第16話 異世界にて13
「お、お前! 魔王討伐パーティの知り合いなんだってな!?」
森の中で突然、すぐ後ろから声がかかった。
突然のことに振り返ろうとすると背中にちくりとした痛みを感じる。
「動くな! 背中にナイフを当ててある! き、許可なく動いたらこのまま刺すからな!」
焦ったような男の声。
とりあえず抵抗の意思がないことを伝えるため「分かりました」とだけ答える。
「よ、よし! それで!? どうなんだ!?」
「どう、と言いますと?」
「さっきの質問だ! お前は今魔王を倒すところまで行っているパーティの知り合いなのか!?」
「……街で話を聞いた限りではそうみたいですね」
「そ、そうか……! よし、お前! 俺についてこい!」
「理由を聞いてもいいですか?」
そして願わくばついていかなくてもいいですか、と問いたい。
「そんなの決まってるだろ! 魔王を倒させないためだ!」
……ん? 魔王を倒させないため?
倒すためじゃなくて?
「魔王討伐だなんてホント何してくれてんだよ……! お、俺はこの世界が気に入ってるんだ! 帰りたくなんてないんだ!」
……なるほど、そういう人もいるか。
今まで他の勇者と接触する機会は一番達を除くと2人しかいない。
その2人ともが元の世界への帰還を熱望していたため、帰りたくないという考えは盲点だった。
「はぁ、そうですか。でもそれと僕があなたについていくことと何の関係があるのでしょう?」
「は、はは! なんだお前頭悪いな! そんなの決まってるだろ! お前を人質にして魔王の討伐をやめさせるんだよ!」
お世辞にも賢いとは言えないが、こうもハッキリ頭が悪いとけなされれば少しカチンとくる。
しかも僕を人質にして討伐をやめさせる?
あの1番がそんなことで止まるわけがない。
「あのー、一応伝えておきますけど、多分僕を人質にしても魔王討伐は止まらないとおもいますよ」
「はぁ!? なんでだよ!? そんなわけないだろう!?」
なにをもってそんなわけないと思っているのかわからないが、男の声に明らかな動揺が感じられた。
「一言で言うなら、そういうやつだからです」
「は、はあ!? ふざけんなよ! だ、だったらお前がなんとかしろ! 俺が帰らなくてもいいように考えろ!」
ぐいっ、と左肩を掴まれ力任せに無理矢理振り向かされる。
振り向く瞬間、収納から取り出したナイフを男の腹部に突き刺した。
「ひっ! ひぐぅあ!? な、何するんだおまえぇえ!」
男が驚愕と痛みから手にしたナイフをめちゃめちゃに振り回す。
それをバックステップでかわした。
「あ、あぁ……こんな、こんなことって…いぃ、痛いぃ……!」
男は刺されて血の滴る傷口を抑え、青ざめた表情をしている。
そんなに深く刺していないので、致命傷ではないはずだけど。
「ひ、ひどいいぃい……なんてやつだ! 人を刺すなんて!! 死んだらどうしてくれる!?」
男が涙を流して訴える。
恐らく30代くらいだろうか。ぼさぼさの髪の毛に黒縁の眼鏡をかけていた。
「刺されたくらいで文句言わないでくださいよ。死んでないじゃないですか」
言いながらナイフを構え、臨戦態勢をとる。
こちらが戦う気なのを察したのか、男はひぃ! と小さく悲鳴をあげ
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