7-1 交渉
緋翠は螺旋階段を駆け上がっていく。
ルーダーの居る辺りの燈台の螺旋階段から果てしなく上へと進んだその先には、この塔台の頂上━━光を失ったスタルオの飾りがすぐそこまで来ていた。内壁の天井もステンドグラスのように彩られた壮美な装飾は、かつてはグリームの街を眩い光に照らし輝かせていたが、今は葵竜にスタリオンの銃で撃たれ、その光を失っている。
その光の線が上へと漏れる場所から、「星の中心」と呼ばれる《スタルオ》の有る場所へと通じる事が出来るのだが‥‥。
その長い螺旋階段を渡る二つの影、今の緋翠はそんな事より、目撃した
ルーダーがひたすら登る螺旋階段。その天井へと続く長い限定されたフィールドでも緋翠の行く手を阻む。
上階からも下階からもルーダーの残党が操られたように現れ、無表情で銃を連射する。
緋翠は俊敏に跳ねながら弾を避け、長い鞭を振り払いながら間合いをとった!
「はっ!」
一気に
敵兵を倒した緋翠は更に螺旋階段を駆け上がる。
するとルーダーの周囲に浮遊していた
ダダダダダダダダダダダ!!
緋翠は雨のように撃たれる階段を突っ走る!
走りながら緋翠は
緋い
緋翠は何かを思う一念で
緋翠は、ようやくルーダーの姿を目にした。
「待ちなさい、異凶徒の支配者ルーダー!!」
ルーダーの元へと追いついた緋翠はその名前を叫ぶと、広く閑散とした空洞の中を緋翠の声だけが響く。
━━声を聞いて振り返った
その姿というと、鎧はあちこちにひび割れ、所々血が滲み、落ちぶれたような姿だった。
だが、彼から受ける威圧感は依然として変わらない。
そのルーダーは一瞬緋翠の顔を見るも眼中になどなく、明らかに焦燥にかられていた。
「もうお前らの相手をしている暇はない」
彼は歩きながら高い螺旋階段の真下を覗いている。
‥‥ルーダーは、底から光る何かを見ていた。
「そっちが無くても私は用があるの」
その声に聞き覚えがあると気づいたルーダーは、立ち止まり振り向いた。
緋翠は
‥‥全てはこの男からよ。この男のせいで‥‥この男のせいで光紫は‥‥!!
瞼に焼きついた光紫の姿を思い出すと、いつも当たり前の存在だった仲間が、もう居ないんだと‥‥静かに涙が
「私は‥‥あんたを倒さないと気が済まないのよ」
緋翠はかなり感情的になっていたが、そんな緋翠にルーダーは嘲笑うように声を出す。
「俺を殺すだと?相手が違うのでは無いか」
‥‥そう言いつつルーダーは内心思った。
此処まで来て側に居た護衛を全て討ち果たした女だ。まともに戦わせ、もし破れる事があれば‥‥全てが水の泡になる。
‥‥こんな無駄な時間で足止めする訳にはいかぬのだ。
一刻も早くあの場所へ行かないと‥‥。
彼は仇を討ちに戦いを望む緋翠との戦いを避ける事を考えていた。
「‥‥相手にする気もないが‥‥‥」
ルーダーは緋翠を見据えたまま、血に濡れた刀を持ち構える。
緋翠は今まで気が付かなかったが、その手にした物を見るなり目の色を変えた。
「‥‥その刀は‥‥」
ルーダーの持っていたのは彗祥の「
「ん?これはあの女の捨てた刀だったか?だが奴にとって、既にこんなものは、もう必要無いだろうがなぁ」
「会ったの?姉さんに!」
「‥‥会ったなぁ。見ての通りだよ」
「姉さんを‥‥どうしたっていうの!?」
問い詰める緋翠にルーダーは嘲笑するまま何かを考えると、
「お前の姉は‥‥‥‥」
そう言うとルーダーは、風の吹き上がる燈台の底を背にし、
それが底に見えなくなると緋翠は言い知れぬ不安を過らせた。
「‥‥何よ、馬鹿にするつもりなの!?」
「いくら私でも、血の気の多いお嬢さん相手に諸刃の剣を振りかざして命を粗末にするほど馬鹿じゃないよ。それより、知りたくはないか?‥‥話し合おうじゃないか。お互い武器を持つのは止めよう」
「あ、あんたの話を聞く方が間違っているわよ!!」
「お前は、無防備な人間を討つつもりか?」
「‥‥‥‥」
交渉するルーダーはいかにも自分は弱いという立場で話し合いを進める。怒りを抑えた緋翠は沈黙の後、睨んだまま
ルーダーの目は僅かに動いたが、それを噛みしめるように言った。
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