第626話 〈サトミ〉の真珠

 〈南国果物店〉の裏の館と、〈カリナ〉の家に分散して宿泊することになった。


 〈サトミ〉は、久しぶりにおばあちゃんと寝るんだと喜んでいる。

 〈クルス〉は自分の部屋で、〈アコ〉は西宮の母親の所へ行くようだ。

 〈ハヅ〉と嫁は〈カリナ〉の家に泊まって、ちょっと飲もうと話している。


 後に残った兵長をどうすべきか。

 どうしようもないので、僕の部屋にベッドを一つ足すことにした。

 〈クルス〉の部屋に泊まることも考えたんだが、〈サトミ〉に悪いって思ったんだ。


 兵長と寝る前に少し飲んだら、兵長は涙ぐんで、奥さんを亡くした後、二人の娘を悩みながら育てた話を延々としてくれたよ。

 〈ハヅ〉は男で単純なヤツだから、全く悩まなかったのだろう。


 二人の娘を育てるのはすごく大変なことだと想像がつくけど、申し訳ないけど、子供がいない僕では実感が湧(わ)かないんだ。

 でも兵長は僕に話すことで、何か満足したようで、安らかな寝息を立てている。


 でも僕は思い出のこの部屋で、〈アコ〉か〈クルス〉と一緒に眠りたかったと思ってしまう。

 この部屋で良く見た、夢の続きを叶えてみたいと思ったんだ。



 〈サヤ〉の結婚式の前日に、〈サトミ〉を僕の部屋に呼んで、黄金色の真珠のネックレスを渡すことにした。

 部屋に入って来た〈サトミ〉は、少しもじもじとしてたけど、僕が両手を広げると勢い良く胸に飛び込んで来てくれる。


 「ふぁあ、〈タロ〉様。〈サトミ〉をもっと強く抱きしめてよ」


 僕は〈サトミ〉をギュッと抱きしめて、〈サトミ〉の唇にそっとキスをした。

 しばらくぶりの〈サトミ〉は、身長はそのままだけど、少しおっぱいが成長したようだ。

 しばらくおっぱいを揉んでいないのに、どうして大きくなったんだろう。


 「〈サトミ〉、逢いたかったよ」


 「んん、〈サトミ〉も、すっごく逢いたかったんだ」


 〈サトミ〉のお尻を触りながら、ずっとキスをしてたら、「チュポン」と音を立てて〈サトミ〉が唇を離す。

 キスはもう満足したんだろう。


 「んん、〈タロ〉様は、ずっと〈サトミ〉のお尻を離さないんだね」


 「うん。〈サトミ〉のお尻を触るのは、すっごく幸せなんだよ」


 「あはぁ、幸せなんだ。〈サトミ〉の胸は良いの」


 「おぉ、そっちも幸せに決まっているぞ」


 僕は〈サトミ〉のブラウスのボタンを外して、スリップを脱がした後にハッと思い出した。

 〈サトミ〉の真珠が、二粒顔を出したからだ。


 「あっ、〈サトミ〉に贈り物があるんだ」


 「ふぁ、贈り物を貰えるの」


 「ちょっと待っててよ」


 「うん。待っているよ」


 〈サトミ〉は上半身を僕に剥(む)かれたまま、期待を込めた目で待っていてくれている。

 僕は強い自制心を発揮し、〈サトミ〉のおっぱいから目を離して、机の中からネックレスとイヤリングを取り出した。


 「これが贈り物なんだ。〈サトミ〉にすごく似合うと思うよ」


 「ふぁあ、すごく綺麗な首飾りと耳飾りだよ。〈タロ〉様、ありがとう」


 〈サトミ〉は、嬉しそうにお礼を言ってくれたけど、ネックレスを手に取りはしない。

 えぇー、気に入らなかったのか。


 ただ〈サトミ〉は、真っすぐに僕を見詰めて、何かを待っているらしい。

 キスは、さっき一杯したばかりだよな。


 「〈サトミ〉、首飾りを着けて良いかい」


 「うん、うん。〈タロ〉様に着けて欲しいんだ」


 〈サトミ〉は、弾けるような満開の笑顔になっている。

 僕は正解を引き当てたようだ。


 〈サトミ〉にネックレスを着けると、黄金色の粒の下にあるピンク色の粒と粒が、すごくエロチックだ。

 南の国の王様がハーレムの女に、「今日からお前の服はこの真珠だけだ」とセクハラ満載の命令を下したのに近いものがある。


 「あれ、おかしいな。黄金色のはずなのに、ここに桃色があるぞ」


 僕は訳が分からないことを言いながら、〈サトミ〉の粒と粒を指先で摘まんでみた。


 「きゃっ、〈タロ〉様、嫌だ。なに、その言い方は。触り方もいやらしいよ」


 〈サトミ〉は気分を害したんだろう、服をサッサと着てしまった。

 しまった。

 中年のおっさんのように、摘まんでしまったよ。


 ここは、瑞々(みずみず)しいサクランボを食(しょく)すように、爽(さわ)やかに粒々をしゃぶるところだったんだ。


 「えっ、〈サトミ〉。服を着てしまうんだ」


 「へへっ、〈サトミ〉は王都で寂しいのを我慢しているんだよ。〈タロ〉様も、〈サトミ〉の胸を我慢しなさい」


 「へへぇー、分かりました」


 〈サトミ〉の淋しさに比べれば、おっぱいを触れないことくらい、どうってことはない。


 「でも〈タロ〉様。この首飾りと耳飾りは、〈タロ〉様を素肌で感じる、最高の贈り物だよ」


 「ははっ、そう言って貰えると、贈った甲斐があるよ。でももっと、〈サトミ〉の素肌を感じたかったな」


 〈サトミ〉は、「あははっ」と涙ぐむまで笑っている。

 でも笑えるようなことを僕は言ってないぞ。

 僕は笑っている〈サトミ〉に、もう一度キスをして笑うのを止(と)めた。


 今度はお尻を触らないで、背中に手を回して、とても強く〈サトミ〉を抱きしめる。

 〈サトミ〉は目を閉じて、僕の唇を夢中で吸っている。

 僕も負けないように吸った。


 唾液の橋が、〈サトミ〉と僕の唇にかかって、もう切れることはないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る