四聖の錬金術師
第114話 四属性の加護の影響
「メリア様、教皇様から土の女神の盾が送られてきました」
「ずいぶん早かったわね」
エリザベートさんに伝えてから一ヶ月も経ってないじゃない。
そう思ってバートさんから箱を受け取って蓋を開けてみると、ハンドボールくらいの総オリハルコン製の真球が収められていた。そっと球に触れてみると、暖かい感覚に包み込まれる。どうやら、これが土の女神の盾のようだわ。
「盾というより球に見えるんだけど、どうやって使うのかしら」
『
私は試しに流体金属をイメージすると、球体が崩れて額にサークレットのようなものが装着され、半径二メートルくらいの薄い金属の球体に包まれた。
「ブレイズさん、ちょっと攻撃してみて」
「別にいいが、破れても寸止めするから下手に動くなよ」
ブレイズさんは裏打ちの雷神剣を抜剣すると、上段から振り下ろした。
キンッ!
「破れるどころかびくともしないわね」
私はイメージを変えて、十二枚の自律式浮遊盾を思い浮かべ、同様に攻撃してもらうと、どうやって感知してるのかわからないけど、剣に合わせて盾が移動して剣を防いだ。
ここまでくると、どこまで対応できるのか更に試したくなってくるわ。
「青龍、ちょっと盾の隙間を狙って手のひらくらいの水玉を百発くらい撃ってみてくれる?」
『
そう言って青龍は無数の水球を中空に浮かべたかと思うと、私に向かって三百六十度全方向の飽和攻撃をしかけてきた。
「ちょ!?」
バシュシュシュシュ!
しかし向かってきた水球は、その
『この通り、隙間があるように見えて、実際は
青龍の話だと、土の女神の盾を手にした状態で常識的攻撃で防御を抜くのは、ほぼ不可能なのだとか。
「ほぼってことは、一応限界はあるのね」
『隕石が直撃すれば多少は衝撃を感じるやもしれぬ』
「・・・それは心強いわ」
ま、まあこれで安心してガイアで食材探索できるというものね。
気を取り直した私は、地の女神の盾は形状に依存せず守りの力を発揮できるというので、身につけるサークレット以外は四つの球にして頭上に浮かべておくことにした。
「ポーションの効果は確かめないのか?」
今までの傾向からテラなら九倍、ガイアなら九十倍になるだけだと思うけど、一応確かめておこうかしら。そう思って中級ポーションの材料でポーションを作ったところ、なぜか、黄金色をした最上級ポーションと思しき水球が浮かんだ。
出来上がったポーションを瓶に詰めて鑑定をすると、
最上級ポーション(+++):
やはり二段上のポーションだった。水で薄めれば十本の上級ポーションになるから実質十倍なの?でもガイアでポーションを作ったときは七十倍のポーションになっていたはずだわ。
追加検証として白糸の滝の神仙水を使って神聖錬金術で生産してみたところ、七倍くらいの効率だった。加護の効果が四段ではなく五段になっているわ。
『
「精霊の加護?よくわからないけど、それでもう一段分上の効果が得られたのね」
そうなると、究極のポーションが上級ポーションの材料で作れてしまうわね。定期的に飲んでいれば、不死は無理でも不老は実現できてしまうのかしら。
『そのようなものを使わなくとも、創造神様に四属性の女神様、さらに精霊の加護を得た
「・・・」
私の考えを読んで軽い調子で回答した青龍の念話の内容に思わず絶句した。何もしなくても、六重加護がもたらす過剰な
「くっ・・・こうなったら月光草を安定栽培できるようにして、悠久の時を生きる道連れを作って、ガイアにトンズラするしかないわ」
死にたくない人は沢山いるでしょう。これがバレたら永久に幽閉か、よくて軟禁よ。
「何を物騒なことを言っているんだ、ポーションはうまくできたのか?」
「ブレイズさん・・・ええ、十倍くらいの効果が得られたわ」
ブレイズさんも一緒に来て欲しい――
思わず、そう
まだ、不自然だと思われるまで何年か猶予はあるでしょう。ブレイズさんだって、役目で私の護衛をしているだけなのだし、長い時を生きることの是非も考えずに軽々に告げるべきではない。
そう考えると、何故か胸がぎゅっと締め付けられるような思いに駆られた。今まで気がついていなかったけど、私はずいぶんブレイズさんに依存していたのだわ。
◇
夜になり寝室に移った私は、ブレイズさんがいないうちに青龍に加護の影響について、もう少し詳しい話を聞いていた。
「今までの加護持ちはどれくらい生きていたのかしら」
『天寿を
それなら、普通より長生きしたとしても、不思議ではないのね。病死、事故、過労死、それから他殺されなければという条件がつくけど。最初に聞いた時は気が動転してしまったけど、百年や二百年あるなら色々な可能性を模索できるはずよ。
それなら選択肢を増やすという意味で、今まで以上にガイアにも居場所を作ることにしよう。
『フェンリルちゃん、ガイアでちょうどいい無人島は見つかったかしら』
「いくつかあったよ!でも、前みたいに見つかるといけないから浮島にしたらどうかな!』
なるほど、せっかく開発しても放棄したら最初から作り直しだものね。
「わかったわ、明日からガイアの無人島を浮島に作り替えて、
『
青龍が水を自在に操作できるように、玄武なら道路や運河に敷設する岩石をコンクリートやそれ以上に耐久性のある構造に作り替えて配置するのは造作もなくできるという。
「でも、鳳凰みたいに山が大噴火するのは御免よ?」
『玄武は鳳凰のように派手な演出はしない』
『どういう意味よ、失礼しちゃうわ』
いつぞや聞いた念話の調子に窓の外を見ると、鳳凰が木にとまってこちらを伺っていた。私が窓を開けると、スイッと部屋の中に入ってきた。
「なんだか久しぶりね。どこに行っていたの?」
『色々なお酒を作っているところを見物していたわ』
ウィリアムさんのところかしら。そういえば、今年の冬に、三年もののウイスキーが完成するわね。半年先が待ち遠しいわ。
『それより、また加護を増やしたのね。六重加護持ちなんて初めて見たわ』
「ええ、それで少し大変なことになりそうなの」
私は寿命や不老の問題、今後はガイアにも積極的に拠点を作りにいく計画などを説明した。
『それで玄武を起こそうというわけね。なら起こしてきてあげるわ』
「そう?それならお願いするわ」
その代わり火の女神様に献上するお酒を出せというので、私は赤ワイン、白ワイン、ビール、日本酒、神酒、ウイスキー、ブランデー、ラム酒、ウォッカ、シードル、
「まだ完成とは言えないものもあるけど、今のところはこれくらいよ」
『信じられないほど作ったのね、十分だわ』
そういって鳳凰がひと鳴きしたかと思うと、テーブルのお酒が全て消えた。
「え!?本当に火の女神様が飲むの?」
『当たり前でしょう。じゃあ、行ってくるわ』
そう言って鳳凰は入ってきた窓から再び外に出ていくと、大きく羽ばたいて西の方に飛んでいった。
「鳳凰って夜でも飛べるのね」
鳥目で見えないというのは神獣には当てはまらないと、鳳凰が聞いたら怒りだしそうなことを考えつつ、明日のガイアでの無人島開発に備えて、私は眠りについた。
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