真実
第22話
翔太と待ち合わせをしたのはスーパーの立体駐車場で。奥の方に停めて私は翔太の車に向かう。後部座席はスモークがかかっている。コンコン、と窓を叩くと開いた。
私は入るとスーツ姿の翔太がいた。彼は私を抱こうとしない。そうか、今仕事中なのか。
「結局告別式は行かなかったわ」
「そうか。なんか聞いた話だと親族間で揉め事起きてて大変だったみたいだな」
ああ、奈々子の叔母のことだ。私は市役所での出来事を話した。
「大変だったな……」
「まぁね。翔太はなにをしてたの」
「色々と情報がでてきてな。奈々子さんはとあるネットの掲示板で書き込みをしてたそうだ」
とある掲示板……。
「5年くらい前からずっと利用されてて、夫や義父母の愚痴が多数」
愚痴でなくて奈々子のSOSよ……それは。
「一緒に死んだ男もその掲示板の常連で……二人はそこで出会ったようだ」
「……そうだったの」
「多分奈々子さんはリアルで助けてもらえずネットで助けてもらおうとしたのだろう。いろんな人からこうしたら、あーしたらとかさたくさん書き込みがあって、最後の方にはとある〇〇県の施設に女性を助けてくれるところがあるという書き込みがあって……それが奈々子さんが移住しようと手続きをしていた施設と一致した」
そんな駆け込み寺みたいな施設ってあるのね。そこに最後の望みをかけて、一緒に死んだ男と向かっていたのか。
……ねえ、それは私じゃダメだった? 奈々子。だなんて何思ってるのかしら。
すると翔太の電話が鳴った。すぐさま出る彼の仕草は無駄がなくカッコ良い、と思ってしまった。
「はい……えっ?! わかりました。すぐ向かいます」
緊急性のあるものなのか。
「すまん、今から出る。少しでも会いたかった……それでも会いにきてくれてありがとう、美夜子」
「……翔太。わたしもよ」
微笑みあう。
キスもせず、手も握らず。
しょうがないのよ、こんな関係なんだから。
「もし時間あったらテレビか、ネットでも見れるかもしれん」
どういうこと?
「奈々子さんと一緒に死んだ男の母親が地方のキー局のカメラの前で今生中継してるようだ」
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