第43話 アダム、我慢の男(後半アダム目線)
……十分経過。
あれぇ?
口を開いて待ったけれど、いつまでたってもエロエロなキスにはならず、じゃあ私からと舌を差し出してみれば、アダムの唇に届く前に唇は離され、強く抱き締められた状態で後頭部にキスをされて十分くらい経過しました。
足フェチ&後頭部フェチなの?かなり斬新なフェチだな。猫の後頭部に萌えるという話は、前世で猫マニアのカメラマンさんから聞いたことはある。
もしかして、猫扱い?愛犬や愛猫にチュッチュキスする飼い主がいるのは知っているよ。まさか、あれと同じ?
「アダム……あんまり頭にばっかキスされると、撫でられてるみたいで眠くなっちゃうよ」
実際、温いし居心地は良いしで、瞼がトロンて蕩けてきた。
「じゃあ……寝る?」
「寝る!」
あ、目が覚めた!これは閨のお誘いだよね。
アダムが立ち上がって私に手を差し出してきて、私はその手をとって立ち上がって、アダムのエスコートでベッドに入る。
フカフカの布団に入ってアダムを待つと、さすがに今日は寝室で仕事をしている場合じゃないよね、アダムもすぐに私の横に潜り込んできた。
「……」
待つこと数分……あれ?なんかアダムの寝息が聞こえるんですけど?!
私は恐る恐る上半身を起こし、アダムの顔を覗き込む。
イケメンの寝顔、最強です!……じゃなくて、なんで寝ちゃうの?寝れちゃうの?!
寝るって、本当に眠る方の寝るかよ?!ありえない……。
茫然自失とはこのことかな。しばらくアダムの寝顔をただ見つめた。しかし次第に何故か笑いがこみ上げてくる。
うん、なんか私達らしいよね。会ったその日に婚姻を結んで、それからお互いに慣れていった。もうすぐ結婚一周年だというのに、やっと初チュー。しかも可愛らしい触れるだけのチューとか、小学生レベルじゃない?
アダムの黒いサラサラな髪を指ですいてみる。羨ましい指通りに、ついムラムラしてきてしまう。何度か髪を指ですきながら、額にかかった髪の毛をどけてチュッとキスした。
起きない……な。
アダムの濃い紫の瞳も好きだなぁ。今は瞼が閉じられていて、黒い睫毛が伏せられているけれど、アメジストみたいに輝くその瞳が優しい色を浮かべるところが好き。瞼にキスしてみたが、やはりアダムは起きない。
指先でアダムの鼻筋をコチョコチョしてみる。鼻ぺちゃの私と違い、眼鏡がきっちりのりそうな真っ直ぐな鼻筋、小鼻は細くて鼻の穴な縦長なの。鼻が高いからだよね。私の鼻の穴なんてまん丸だもん。
そのまま、さっき触れた唇を指でフニフニ弄る。引き締まって男性らしく薄めな唇だけれど、感触はふっくらしていて滑らかだ。ついペロンと舐めてしまう。舌先でツンツン唇を突っついてみたが、唇が緩むことはなかった。残念!
首筋を爪でなぞり、その固い胸板をクルクル撫で回す。ちょっと乳首が反応した?アダムは身じろぎもせずに寝ているし、呼吸も平常通りだから、乳首は感じないタイプの男性なのかな。数回乳首があるだろうあたりを爪で引っ掻いてみたが、アダムが吐息を漏らすこともなく、面白みにかけるからそのまま指をお腹に滑らせた。お臍の周りをやはりクルクルなぞり、お臍の下を縦に撫で軽く押してみた。すると、アダムのお腹が僅かにピクリと動いた。
アダムが「ウウーン」と唸って、私に背中を向けるように寝返りをうち、布団を肩までかけてしまったので、私の悪戯は終了になってしまった。
「……残念。フフ、アダムおやすみ」
返事はもちろんなく、私はアダムの背中に張り付くようにして眠りについた。
★★★アダム目線
「全部……好ましいんじゃないかな」
「……マジか。よしッ!」
思わず拳を握って小さくガッツポーズをとってしまった。
すでに夫婦だけれど、これでちゃんと気持ちも伴った夫婦だ。
シャーロットの身体がちゃんと成熟して、子供を身籠ることができる準備が整うまてまは、まだ完璧な夫婦にはなれないけれど、子供のこともちゃんと考えてくれていたのも嬉しかった。
この世界、妊娠出産は女性に多大な負担になる。下手したら命がけの行為だ。男児が二人くらいできれば後継者問題は問題ないし、もしできなくても兄弟の誰かを王太子に譲ればいいだけの話だ。
シャーロットが心配していたような、第二妃第三妃を娶るつもりも毛頭ない。カリナのことで不安にさせたのは可哀想だった。妹というより弟くらいにしか思っていないというのに。
あまりに嬉しくてシャーロットをギューギューに抱きしめると、シャーロットも僕の背中に手を回してくれた。
小さくて僕の身体に妙にフィットする。なんだろう、この自然に丁度いい感じ。
「好きだ」という気持ちが溢れて唇を寄せてしまった。チュッと吸い付くようなしっとりとした感触に、夢中になって何度も唇を合わせてしまう。シャーロットの腕が僕の首に回り、身体の密着も増してくる。
甘い、柔らかい……幸せだ。
思わず舌を入れそうになり、慌てて唇を離した。シャーロットの唇も半開きになっており、潤んだ瞳に半開きの口から見える小さな舌に生唾を飲み込む。
マズイ!我慢できる気がしない!でも、我慢だ、我慢だ、僕!
