第42話 忍者を連れて過去に飛ぶ
「ご飯食べ終わった? マスター、これお会計ね。はい、じゃあタイムリープ」
俺たちは食事の代金を払ったあと、過去に飛んだ。
「ウワーッ」
最後にマスターのびっくりする声が聞こえてきた気がする。
降り立ったのは、どこにでもあるような宿場町だった。
ここが過去のポータル?
いや、タイムリープはどうやら、時間を移動するだけじゃないらしい。
どろ魔人を倒した俺たちは、元の時間、元の場所に戻ってこれた。
多分、行ける場所と戻れる場所が決まってる。
それはもしかしすると、事件が起こる場所だったりするのでは……。
『ギギギーッ!』
叫びながらゴブリンたちが大量に出現した。
家々の扉を蹴破り、納屋から飛び出し、木からも降りてくる。
なんと、ゴブリンに占領された村だったか。
「これは一大事でござるな!」
ホムラ、早速身構える。
いつの間にかその手には、ナイフが握られていた。
「手裏剣は高価なので、安いナイフで相手をするでござるよ!」
『ギギーッ!!』
飛びかかるゴブリン。
「ツアーッ!」
投擲されるナイフ!
それがゴブリンに到達した瞬間、いきなり無数のナイフに分裂し、ゴブリンの全身を滅多刺しにした。
25回ヒット!
そういうメッセージがゴブリンの頭上に浮かび上がる。
『ウグワーッ!』
ゴブリン、堪らず死亡!
なんだろう、今のは。
「なんだろう今のは」
エリカが俺が思ったのと全く同じことを口にした。
「忍者の投げる技でござる。これと忍術が忍者の能力なんでござるよ。投げたものが何回も相手にヒットするのでござる」
「意味がわからないけど凄いな! やっぱり伝説の職業だ!」
「一子相伝なだけあるなあ」
感心しながら、エリカは迫るゴブリンを次々にグレイブソードで文字通り粉砕し、俺は近くの水瓶から渦潮カッターを連射している。
渦潮カッターは相手を見てさえいれば必中なので、本当に便利なのだ。
至近距離だと発射が間に合わないから、こっちはゴブリンパンチだね。
普通のゴブリンではそろそろ相手にならないな。
レッドキャップ相手に全滅しかかってた頃が、遠い昔のようだ。
「うおーっ、ドルマ殿、今よそ見しながら戦ってたでござるな!? 余裕でござるか!」
「俺の技はちょっと見れば当たるのだ。だけど強い敵相手にはちゃんと見ないとなんだぞ」
「ははあ、ゴブリンなど弱敵でござるからなあ」
「忍者の感覚でもそうなの? おっと!」
凄く近くまで近寄ってきてたゴブリン。
俺はとっさに、「ゴブリンパンチ!」と迎撃した。
素手だったので、倒すところまでいかない。
ゴブリンは『ウグワーッ!』と叫びながらゴロゴロ転がっていき、『オ、オボエタゾ!!』とか言ってそのまま姿を消した。
逃してしまったなあ。
しばらくすると、ゴブリンはいなくなった。
倒せるものは倒し尽くしたし、残りは逃げてしまったのだ。
そして宿場町を探索すると、ここはゴブリンたちに滅ぼされた後だったのだ。
「ゴブリンが根城にしてたんだな! みんな殺されてる! これは許せないな!」
「拙者たちもゴブリンを殺しまくったでござるがなー」
ホムラは別に動揺する様子もない。
さすが忍者。
しばらく宿場を散策し、忍者は投げるための刃物を大量に集めていた。
日が傾いてきた頃に、遠くから武装した集団がやって来たではないか。
彼らは宿場町のゴブリンが全滅しているのを見て、アッと驚きの声をあげた。
「あらー! ドルマさん、エリカさーん!」
見覚えのある眼鏡の娘が手を振っている。
レーナだ。
ということは……。
傍らに、トニーの姿もある。
「う、うわー! お前らどこ行ってたんだよ! オレずっと心配してたんだからな!」
心配してたのか。
いいヤツだなあ。
「トニーはどこ行くところだったんだ? 私たちはゴブリン退治だ!」
「エリカもか! オレたちもさ、ゴブリンの大攻勢があるから、こいつらを国境線まで追い出そうってことになってさ。そこにゴブリンの大集落があるだろ?」
この時代だと、ゴブリン王国ではなくて大集落なのだな。
だが、やはりゴブリンの被害には困っている様子だ。
フォンテインナイツの戦力なら脅威じゃないが、一般人からするとゴブリンはとんでもなく恐ろしいモンスターだからな。
そういう人間たちだという話もあったっけ?
あれ? この話はエリカの祖父……つまりトニーが言ってたんじゃなかったか?
「トニー、ゴブリンって人間だと思うか?」
「何言ってるんだドルマ。ゴブリンはモンスターだろ?」
「ほう」
ほうほうほう、これはこれは。
「ドルマ! フォンテインの伝説に、ゴブリン砦の決闘というのがある! つまりこれは、これじゃないか!」
「あ、そうか。それは確かにそうだな。俺たちがこの時代に降り立ったのは、この伝説を再現するためってわけか」
横でホムラが首をかしげている。
「どういうことにござるか?」
「おっと、忍者には何も説明してなかった。フォンテインの伝説は知ってるだろ」
「無論!」
「今俺たちは過去の時代に来ている」
「?」
「フォンテインはもう殺されてる」
「!?」
「で、俺とエリカで、フォンテインナイツというパーティなんだが……俺たちは地の底の魔人を倒した。これ、フォンテインの伝説の最初の冒険な」
「!!」
だんだん理解した顔になってきた。
物わかりがいいなあ。
「オレ、なんかみんながやった功績を全部もらっちゃったせいで、こいつらの指揮官みたいになったんだ」
トニーが戸惑っている。
フォンテインナイツは、どろ魔人を倒してすぐに消えたからな。
トニーはフォンテインの再来と呼ばれているらしい。
あのフォンテイン、そこまで凄い人物だったのか?
「レーナは戦ったり苦手だし」
「エヘヘ」
「困ってたトコだったんだ。手伝ってくれ!」
「いいぞ!」
エリカが即決した。
そういうことになったのだった。
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