第6話 お父様(笑)と会話

正式?に記憶喪失の判を頂いた次の日。

お父様(笑)が来た。

ベッドで座っていたので、お父様がベッドの傍に椅子を持ってこさせ不機嫌に聞いてきた。


「医者の話では全く覚えていないそうだな。」


「はあ、そうですけど」


私の言葉を聞いて益々渋い顔をする。


「その言葉はどうにかならんのか?」


「どういう風に?」


更に渋い顔を。なんなんだ、こいつ。


「私も聞きますけど、娘が助かった事より言葉遣いが気になるって貴方、本当に父親ですか?見舞いにも一度も来てないですよね。」


親って言うなら親らしくしろよ。


「なっ!」


「色彩は一緒ですけど家族って感じが全くしないんですよ。娘が助かって喜びもしないし記憶がなくてそれに悲しんでもない。」


また固まった。後ろにいるお偉いさんも固まってる。おかしいなぁ?前世で読んでた小説の貴族って酸いも甘いも噛み分けてるらしいのになぁ。


「おーい」


呼んだらハッとした様に彫像から人間になった。


「喜んでいない訳では無い。それに忙しくて来られなかったんだ。」


言い訳がましいのがウザいので次にいこう。


「喋り方は我慢して下さい。用件を言ってくれません?そろそろしんどいので。」


「いや、次でいい。休みなさい。」


なんじゃそりゃ?

まあ、いいか。こっちも用事会ったし。


「えーとお父様?私も頼みたい事があったんですよ。」


お父様が警戒したように顎を引く。

「なんだ?」


そんなビビんないで欲しい。あんたにとっては娘でしょうが。


「さっき言ってた喋り方ですよ。ご存知の通り記憶がないんです。知識も常識もないんで教えてくれる人、紹介してくれません?無理なら後ろのお偉いさんぽい人でもいいんで。」


えー、また固まるのー?


「嫌ならいいですよ。」


またハッとなって人間に戻り


「あ、ああ用意する。」


と惚けた様に言った。


「·····貴方から見て私ってどんな人間だったんですか?」


ちょっと聞いて見たかったんだよね。お父様は考え込む様にしながら喋る。


「完璧な令嬢と言われていた。私に逆らったことも、我儘を言ったこともない素晴らしい娘だった。」


「なるほど?」


「なんだ?」


「いいえ、ありがとうございます。」


「お前は知らぬだろうがーー」


「ええ、知りませんよ。だから聞いてるんです。最低な部類の人間ですね。」


「何?娘はーー」


もう一度話を遮って私はサイテーな父親を見た。


「最低なのは貴方ですよ。私は父親の言葉を聞きたかったんです。家での様子とか好き嫌いとかね。第三者が言える様な見方しかできないんですよね。しかも一度も名前を呼んでいない。どんな父親かよくわかりました。」


こりゃ病んでもおかしくない。暴力振るわれていないだけマシか?

わからん·····。

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