「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は、理解ある女騎士(自称)と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~
第18話 ラーニング! 望まぬ戦いを避けるには!
第18話 ラーニング! 望まぬ戦いを避けるには!
兵士たちは、ロッテに刃を向けるのが大変嫌そうだ。
だが、襲いかからないと死の束縛とやらで死んでしまうらしく、やる気のないヘロヘロな攻撃を繰り出してくる。
「やー」
「おっと」
ロッテとともに避ける俺。
「や、やめるのじゃー! わらわは皆と戦いとうないのじゃ!」
「しかし戦いを止めたら我々は死んでしまうのです!」
「死んでもロッテ様を守りたいという気骨のある者は先に全滅していますので、我々は全員自分の生命の方が大事な兵士です!」
「なんと潔い自己紹介だろう」
俺は感心してしまった。
それと同時に、彼らに死の束縛とやらをかけたグリアという女にムカムカしてくる。
なんて悪いやつだ。
「死の束縛というのは、魔神アンリマユの使う力なんだ! フォンテインがアンリマユと戦った時、死の束縛をかけられてしまった! これは自分にだけ見える死へのカウントダウンが出現するというもので、条件を破るとカウントが進んでしまうんだ! きっとさっき死んだ兵士は、今まで何度も条件破りをしてたんだと思う」
「死のカウントダウンかあ。恐ろしい力だなあ。そして俺はそれもラーニングできそうな気がする」
「ドルマには正邪関係なくラーニングできてしまうんだな! 凄いぞ! あ、それからいいことを思いついたんだけど」
エリカが手近な兵士をナタの背で叩いて昏倒させている。
躊躇というものがないが、気絶すれば兵士もカウントダウンが進まないっぽいのでウィンウィンだ。
「なんだなんだ」
「こいつらは姫君の生命を狙ってるんだろ? だったら生命を狙えないようにすればいいんじゃないか」
「と言いますと」
「ドルマがロッテを抱えてジャンプすればいいんだ!」
「なるほどー!!」
俺は即座に、武器を収納してロッテをお姫様抱っこした。
彼女は小さくて軽いので容易なのだ。
「うーわー!! 不安定な体勢になったのじゃー!! じゃが、これで兵士たちの安全に繋がるのなら……やってくれドルマ!」
「ああ! ジャンプ!」
俺は空高く飛び上がった。
そしてリエンタール公国へと空から突き進む。
そうすると、向こうから迎撃が来るわけである。
竜騎士だ。
「恨みはないが、落とさせてもらう」
槍を凄い勢いで突きつけてくる。
俺は水袋のついた腰を振りながら叫んだ。
「渦潮カッター!」
「ぬうおっ!!」
槍の穂先と、回転する水の刃がぶつかり合う。
すぐに槍が勝つが、その時は俺と竜騎士が交差するような体勢に入っているのである。
「お前も死の束縛でやられている口?」
「この会話は聞かれている。答える事はできん」
つまりこれは、死の束縛で言うことを聞かされているということなのだ。
おっそろしい男だが、完全に敵ではないということだな。
「わらわの部下たちを殺したのもそれか!」
「戦う意志を持つ者は、敵として全力で叩き潰す」
それだけ言うと、竜騎士は降りていった。
またジャンプで追いかけてくるぞ。
「むうーっ!! 割り切れぬのじゃ! わらわ、あいつ大嫌いなのじゃ!」
「それでいいのではないか。はいはーい。リエンタール公国に突入するぞ」
下では、戦う必要がなくなった兵士たちの間を、エリカがバタバタ走っている。
彼女の言う通り、兵士たちがロッテに攻撃するのが不可能になれば、死の束縛は効果を発揮しなくなるんだな。
きっとこれもフォンテインの騎士物語に書かれていたに違いない。
どれだけ冒険に有用な情報が詰まった物語なんだ。
そろそろ着地だという頃合いに、公国の入り口に妙なヤツがいた。
ごちゃごちゃと鉄の鎧を纏った巨漢だ。
いやあ、巨漢という次元じゃない。でかすぎる。
5mくらいある。
巨人だろ。
そいつが俺を指さして、「ファイア!!」とか叫ぶのだ。
すわ、炎の魔法かと渦潮カッターを構えたら、巨人の全身を包む鉄の鎧が展開した。
そこから、筒状の物が次々発射されてくる。
「なんだーっ!? 拡散渦潮カッター!!」
水袋の中身をほぼ使い切りながら、広範囲渦潮カッターで迎撃する俺。
次々打ち上げられる筒状のものは、渦潮カッターとぶつかりあって爆発を起こした。
危ねー。
なんだあの爆発物。
だが、渦潮カッターによるガードをくぐり抜けて、一発だけこっちに向かってきたのである。
やばいやばい。
ギリギリ直撃か!?
というところで、ロッテが「ふんぬー!!」と筒にキックをした。
そこが筒の先端よりちょっと外れたところで、筒はギリギリのところを通過し、俺の肩をゴリゴリ擦っていった。
『ラーニング!』
「なにっ!?」
名前:ドルマ・アオーマーホウ
職業:青魔道士
所有能力:
・バッドステータスブレス
・渦潮カッター act2
・ゴブリンパンチ
・ジャンプ
・バックスタブ
・ミサイル NEW!
よく分からない技が身についたぞ。
あんな物をぶっ放す道具なんか持ってないが、どうやって使うんだ。
「ファイア!」
うおっ、第二弾が来る!
俺はヤケクソで、地上にいる巨人を指さした。
「ミサイル!」
すると、俺が身につけていた槍が勝手に飛び上がった。
そいつは石突から猛烈な勢いで炎を吹き出すと、巨人目掛けて突進する。
「!?」
ミサイル発射体勢にあった巨人が驚く仕草をする。
あの巨体が故に小回りが効かないのだ。
ミサイル化した槍は、発射されたミサイルを正面から貫きつつ……巨人の頭部に深々と突き刺さった。
「ウッ、ウグワーッ!!」
巨人が叫んだ。
そして、全身のミサイルごと大爆発を起こす。
うわーっ、すげえ爆風だ。
いつの間にかエリカが近くまで来ていて、巨人の爆風を伏せてやり過ごし、そのまま匍匐前進で公国まで入り込んでいった。
立ち上がった彼女の横に、俺も着地する。
爆風のおかげで、滞空時間が凄いことになった。
「やったなドルマ! 新しい技だな!」
「ああ。武器を爆発物にして打ち出せるみたいだ。渦潮カッターと違って追尾はできないが、こいつは強いぞ」
「なるほど! じゃあ私のナイフを使うんだ! これ、ナイフベルト」
「サンキュー」
ナイフベルトの受け渡しをして、エリカに付けてもらっていると、ロッテの様子がおかしい。
公国の大地の上に立ち、わなわなと震えている。
「むむむむ! 溢れてくるぞ、わらわの中に公国の守りの力が! リエンタールにいる間、わらわは無敵の癒やしの力を得たのじゃ!」
そう言うロッテは、白く輝き始めている。
なんだなんだ。
「だんだん英雄物語みたいになって来たじゃないか! うわあ、ワクワクする!」
エリカはいつも通りなのだった。
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