シャーロットの顔が見えないようにしっかり抱きしめ、頭のてっぺんにキスをすることでクールダウンをはかる。
心身共にクールダウンできた頃、シャーロットがもぞもぞと身体を動かした。
「アダム……あんまり頭にばっかキスされると、撫でられてるみたいで眠くなっちゃうよ」
確かに、さっきよりもシャーロットの体温は上がったように感じられるから、眠くなってしまったのかもしれない。この状態を解くのは残念だが、健やかな成長には睡眠は不可欠だから、シャーロットにはよく寝てもらわないといけない。そしてなるべく早く全ての意味で本当の夫婦に……。
「じゃあ……寝る?」
「寝る!」
この幸せな時間が終わるのがもったいなくて、ちょっとためて聞いたけれど、シャーロットからは即行「寝る」と返ってきてしまった。
シャーロットとベッドに入り、並んで横になる。もちろん眠れる訳もなく、寝たふりをした。
すると、隣でシャーロットが起き上がった雰囲気がした。いつもは一秒で爆睡してしまうシャーロットが珍しい。
もしかして、今日は頭を撫でて寝かしつけてないから?いつものように寝かしつけるべきかな?
目を開けようとしたところ、いつも僕がシャーロットにしているようにシャーロットが僕の頭を撫でてきた。
これはなんていうか、気持ちの良いものだな。
ついうっとりとして目を開けずにいると、おでこにチュッとキスをされた。もしかして、いつも眠ったシャーロットのおでこや頬にキスしていたのがバレてる?
ついで瞼にもキスされ、鼻筋を擽られた。唇をフニフニ弄られ、ペロンと舐められた。
舐めた!?
しかも、まるでノックするように唇を舌でツンツンしてくる。迎え入れたくなるのを奥歯を噛み締めて我慢すると、シャーロットの唇は離れてしまった。
あれは、明らかにディープキスを強請る仕草だ。
年若く、王女だったシャーロットにそんな経験があるとは思えないが、前世の彼女には複数の恋人がいたに違いない。もちろんキスもそれ以上も経験済みだろう。
前世のシャーロットが本物のイチャラブHをしてたんだと思うと、今すぐその記憶を上書きしたくなる。キスだってHだって、テクニックだけなら素人に負ける気はしない。
でも、そんなくだらないヤキモチでシャーロットの身体を傷つけたくなかった。
とにかくシャーロットの悪戯に寝たふりを貫いていたら、シャーロットの指先が首をつたって胸に下りてきた。乳首の周りを焦らすように撫でられたかと思うと、爪でピンポイントに乳首を引っ掻いてきた。声が漏れそうになり、下腹に力が入る。
その腹をなぞり、臍を弄ったかと思うとナニの付け根を軽く押された。
これはヤバイ!
僕は寝ぼけたふりをして寝返りをうち、布団を肩までかけて身体の異変を隠す。
「……残念。フフ、アダムおやすみ」
見た目通りじゃない大人の色気漂うシャーロットの声が耳元に響き、シャーロットは僕の背中にピッタリ寄り添うようにしたかと思うと、数秒で本物の寝息が聞こえてきた。
十分ほどそのままの体勢を保ち、シャーロットが深い眠りに落ちたのを確認すると、代わりに枕をシャーロットに抱かせて僕はベッドを後にした。
シャーロットが寝ぼけてベッドから落ちる前に、なんとか自分の昂ぶったナニを鎮めてこないと……。
僕は急いでトイレへ走った。
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