六月二十三日

 選挙がある。

 権利を主張するには義務を行使せねばならない。

 というわけで、期日前投票に行ってきた。

 元々、選挙当日に行かない。知っている人に顔を合わすのが気恥ずかしくなるから。といっても、知ってる人が役所で働いていて、受付担当をしているから当日だろうと期日前だろうと関係ない。最近は担当を外れたのか、顔を見ない。それはそれで寂しい……。

 どっちやねん、と自分にツッコみたくなる。


 そんなことより、今日は暑い。暑かった。

 照りつける太陽が湿度の高い空気を温めるせいか、外に出た途端、熱波に包まれる。

 役所にたどり着いたときには、張り付いた衣服をつまんでは剥がす。じわりじわりと全身から吹き出た汗の多さに、ただ驚くばかりだ。

 建物の中は涼しい。が、ひんやりとした冷たさより、涼を感じる程度。夏本番前なのに、いまから全館冷房をするわけにもいかないだろう。火照った体の私としては、充分オアシスである。

 

 今回の選挙は非常に難しい。

 現在、物価高騰で私達の生活が逼迫しつつある。しかも、まだ長いトンネルの入口であり、先が見えない。

 為政者たちは、原因はロシアがウクライナに戦争をしているからだと声高に叫んでいる。現状に拍車をかけた要因ではあるが、正確ではない。

 もし彼らの意見が正しいのなら、戦争が終わったら物価高騰が収まるのか。残念ながらそうだとは言い難い。根本の原因がなくなるわけではないからだ。


 すべては第二次大戦を勝利し、アメリカ合衆国が覇権国となったことに端を発する。アメリカは侵略によって反映する権利を手に入れた。が、権力者の一存だけでは容易く世界大戦をくり返せない民主政治体制を取っている。自国民への被害も掛けたくない。

 で、どうしたか?

 自国の人的被害を最小限に抑えつつ、戦争で利益を得るために、他国に戦争をやらせたのである。

 ターゲットとなったベトナムや朝鮮などの小国にしてみればとんでもない話なのだが、乗せられて自国民同士で争った彼ら自身にも非がないとはいえない。

 第二次世界大戦から数十年間、アメリカに匹敵する国家は存在せず、経済大国である限り代理戦争は許され、世界各地で紛争や争いは続いてきたのは、懸命に学校で歴史を勉強してきたみんなならご存知。説明する必要もない。

 加えて、歴史を紐解けばわかるように、反映した国家が衰退しなかった試しはないことも周知の事実。

 経済的に衰退しはじめた大国は必ず、地位を維持するために紙幣を印刷して数字上の富を作り上げ、やがて紙幣価値が暴落し、命数が尽きて覇権は終わりを告げる。

 紙幣印刷が国家衰退の末期に行われる政策であるなら、その前に行われる政策とはなにか? 

 低金利政策である。

 金利を下げて低下する成長率を上げようとするも、ついに金利までゼロとなり、その後に紙幣印刷が行われるのだ。

 アメリカの金利は、一九八〇年頃から低下し、二〇〇八年のリーマンショックによってゼロとなった。

 余談だが、ゼロ金利政策を長年行っている国が他にもある。

 私達の国、日本である。


 私達の国は先ごろ、ドイツに抜かれてGDP順位が四位となった。

 その前は中国に抜かれている。

 バブル以降、日本がGDP順位二位を堅持できたのは、国債を乱発して発行してきたおかげである。

 それをしなければ、もっと早く下位に転落していただろう。

 インフレとなったならば、生産力を上げねばならない。


 日本はバブル崩壊から二十年以上経った西暦二〇一二年暮れ、二度目の安倍政権が誕生した。

 二〇〇〇年代に少しだけ経済成長したが回復せず、急速に進む高齢化と出生率低迷とともに生産性の伸びは停滞し、日本の代表的な旗艦企業の多くは世界市場のシェアを失なっていた。

 しかも二〇一一年に大震災が起き、一万六〇〇〇名もの人々が亡くなり、原子力発電所は破壊。原子力発電に対する反発が人々の間に広まっていた。


 そんなとき打ち出された経済改革が「アベノミクス」だった。

 また、水面下で目立たず進められた施策や、戦後平和主義を脱却して、日本を「普通の国」に戻し、世界の安全保障枠組みの一国となるべく着実に進めたのだ。


 つづく!

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