最終列車が閉まる前に
コロッセオ
最終列車が閉まる前に
〇梅雨の朝は少し蒸し暑く、霧が立ち込めている。
「間に合え!」
俺はそう叫び、階段を駆け上がっていく。
『発車間際の駆け込み乗車は大変危険です。おやめ頂きますようご協力……』
「ぜぇ…んなこと言ったって!これ間に合わないと遅刻確定なんだよ!」
俺はアナウンスに向かい吠えて閉じようとするドアをくぐった。
「……はぁ、間に合ったーー!」
俺は小声で叫びながらガッツポーズをする。
「……」
同じ学校の奴らは過呼吸の男を冷たく睨む。
俺には関係ない。
「……さて1限目は…うわっ進路学習かよ」
俺は不満を散らしつつスマホを手にとる。
「……ログボ弱いな」
そんな事を言っていると放送がかかる。
『まもなく…〇〇、〇〇です』
「はいはい、出ますよ出ます」
高校2年生の俺は聞き慣れたアナウンスにいらない相づちを打ちドアの前に立つ。
「……うお!」
俺が出ようとした時隣から1人の男性が俺を横切り、ドアから飛び出し、階段を駆け上がった。
「俺より大変そうなやつがいるし、俺は幸せな方か」
そんな事を呟いて改札を通ると、誰かいる。
「おーい、佐藤」
そうだ、親友の鈴原だ。
「バレンタイン限定ガチャどうだったよ?」
「全然大爆死だった。確率操作されてんだろこれ」
俺の返しに鈴原はクセの強い笑いをして言う。
「俺もだったよ。まじおもんないよな」
「ほんとそれ」
俺は適当な返しをしながら早歩きで学校へと入る。
「ホームルームはまだ7分あるだろ。そんな急がなくても」
鈴原の声を無視して進むが下駄箱で止まる。
「…どうした?急に止まって」
「……俺の下駄箱どこだっけ」
「は?記憶喪失?」
鈴原のボケに「ちげぇよ」とだけ吐き捨て自分の名前のあるシューズをとる。
「ゲームのしすぎで頭逝ったんだろ。エナドリに脳を侵されてる証拠だな。はは!」
「うるせぇなこの野郎」
俺がシューズを履くと後ろから普段聞かない声が聞こえる。
「佐藤くんおはよー」
「お、おはよ」
俺に挨拶をした女子は俺の前を笑顔で通過していった。
「佐藤〜お前分かりやすくていいなぁ〜」
「は?は?なんのことだよ!適当なこと言うなよな!この勘違い野郎!」
俺は鈴原に捨て台詞を吐いて階段を飛び越えていった。
〇ホームルームの後の5分休みも終わり、1限目が始まった。
着慣れた色が微妙に落ちた私服を来た担任が束になったプリントを見て言う。
「えー…お前らは高校最後の夏休みになるわけだが、高3の夏休みはな、将来就く仕事の資格の勉強をしたり、ここでは殆ど無いが受験勉強に全力を出す大切な期間だ。そこでお前らには改めて将来の夢を決め、さっき言ったことをして欲しい。だからこの50分はこの進路シートを書いてもらう」
担任は熱烈なスピーチを終えたら、学級委員にプリントを渡してすぐさま教室を出ていった。
「……」
進路なんて何とでもなる。
なんせ日本の約96%はせっせと働けている。
仕事なんて何でもいいし。
担任もすぐ出てくあたり、俺らにあんま期待してないんだろうな。
「鈴原、俺寝るわ」
「マジかお前!おい、佐藤寝るってよ!」
どうでもいいんだよ、将来なんて。
今が良ければそれ以上は何も…………。
〇「……ぁ」
夢を見ていたらしい。
高校3年生の頃だ。
「……」
口を開けば罵倒し合う日々。
眠くなる授業。
胸をかき回すかのような恋。
その全てが懐かしく感じて。
「……」
僕の周りのデスクは全て空っぽで薄暗い。
現在は23時10分。
終電は近い。
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ショートショートを読んで下さりありがとうございます。
もしお時間があればもう1度この話を読んでみてください。
そうしたら1回目と見え方がかなり変わります。
最終列車が閉まる前に コロッセオ @korosseo
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