第172話 白い花弁の百合

 女性四人を引率して、紅水晶を探しにいくことになった。


 〈アコ〉と〈アコ〉の母親と〈カリナ〉と〈リーツア〉さんだ。

 あと、おまけで〈リツ〉もついて来る。


 〈アコ〉が、〈クルス〉と〈サトミ〉から紅水晶の話を聞いて、どうしても欲しくなったようだ。


 「〈アコ〉、もう僕との結婚は決まっているから、恋愛のお守りは必要無いんじゃないか」


 「でも、〈タロ〉様。持ってないのは私だけですわ。私も欲しい」


 〈アコ〉が、頬をプクッと膨らませて、拗ねている様子が可愛らしいので、僕が折れた。


 他のメンバーで、〈カリナ〉は、まだ分かる。

 〈アコ〉と同じで、結婚が決まっていても、恋愛状態でありたいんだろう。


 しかし、〈アコ〉の母親と〈リーツア〉さんまでもが、この話を聞きつけて、「私達も欲しい」と言い出したんだ。

 一応独身ではあるけど、まだ、この二人は恋愛をするつもりなのか。

 僕も多少成長したから、本人達に、問いただすようなまねはしなかった。

 賢くなったな。


 紅水晶が採れる河原を目指して、歩いて行くが、〈アコ〉とは手を繋げない。

 並んで歩くのが精一杯だ。


 他の人がいるし、〈アコ〉の母親がいるのが大きい。

 〈アコ〉が、母親の前でイチャイチャするのは、恥ずかしいと嫌がるし、僕も照れくさい。

 〈カリナ〉と〈リク〉のお堅いカップルも、当然繋いでいない。


 河原に着いて、おのおの紅水晶を探すが、やっぱり見つからない。

 ここは本当に、紅水晶の産地なのか。疑問が頭をもたげてくる。


 〈カリナ〉と〈リク〉は、遠く離れた場所で探しているようだ。

 姿が全く見えない。

 皆に見えないところで、イチャイチャしているのに決まっている。

 コソコソカップルと認定しよう。


 〈アコ〉の母親と〈リーツア〉さんは、もう探すのを諦めたのか、最初から探す気がないのか、石に座って話し込んでいる。

 時折、「あっはっは」「おほほほほ」と大きな笑い声がする。


 横を通った時、「夜にずんずん伸びる竿」の話をしていた。

 〈アコ〉の母親も、エロ話が好物なようだ。


 真面目に探しているのは、最早〈アコ〉だけだ。

 僕は、始めから探す気がないので、〈アコ〉が探しているのを眺めているだけだ。


 〈アコ〉は、あちこち動き回って必死に探している。

 服が汚れるのも気にしないで、もう、四つん這いになって探している。


 〈アコ〉の丸くて豊かなお尻を、後ろから眺めているのは、中々良いな。

 左右にプルンプルンと振って、僕を誘っているように見える。


 僕は後ろから、そっと近づき、〈アコ〉のお尻を両手で撫でまわした。

 プルンプルンと揺れているのに、我慢出来るはずもない。


 「キャ、〈タロ〉様。いきなり何ですか。お尻を触らないで」


 「ごめん。〈アコ〉のお尻が、あまりにも魅力的だったんだよ」


 「もう、一生懸命探しているのですから、邪魔しないでください。あっちへ行っててください」


 「分かったよ」


 僕は、怒られたので、〈アコ〉から離れて、川に入って涼むことにした。

 河原は遮る物が何もなく熱いので、川で火照った身体を冷やそう。

 ズボンを捲って川に入ると、流水が冷たくて気持ちが良い。生き返るな。


 「〈タロ〉様、ずいぶんと優雅そうですね」


 〈アコ〉が、川で涼んでいる僕に話しかけてきた。

 いくら探しても、見つからないし、熱いので嫌になったんだろう。


 「〈アコ〉も、川へ入ったら。涼しくて、生き返るぞ」


 「服が濡れてしまいますわ」


 「裾をまくったらいいんだよ」


 「そんな、はしたないことは出来ませんわ」


 「大丈夫だよ。ここには僕しかいないよ」


 「うーん、こっちを見ないでくださいよ」


 〈アコ〉は、スカートの裾をまくって、腰の横でくくったようだ。

 靴と靴下を脱いで、川に入ってきた。


 横でくくったせいか、〈アコ〉の太ももは半分近くむき出しになっている

 〈アコ〉のムッチリとした白い太ももが、夏の日差しを受けて驚くほど眩しい。

 無理やり視線を外そうとしても、どうしても視線がいってしまう。


 「はあー、こっちを見ないで、と言っても〈タロ〉様には無駄でしたね。

 でも、そんなに凝視されたら、私の足に穴が開いてしまいますわ。うふふ」


 〈アコ〉は、そう言いながらも、顔はニコニコと笑っている。


 太ももを半分近くむき出しにして、僕に笑いかける〈アコ〉は、もう大人の女性だ。

 僕がかなうわけがない。僕が抵抗出来るわけがない。僕の完敗だ。


 僕は、白い花弁を大きく広げた百合に、吸い寄せられるちっぽけな虫だ。

 川の水をバシャバシャと蹴って、〈アコ〉の傍に向かう。


 〈アコ〉は、一瞬困ったような顔をして、周囲を見渡した。


 それから、満面の笑みを浮かべて、手を誘うように前に突き出し、僕が来るのを待っている。

 僕は、突き出された手をそれぞれ握り、広げて、〈アコ〉の身体を引き寄せた。


 〈アコ〉が目を瞑ったので、〈アコ〉の唇に唇を押し付けて、情熱的に動かし続けた。


 「あんん、〈タロ〉様、もうダメです。誰かに見られてしまいますわ」


 仕方が無いな。この間やらかしたばかりだから、今は自重しよう。


 「分かっているって、もう手を離すよ」


 「ふふふ、今日の〈タロ〉様は、お利口さんですわ」


 僕は、小さな子供じゃないぞ。

 あそこも、立派じゃないけど、大人だ。

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