第521話 変な匂い
それに、僕は真っ裸にされているぞ。
〈サトミ〉を僕は真っ裸にはしなかったが、僕は真っ裸にされてしまった。
不公平じゃないのか。
「僕は真っ裸にされたから、〈サトミ〉を真っ裸にしても良いよな」
「ううん、〈タロ〉様、お願い。〈サトミ〉に酷いことしないでよ。すっごく恥ずかしいから、まだ止めて欲しいんだ。最後の一枚は、結婚してからに取っておいてよ」
〈サトミ〉はウルウルとした目で、僕にお願いをしてきた。
〈サトミ〉のお願いに負けて、僕はショーツを脱がすことが出来ない。
あまりの可愛さに、言うことを聞いてあげたくなったんだ。
それと、〈サトミ〉は僕を信頼しているんだと思う。
本気のお願いは、決して無視したりしないってことを。
そのお礼なのか。嬉しかったのか。
〈サトミ〉はおっぱいを放り出しまま、僕に抱き着いてきたんだ。
〈サトミ〉のスリップは、おっぱいの上まで、まくり上げられた状態を保っている。
それを〈サトミ〉が直していないのが、とても幸せだと思う。
僕の裸の胸におっぱいは押し付けられて、僕のあそこは〈サトミ〉のお腹に押し付けられている。
〈サトミ〉のお腹にも古い木工用ボンドが、付着(ふちゃく)してしまったぞ。
「〈サトミ〉と、引っ付いちゃうよ」
「うん、もっと引っ付いたら良いの。こんな感じかな」
〈サトミ〉は僕の背中に手を回して、おっぱいとお腹と太ももを押し付けてくる。
あぁ、そんなにグリグリしたら、またピクピクドバーンとしてしまうぞ。
〈サトミ〉はピクピクした動きを、お腹で察知(さっち)したんだろう。
微妙な顔をして僕から離れていった。
その顔の理由は、僕も聞こうとは思わない。
「〈タロ〉様、このパンツは洗っておくね」
普段から僕の下着は、〈サトミ〉が洗濯してくれているので、何の問題もないと思う。
でも少し心配だ。
「あぁ、ありがとう。でも独特の匂いがするから、嗅がれないように気をつけてくれよ」
「うん、変な匂いだね。〈タロ〉様のじゃなかったら、吐(は)いてるよ」
そこまでの匂いなのか。
〈サトミ〉は容赦(ようしゃ)ないな。
ピクピクとなって、ドバーンを耐えるのに、僕は持てる力を使い果たしたようだ。
何だか身体がだるいので、今日はもう寝よう。
どんよりと濁(にご)った空が、僕の頭の上を覆(おお)っている。
周りの《黒鷲》生と《青燕》生も、生気の抜けたような目だ。
当然、僕もだろう。
軍事的演習の本番を迎えたんだ。
誰もやりたくないと思っているんだろう。
先生さえも、浮かない顔をしている。
《青燕》生は、勉強ばかりしてた秀才の集まりだ。
それは、《黒鷲》の騎士爵の子弟も共通している。
かと言って、《黒鷲》の男爵以上の子弟も、運動を得意としているわけじゃない。
ほとんどの学舎生が、軍事的なものを苦手としていると思う。
唯一張り切っているのは、《黒鷲》の一組の連中だけだ。
対抗戦での借りを返してやると、息巻(いきま)いているぞ。
ただし、〈先頭ガタイ〉は除くだ。
「一組と二組の班長は、拠点を決めるくじを引いてくれ」
先生が投げやりな感じで、指示を出してきた。
僕も人のことは言えないが、先生はこれで給料を貰っているんじゃないかと思う。
表面(おもてづら)だけでも、つくろえよ。
僕が引いたくじは「ハズレ」と書いてあった。
えっ、〈ハズレ〉ってどういう事だ。
授業での拠点を決めるのに、堂々と〈ハズレ〉と書いちゃまずいだろう。
「あぁ、やっぱりか。〈タロ〉のことだ、〈ハズレ〉を引くと思っていたよ」
〈フラン〉が、さも当然のように僕をデスってくる。
他の演習の二組の連中も、「そうだ、そうだ」という感じで頷いてやがる。
はぁっ、僕の引きが著しく悪いのが、確定しているように言うなよ。
人生はこれからも長いんだぞ。
ずっと引きが悪かったら、どうしてくれるんだ。
それと、〈ハズレ〉に少しはツッコミを入れろよ。
先生の茶目っ気で、仕込みの可能性があると思う。
スルーされたら、落ち込んでしまうだろう。
演習の一組の連中は、「勝った」「やった」とテンションが上がっているぞ。
くじには〈アタリ〉と書いてあったのか、聞いてみたいな。
この軍事的演習は、二つの丘の拠点に立ててある旗を、早く奪った方が勝ちとなるらしい。
今日初めて知ったよ。
演習の一組は白い旗で、二組は黒い旗だ。
白黒か。
なぜ紅白にしなかったのか。どうでも良かったのだろう。
僕達二組はダラダラと難所を歩いて、丘の上に到着した。
丘のてっぺんには、旗を立てるために鉄パイプが刺してある。
鉄パイプは二メートルほどあって、一人では手が届かないようになっている。
ふうん、複数人が丘のてっぺんに来ないと、勝てないようにしているって訳か。
「勝てないと思いますけど、組長どうします」
班長と副班長達が一応聞いてくる。
気持ちは分かるけど、何ともやる気が削(そ)がれる言い方だな。
「簡単に勝たせては面白くない。意地悪をしてやろうぜ」
僕はニヤッと笑い、こう提案した。
「ほほっ、意地悪とな。それはどんな、いやらしいことなんだ」
〈フラン〉が目をキラリと輝かせて、喰いついてきたぞ。
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