第43話 ラーニング! フォンテイン義勇騎士同盟

「へえ! この集まりがフォンテインナイツなのか!」


「正しくは、フォンテイン義勇騎士同盟な! なんか、オレが祭り上げられちまって。困ってたらレーナが助けてくれたんだ」


「乗りかかった船だもの」


 メガネの学者娘はニコニコしている。

 ほうほう、ここでトニーとレーナは急接近したんだな。


 エリカはうんうん頷いているようだが、どうも他人事のように感じてはいないか。

 ……もしかして、トニーが自分の祖父であることにハッキリと気づいてない……?


 ありうる。


 ちなみに傍から見ていると、トニーもレーナも恋愛には奥手な方らしく、ちょっと近づいて肘が触れ合うと慌ててちょっと離れたりしている。

 これを見て、後ろにいる騎士や兵士たちがニヤニヤするのだ。

 後ろにいる奴らの気持ちがよく分かる。


「おっ、甘酸っぱい青春でござるな」


「そういうホムラだって若いだろうが」


「拙者は東方の血が流れている故に幼く見えるが、実はそれなりの年齢」


「何歳なの」


「れでーに年を聞いてはならぬでござるよ」


 そんなものなのか。


 ゴブリン砦へと向かう道の途中で、トニーと色々な話をする。

 例えばアベルのことだ。


「竜騎士はどうしたんだ? あいつがいれば心づよいと思うんだけど」


「アベルはエリカの実家に雇われて、上げ膳据え膳を楽しんでいる」


「自堕落なやつだなあ」


「あの男、野心とかはなくて、あの技を使って自分が食べていくことしか考えてないのかもしれない」


 クールに見えて、実は何も考えてなさそうなことを俺は感じ取っていた。

 あれは何気に、俺の同類だぞ。


 エリカはと言うと、ホムラになにか言われて首を傾げている。

 なんだなんだ。


「ドルマ。ホムラのやつがな、私がドルマと青春ではないのかと聞いてくるんだ」


「あいつカップリング脳だな」


 誰かと誰かをくっつけるのが好きなのだ。

 なんという忍者だろう。


「後押ししてやると言われたんだが、さっぱり何のことか分からない」


「ああ。エリカはフォンテイン関係が全部片付かないと先に進めないもんな。なんか一種の呪いだなこれは」


 フォンテインの呪いか。

 張本人が目の前で死んでも解けず、フォンテインの伝説が歴史的には存在しないことになっても解けていない。


 これは、フォンテインの逸話全てを再現しなければ、エリカの中にあるフォンテインの呪いは解呪されないのではないだろうか。

 別にそのままでもいいんだが、ずっと騎士になる、騎士になる、と騒いでいるのも生活に差し障りがあるだろう。


「おいホムラ。別方面で協力してくれ」


「なんでござるか? ああ、分かったでござるよ! 拙者、媚薬の作り方を父上から習っているでござる。これをエリカの飲み物に入れればイチコロ……」


「違うぞ」


 危ないな、この忍者!


「ホムラ、ドルマとくっつきすぎだぞ」


 おっと、間にエリカがぎゅうぎゅう入ってきた。

 ホムラはこれを見て、ニヤニヤしながら離れていく。

 何を勘違いしているんだあいつは。


「あっちっちーでござるなあ」


「おいだまれ」


 こんな性格だったのか。


 軽口を叩きながらの旅なのだが、道中に何も危険が無かったわけではない。

 例えば、ゴブリンたちが飼いならしたモンスターに乗って襲撃してきたりした。


 ダイヤウルフ。

 以前にも遭遇したオオカミのモンスターで、全身のあちこちから魔力結晶が生えている。

 これを直接叩きつけて武器にしたり、魔力の源にして、咆哮から魔法を使ったりするのだ。


 ……どう考えてもゴブリンよりも遥かに高位のモンスターではないのか。

 どうしてゴブリンに従ってるの?

 犬科だからかな?


『わおおーん!!』


 咆哮が魔法の嵐となって俺たちを攻撃してくる。


「うわーっ」

「防げ防げー!」

「もうだめだー!」


 義勇騎士同盟の連中が弱音を吐いている。

 諦めるのが早い。

 いや、弱音を口にしながらも踏みとどまってチャンスを伺っているので、ガッツはあるのかもしれない。


「ドルマ、これじゃあ前に進めない! 切り開いてくれ!」


「よしきた。ワールウインド!」


 俺もまた嵐を巻き起こした。

 魔法の嵐と、青魔法の嵐がぶつかり合う。


『わおーん!? わお、わおおおーんっ!!』


 俺が対抗してきたことに驚いたダイヤウルフ。

 今度はこちらに駆け寄りながら吠えた。

 すると、ダイヤウルフが分身するではないか。


 何匹かをゴブリンパンチや拡散渦潮カッターで迎撃したが、そこをくぐり抜けてきたヤツがいた。

 俺の肩をガブリと噛む。

 幸い、鎧を着ていたので怪我はないが、肩アーマーが破壊されてしまった。


 凄い破壊力だなあ。


『ラーニング!』


「あっ!」


 急いで自分の能力を見た。



名前:ドルマ・アオーマーホウ

職業:青魔道士

所有能力:

・バッドステータスブレス

・渦潮カッター act2

・ゴブリンパンチ

・ジャンプ

・バックスタブ

・ミサイル

・バルーンシードショット

・ワールウインド

・ランドシャーク

・タイムリープ

・イリュージョンアタック NEW!


 イリュージョンアタックか。

 これ、分身するやつかな?


「イリュージョンアタック!」


 ダイヤウルフが体勢を立て直す前に、俺も追撃に出た。

 俺が五人くらいに増える。


 あっ、持ち物も五倍になってるじゃないか。


「「「「「よしっ、全員で渦潮カッターだ!」」」」」


 五倍になった水袋から、五倍の渦潮カッターが放たれる。

 絶対命中の攻撃なので、ダイヤウルフはこれを迎撃することしかできない。


『わお! わおおーん!!』


 だが、物量はこっちが上だ!

 ダイヤウルフの嵐をぶち抜いて、増えた渦潮カッターが突き刺さる。


『ぎゃわーん!』


 ダイヤウルフが白目を剥いてぶっ倒れた。

 俺のイリュージョンがもとに戻る。


 水袋は空っぽになっていた。


「一時的に攻撃が何倍かになるが、そのぶんコストみたいなのも一気に取り立てられるのか。無い分はそれ以上取り立てられない……? ふむふむ」


 色々チャレンジしがいがある技のようだった。

 これを見て、ホムラはハッとしていた。


「分身の術……!? さてはドルマ、お主は忍者!!」


「違うぞ」

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