、君に最高の作品を贈るよ」

 その時のことを彼はあまり覚えていない。ただ、彼女は最後に何かを言おうとしていたことだけは憶えている。


「……期待しないで待ってる。だってあなたはーー」

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