ふたりからひとり
ゆる男
ふたりからひとり
かんぱーい!
私は350mlのチューハイと彼は500mlのハイボールを片手に【カンッ】と音を立てて大きな一口で飲んだ
彼が大きな声で美味い!と言う
それを聞くと私の心も不思議と暖かくなる
私が作った料理を食べながら2人でお酒を飲むのが毎日の日課だった
でも・・・その日課も今日で終わり
彼と過ごした2年半の月日は飲み干された缶チューハイのように空っぽになる日が来た
ちょっと赤くなってきた
私がそう言うと毎回彼は私の頬を触る
毎日お酒飲んでも強くならなかったなー
彼の顔が引きつる
無理して会話を続けてるのがわかる
今日が最後だからよそよそしく会話が交わる
意識が遠くなる
350mlのチューハイでも体が熱くなる
そうすると必ず彼を求めてしまう
何度も話し合って、何度も拒否されて、何度も諦められて、何度も突き放された私は
最後の最後まで弱くてダメな彼女だった
お願い、最後だけ
そう言って私は彼の首を腕に抱き、そのままキスをする
吐息を漏らしながらキスを続けると次第に体が熱くなっていく
彼は唇を動かさない
やがて彼に拒否される
私はゆっくりと唇を離す
そっか、もう本当に終わりなんだ
大喧嘩をしたわけでもない。私がわがままを言い過ぎただけ
彼はただ静かに私を受け入れてくれたけど
その分静かに心を離した
怒らない彼は最後まで優しかった
でも何も言わずに離れられるのがもっと辛かった
彼が言った言葉は
「幸せに出来なくてごめんね」
私が悪いのに、謝らないで。私はあなたが居るだけで幸せなんだよ
そう伝えても私は彼に拒否される
離れたくない・・・私はこんなに好きなのに・・・
私を傷つけないために自分のせいにするあなたがまだ好きなの
どこまでも優しいあなたが好き。でももう終わりなんだって気付かされる
このまま最後に抱かれようと思ったけどそれはもう無理で
明日の朝にはあなたは居なくなる
同じベットで眠る最後の日
激しい鼓動が止まないのはお酒のせいかもしれない
私はあなたの方を向いてるけど
あなたは私の方を向いてくれない
わざと私を見ないようにしているのかな?
手の届く距離にいるはずなのにもう届かない
あぁ、やっぱり私は彼女として彼を幸せにできなかったんだな
背中を向けるあなたの後ろで私はそっと涙ぐむ
やるせない気持ちが涙に変わって溢れ出る
私はその日は寝れなかった
酔いは抜けたはずなのに
朝日が昇るのを確認するとまた鼓動が強くなる
ずっと背中を向けていたあなたはベットから出る。私は急に怖くなる
あともうすぐで彼はどこかに行っちゃうんだ
私は寝たフリを続ける
彼が起きたら私もすぐ起きるのがいつもの習慣だったけど
この時ばかりは寝たフリを続けた
彼の着替える音がする
もう行くんだ……
案外別れってあっという間で感傷に浸る暇もない
「もう行くね」
彼が静かに言った。私は返事をしない
また会いたくなるから
彼は返事がないことを確認して
「ごめん」
声を震わせて言った
「もう会いたくない」
寝たフリをしてる私はその言葉を聞いてまた涙が溢れ出る
彼も聞こえてるはずなのに、聞こえてないフリをする
優しいあなたの最後の言葉は
優しくない言葉だった
辛い思いをさせてごめんね
今日からこの部屋からあなたは居なくなる
ふたりからひとりになる
長いようであっという間だった2年半の月日は私の心を成長させてくれるのかな?
どうしたらあなたみたいに優しい人になれるんだろう?
どうしたらあなたみたいに素敵な人になれるんだろう
ほら、ダメだ。
また私はあなたを求めてしまう
もう求めてはいけないこともわかってるから、これで終わり
あなたが言った通りもう会わないよ
あなたと居た時の私は弱かったけど、一人でも強く生きたい
あなたと別れて後悔なんて絶対したくないから
それでも私はあなたに会えて本当によかったと思う
そう思えるだけで私は強くなれてる気がした
ふたりからひとり ゆる男 @yuruo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます