胸臆の連理

猫月笑

三日後に殺される未来を視た

 僕は死ぬ。

 その未来は目の前にはっきりと広がっていた。

 昔、ある偉い人は予め一生は決まっていると言い残した。

 どんなにあがいても未来は一つしかないと、残酷な現実が告げられている。行き着く結末を知っていてもその未来は変わらない──僕もそう思っていた。

 

 肩を揺さぶられて、ぼやけた意識が鮮明になった。上目遣いの女の子と大雨の田んぼの光景が対象的に浮かぶ。すると全身からへなへなと力が抜けた。

「寒む……」


「こんな中シャツ一枚で立ってたからね」


 花柄の傘を片手に黒髪の女の子は心配そうな顔つきだった。彼女は新野あやは、幼馴染だ。

 ずぶ濡れのシャツがへばり付き、冷気が身体にまとわりつく。それ故に鳥肌が止まらなかった。目をつぶって耐えしのいでいると彩葉の手が腕に当たる。そこにはふかふかのタオルがし出されていた。


「今度はどんな未来を視たの?」


 不安な顔がより深刻さを増す。そして胸の締めつけに苛まれた。

 どうやら僕は死ぬらしい。

 その未来を今知った。 

 言葉が見つかったらよかったけれど、結局引きつった笑みだけが僕を支配した。

 彩葉はすべて呑み込むように大きく息を吸った。冬の冷たい雨のせいで凍てつく寒さだ。いくら頑張って表情を作ろうと簡単にひしゃげる、そんなはずなのに──。

 彩葉は満面の笑みで口を開いた。


「私は紘を殺したんだね」


 彩葉は虚ろな目で天を見上げた。

 きっと僕の本能的な怯えを彩葉は感じ取ったのだ。

 未来、彩葉に『殺される』。

 苦痛がまるで本当に経験したかのように蘇ってくる。

 どうしようもなくなって叫び声をあげた。

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