【閑話】〜リッツヘルム〜後編

神前裁判ではセルシュ様が神弁者として来ていた。


まあ、来るとは思った。


裁判前に俺はセルシュ様に呼ばれアレの印象を聞かれ「おぞましい何か」と答えたからだ。


セルシュ様は「なるほど」と言って帰って行ったから、何かしらの行動を起こすと思っていた。


神前裁判でアレが出てきて聖玉がおかしな反応をし、一時中断して枢機卿から大罪人の可能性があるとされた。


驚きはなく逆に納得がいった。


皇宮で皇族の尋問が終わるまで大広間で周りを観察していたが側妃やその子供、皇弟は聖玉を畏れているだけ・・に見える。


尋問から出てきた皇太子は青ざめ震えていたし、馬鹿は怒り心頭、皇后は泣きながら独り言を言っている。

皇帝も憤りを隠せずにいたが、阿呆どもの自業自得だと冷めた目で見た。


教会に戻り神前裁判は中止になったが全て公表し刑を受けるまで地下牢に一旦収容され教会から出られないとされたが、彼奴らはもう終わりだ。


アレは大罪人と同じモノだ。

それに関われば残酷な死以外ない。

だが悪人であるほど生き汚いもんだ。

このまま素直に裁かれる殊勝な奴じゃないだろうな。


教会を出ると泣いてるお嬢様にセルシュ様がハンカチを渡していた。


えっ、ちょっと待て。


セルシュ様、そんな優しい顔出来んの?

しかも二人の距離が近い。


「あれってもしかして♡」


アヤナがキラキラした目で見ていた。


「デキてるのか?」


アヤナは二人をじーと見て首をふる。


「うーん、なんだろう。

甘さが足りないから微妙な所じゃないですかね。」


微妙かぁ。


セルシュ様ならお嬢様の足りない部分を補えるがこれは他人が口出しするべきじゃない。


それからも教会から呼び出されたり、皇宮に侵入したりと二人が一緒に・・・・・・行動するが進展がない。


セルシュ様は教え子を強調しお嬢様は色恋の感受性が備わってないようだ。


皇帝と結婚回避にセルシュ様や俺に処女をあげるなんぞとほざいた。


あんたにそんなんできるか!

いざ事に及べば怖くなって逃げ出すのが目に見えるわ!


孤児院にいたおマセな幼女とだぶる。


セルシュ様、こんなんに食指が動くのか?


まあ、アヤナと見守ろう。


俺たちは教会の東塔で暫く世話になる事になった。


お嬢様は再教育で東塔を出られない可哀想な状態だが、仕方がない。

そんな中でも変な物作って息抜きはしっかりしてるが。


皇太子との婚約が無くなり、マセル公爵家の後継者は正式にお嬢様になった。

もし今マセル公爵に何かあれば速やかに公爵位を継がなければならない。


今のお嬢様に激変する帝国の三公爵の一つマセル公爵位を継いでやっていけるのか?


お嬢様の中身はその辺の平民の女の子だ。


少しは策を巡らせるが爪が甘い。


そして変に情がある。


セルシュ様もわかっているがお嬢様の立場よりも心を守る方に重きをおいている。


セルシュ様がお嬢様を娶られるならいいがそうでなければ突き放すべきだ。


でなきゃマセル公爵家はお嬢様の代で潰れる。そして俺は失業か死かのどちらかーー

それは勘弁だ。


お嬢様の成長が先か、公爵の寿命か先か。

そう考えるとセルシュ様の腕にかかってる部分がでかいな。


頼むからあの幼獣お嬢様を筆頭公爵家後継者に相応しく成長させてくれ!(俺の未来のラブラブ生活の為に)





それはそれとして、現在アレと関係者は北塔に閉じ込められている。

地下牢では収容しきれなくなったからだ。


帝国は暫くゴタゴタするだろうが、俺はお嬢様を守るだけだ。


しかしそのお嬢様も物思いにふける時間が増えていってる。


皇室や多くの貴族が巻き込まれたから気にするのは仕方ないが、奴らがどんな目にあおうと自業自得だし、弊害のある学園内平等を続け女狐に騙された皇族が最大の原因だ。


あれ?

お嬢様はなんで悩んでるんだ?


今のお嬢様は記憶喪失前とも、記憶喪失後のハチャメチャさもない。


どんなお嬢様でも護衛からすれば関係ないって話なんだが···


お嬢様の前では言えないが実は幼獣お嬢様も嫌いじゃない。

公爵家後継者として失格だってわかってるが、アヤナも俺も無鉄砲で金の瞳をギラギラじゃなくて、キラキラさせて悪巧みするところも、情があるところもちょっとだけ無くなって欲しくないと思ってる。

出来の悪い子ほど可愛いって言うだろ。


外面はしっかり令嬢出来てるしな。(ただしすぐ剥がれるが)


どっかの先生が引き取ってくれたらなぁと思わずにいられない俺だった。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆


お読みいただきありがとうございます

(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)

「火事と逃亡」から先は7月17日0時に一旦削除させていただきます。

ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。

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