第64話 秘宝奪還! だが……
風車の騎士は、部下に土の秘宝を預けていたようだ。
大混戦の中、騎士団を下すと、秘宝がポロッと出てきた。
なるほど、なんか大きな卵の形をしている。
ふわふわしているな。
これがキングベヒーモスの卵でもあるのかな?
「あーっ、ちょっとかじられてるのです! これ、素質が無い者がかじるとたちまち死んでしまうのです!」
アディ姫が嘆いた。
歯型は2つ付いている。
キングベヒーモスの力を受け継いだのが、現代で俺達が戦ったジャガラだとすると……。
もう一つの歯型は、風車の騎士か。
あいつも何か、力を蓄えたらしい。
『くそっ、ジャガラめ、逃げられた……!!』
風水士少年が悔しげに、地面を何度も踏みつけている。
『あいつを止めないと、ゴブリンは大変なことになるんだ!』
「おう。なので君は止められるほどに強くならないとな」
『ああ、よくわかったぜ。それにあんたのお陰で、俺は強くなれるってこともな』
「うむうむ。だがここから先は教えられる技が無いので、自分で工夫して生み出すように。そもそも俺は風水士じゃなくて青魔道士だからな」
『つーかよ。そもそも風水士ってなんだよ……? 聞いたことがないぞ』
「なにかこう……地形を自在にコントロールして戦う者の名前らしい」
『それはあんたじゃないのか、青魔道士』
「俺は敵の技をコピーして戦うのだ。なのでちょっと違う」
『うーむ……』
「ということで、俺は一旦元の時代に戻るよ。またな!」
エリカとホムラを呼び集める。
俺達が帰るというので、トニーとレーナ、アディ姫もやって来た。
「また行ってしまうのかドルマ。この世界には、まだまだ争いの種がくすぶっている。何よりも、あの風車の騎士を止めなければ、また大きな戦争が引き起こされるだろう。あいつを止めなくちゃならない。……きっとまたやって来て、手を貸してくれるよな」
「無論だ。俺も風車の魔王を倒さねばならない理由がある」
俺はトニーと握手した。
「魔王……?」
トニーが首を傾げる。
そこへ、レーナが解説をしてくれた。
「古来より、魔なる者たちの王であるとか、あるいは恐るべき所業を成し遂げる権力者を表わす呼び名ね。なるほど、風車の騎士は色々暗躍してるみたいだから、あれが行き着く先が魔王なら、分かる気がするわね」
「ほー、そういうものなのか! それじゃあ、魔王として退治してもいいんだな!」
感心するエリカ。
明確な標的を認識し、今もやる気は十分だ。
「世話になったのです! ドワーフの力はいつもフォンテインナイツとともにあるのです! いつかこの協力に報いるため、ドワーフは力を蓄えておくのです! またですー!」
「おうおう! じゃあな! タイムリープ!」
こうして俺たちは、現代へと帰ってきた。
場所は、馴染みの商業都市、ポータルの門の前。
突然現れた俺達に、旅行く人々がびっくりしている。
「ドルマのタイムリープは凄いな! すぐに昔と今を行き来できるんだ。これを使って、いきなり風車の魔王を倒すところまで飛んでぶっ倒したりできるんじゃないか?」
エリカからの質問が飛んできた。
俺はうーんと考える。
「いや、なんかな。今ならいける! みたいに思うタイミングがあるんだ。で、その時にタイムリープすると、ああやってフォンテイン伝説と重なる感じになる。よく分からないけど、使うタイミングがあるみたいだ」
「そうなのか! 難しいなあ……」
「拙者はなんだかヒロイックなバトルがでてて楽しいでござるよー。過去の時代で、半端者の忍者をコツンと打ち負かしてもやったでござるしなー!」
わっはっは、と豪快に笑うホムラ。
……おや……?
過去の時代に、フォンテインの仲間の忍者が……?
ホムラの祖先の忍者を打ち負かした……?
いや、何も言わないでおこう。
ホムラは愉快げに笑っているだけだ。
おっ、笑いすぎてむせた。
二人と一緒に、いつもの冒険者の店に行く。
すると、カウンター席に上品なおばあさんが座っていた。
メガネの似合う小柄な人だ。
……どこかで見覚えが……?
「ああ、やっと来た来た!」
おばあさんが笑顔になり、手を振った。
エリカもハッとする。
「お祖母様!?」
「えっ、おばあさまって、レーナか」
「そうそう」
おばあさん……今の時代のレーナがうんうんと頷いた。
「ようやく、ドワーフ達から連絡が来たから、あなた達に伝えに来たのよ」
「ドワーフから?」
さっき別れたばかりだよなーと思ったら、それは五十年前の過去のことだった。
俺達が戻ってきた時代で、さっきの時代の話とつながったということだろう。
「そう。恩を返すって。ドワーフは義理堅いからって、すっかり大人になったアディが言ってたわ。ドワーフは寿命が長いのねえ」
「???」
状況がよくわかっていないらしいエリカ。
そもそも、過去のトニーとレーナが、自分の祖父母であることもどうも気付いてないようだからな。
だが、別にそれはそのままでいい。
余計な頭を使わせると、エリカが知恵熱を出しそうな気がするのだ。
「よし、じゃあそのドワーフからの恩返しを取りに行けばいいのか」
「そうね。だから僕……私もこうやって来たの」
「もう僕って言わないようにしてるわけ?」
「娘にね、孫の教育に悪いから一人称は私にしてって言われたの……!」
「あー、なるほどなあ」
人に歴史ありだ。
そんなわけで、俺達は現代のレーナを仲間にして、ドワーフ達との再会へと向かうのだった。
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