君は誰?僕も誰?

ぐらにゅー島

第1話

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。

メロスの側にたった読者は、王様を「悪」だと思うに違いない。


…では、王様は本当に悪役なのか?


王様だって、他人を信じられなかったから邪智暴虐の王になってしまったんだ。もともとは良い人だったかもしれないじゃないか。


じゃあ、元々の王様と、今の王様は同じ人なのだろうか?

人は移り変わっていく。くるくると、季節のように。



朝起きたら、彼女がいた。


代名詞として「彼女」と言っているのではない。いわゆる恋人、という意味合いで使う「彼女」がいた。


「やっと起きたね。」

烏の濡れ羽色の長い髪に、真っ白なワンピース。


彼女はベットに横たわる僕の髪をふわりと撫でる。


「もう、一ヶ月も寝込んでたよ。」

そういうと彼女はほのかに僕に笑いかける。


「ねえ、私の名前、呼んでよ。声が聞きたいんだ。」

彼女は僕にお願いをした。それなら僕にも答える義務があるんだろう。


「君は誰?」


僕には記憶が無かった。今までのものが、全部全部全部。

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