第5話 げんこつ山の狸さん

 三人の許嫁の挨拶も終わって、四人で僕の部屋で過ごすことにする。


 許嫁達は、すでに何回か会っているようで、ぎこちないところもあるけど顔見知りという感じだ。

 四人で過ごすといっても、〈アコ〉とは実質初対面で、他の二人ともまだ仲が良いとはいいがたい。

 この場は僕がリードする必要があるが、どうしたものかと、無い知恵を振り絞って考えた結果、手遊びを提案した。


「ゲンコツ山のたぬきさん」だ。

 これしか思いつかなった。


 皆が仲良しになる助けになるかなと思ったんだよ。

 年嵩の子は一四歳なので心配したけど、杞憂に終わって、ほっとした。


 〈サトミ〉は、もう大喜びではしゃぎぱっなしで、〈クルス〉と〈アコ〉も意外とノリノリだった。

 結構笑い声も出ていたよ。

 喜んで貰えて良かった。


 許嫁達が「オッパイ吸って」と言うのも良かったな。



「〈タロ〉様、こんな面白い遊びを知っているなんてすごいです。すごい物知りです」

 〈サトミ〉がベタ褒めてしてくれた。


「私もこのような遊びは聞いたこともありません。〈タロ〉様は、博識でいらっしゃいます」

 〈アコ〉からも、お褒めのお言葉。


「この手遊びで、私たちの緊張を解いて下さいました。

 的を得た遊びを選ばれて良く考えておられます」

 〈クルス〉には、違う方向から褒められた。


 選択は間違っていなかった。

 この世界にはあまり娯楽がないので、こんなものでも喜んで貰えたのかな。

 皆に煽てられて、色々勘違いしちゃいそうだよ。

 午前中はこんなふうに良い雰囲気で皆と過ごした。


 午後からは〈アコ〉とダンスの練習だ。


「〈タロ〉様、まだまだ拙い踊りですけどよろしくお願いします」と〈アコ〉。


「僕の方こそまだまだなのでよろしく頼むよ」

 と少し硬い感じで練習が始まった


 〈アコ〉は、三人の許嫁の中では一番肉付きが良いというか、グラマーなので、ダンスの練習で抱き寄せると、女の子の体が柔らかいことが良く分かる。


 手も、フニュと柔らかくて、ずっと触っていたい。

 背中に手を回すと、もう少しでお尻の始まりに触れそうで、ドキドキしてしまう。

 あぁ、もう少しでお尻に到達だ。


 しかし、ここは我慢。我慢。

 今の親密度ではお尻にはいけない。

 ほんの僅か良くなった関係が、直ぐに壊れてしまう。


 〈アコ〉は、少し香水を付けているのか、花の香りに女性の匂いが混じった、官能的な匂いがする。

 貴族令嬢の清楚な感じと、対照的なグラマラスな身体が同居している、凄く魅力的な女の子だ。

 許嫁に選んでくれた親に感謝しなくては。


 こんなことを考えているうちに、練習はあっという間に終わって、〈アコ〉は一泊して、翌日の早朝に帰っていった。


 遠いから仕方がないね。

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