どっちいく?
食連星
第1話
あ…
やばい.
電車内珍しく混雑.
何だか背中触られてる気がする直で.
直の直で.
素肌を.
て事は手入ってるのか.
隣,女子高生だよね.
こっちで合ってる?
いやいや.
駄目だ.
駄目駄目だ.
じゃあ,こっちで合ってるのか.
いやいや,
やったら駄目だよね.
右手回して手首を掴む.
これ力入らない.
ねじられたら手外れちゃいそうだ.
思いがけず,すんなり手引き離せた.
手を右に伸ばして持ってる.
大人しい.
もうぎゅうぎゅうで後ろ振り返られない.
手だけ見れば男性.
ふむ.
こっから,どうするの?
降りる駅で降りたら駅員に突き出したらいいの?
そもそも降りる駅で
この人降ろしていいの?
悪い事してるから
私が自由にしちゃっていいの?
背中くらいだから別にいいっちゃいいって
言わないといけないの?
何だか沢山疑問が湧いて
何で,たかだかこんな人のために
思案しないといけないのか面倒に思った.
駒棚のアナウンスが聞こえた.
私,ここで降りなきゃ.
「降りますよね.」
後ろから聞こえた.
ん?
これは私にあてたのだろうか.
それとも降りる人同士の会話なのだろうか.
まぁ,いいや.
どちらでも
降りる事には変わりない.
なぜか知らない人の手を引き連れながら
下車.
何でかは全く良く分からない.
本当に大人しく付いてくる.
実は手から先が無いとかだったら…
漏れそう.
怖すぎて.
適度に人がまばらになった所で,
振り返る.
大勢のとこで繰り広げるには
気が削がれた.
振り返ると,
「こんにちは.」
と言われた.
何だか,その挨拶でいいのだろうか.
「もう,こんばんはですよ.」
あぁ,多分この切り返しも違う.
「そうですね.
こんばんは.」
「はぁ…」
いや違う.
呑気に挨拶をしている場合ではない.
「背中触ってましたよね.」
小声になる.
「間違って触りました.」
…
間違って…?
ちょっと斜め上過ぎて
よく分からなかった.
「人違いですか?」
彼女と間違ったの?
いやいや
間違ったから良いって訳じゃないんだけど.
「いや合ってます.」
合ってます?
合ってます???
「え…?
そもそも…?
何を間違ったの?」
「計算違いです.」
「え!?」
もう,理解できなかった.
見た感じ.
ふっつうのスーツ着た人.
差し当たって変わった風にも見えない.
言ってる事だけおかしい.
「犬飼笹です.」
名刺を渡してくる.
確かに同じ表記をしてる.
大掛かりなドッキリか.
こっちもふっつうの仕事してる人.
「あ…
高井真珠です.」
慌てて胸ポケットから名刺を取り出す.
なんでだろう.
こっちの常識が狂いまくり.
「まじゅさん.」
「はい.」
「しんじゅさんかと思っていました.
でも,たかいさんなのですね.」
「そうですね…
よく子どもの頃は…
といいますか今でも揶揄われますけどね…」
「同じですよ.
私も犬なのに笹ですから.」
「お互い名前には苦労しますね.」
乾いたようにお互い笑った.
「分かりました.
もう次から間違わないでくださいね.
もう帰ります.
また.」
そう言って後にすると,
今度は私の手首を犬飼さんが掴んだ.
どっちいく? 食連星 @kakumi
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