第24話

 私は家に帰ってネットで早速アップロードされていたあの映像をもう一回見て、ネットでの書き込みも見て……なんでこんなことしてるんだろと思うくらいダラダラ過ごしていた。


 きっと翔太がいたらそんなことはしてなかったけど彼はきっと今大変だろう。


 でもあの男のノートが見つかったことで何がどうなるのであろうか。


 奈々子の旦那たちは彼女を殴ったわけでもない。精神的には痛めつけた訳だが証拠はない。

 それが一番辛い。奈々子は書き込みに


「一度でもいいから殴られたかった」


 と書いたそうだ。

 辛い。辛い。途中から飲み物も受け付けなくなった。奈々子の母から聞いたはなしも合わさって尚更もっと気持ち悪くなる。


 その後だが、やはりどうなることもなく、反対に夫やその家族たちが名誉毀損だと訴えるとか訴えないとか。

 掲示板で奈々子と交流してた人たちは

『打ってかかろうじゃないか』

 と意気込んでいるらしい。それも、別のところで知った。その後のことも同様である。


 奈々子の母は奈々子の叔母と共に(父親ものちに加わる)奈々子のパソコンを解析し、旦那や義父母が彼女に対して長時間威張り続けている音声を入手したらしい。

 男の母親の元に奈々子の叔母が会い、ノートを預かりその後どうするのだろうか、とのことだ。


 奈々子の子供たちは児童養護施設に一時行くことになったようだ。奈々子の夫がノイローゼになり、義母も体調が悪化し面倒を見切れなくなり、奈々子の親たちが候補を挙げたが断られたそうだ。だがやはり児童相談所の人たちは子供にとって良い環境ではないと判断をしたとのことだ。


 娘たちはあの放送は見たのだろうか。


 最後の奈々子はあなたたちと逃げるつもりだったというのは伝わって欲しい。

 想像で言うのもあれだが、子供たちにあなたの母親はお前たちを置いて、捨てて男と逃げたとか吹き込んではいないか、それが心配だ。今までの話を聞く限りでは。


 お願いだから子供たちは巻き込まないで。


 ……私は過去に母も同じ環境で二人で逃げた。もちろん役所は助けてくれなかった。親戚は遠くてそこまで行ける金もなかった。


 とある県外の施設に匿ってもらったが、そこもとても環境が厳しいところだった。今思えばあれはいわゆるシェルターというところで規制や規則があった。中にはそうでもないところもあったらしいが。


 私は同じ環境で育った他の子たちと仲良く育ったし、半年後に親戚から助けてもらって今があるのだ。

 嫌だったのは常に母から父や祖父母の悪口を聞かされてたことだ。私自身は受けてはいなかったが今大人になって結婚してようやく母のつらさがわかったほどだ。


 父も祖父母もとっくの昔に死んでいる。母は今ではケロッとしているようだから心の病で病院に通っているし、しょうがい手帳も持っている。こないだの手続きもそれに関してのものだった。


 身体的暴力は目に見えるが精神的暴力は目に見えずもう30年以上経つのに母は苦しんでいる。私は面前で見ていて、母からずっと父や祖父母のしてきた悪意を聞かされていた私は夫との関係もうまくいかず、そんな中の彼の単身赴任で冷静状態、そしてそこに現れたのは翔太だ。


 彼が私の心を溶かしてくれているのだ。

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