第39話 お色気大作戦
ウフフフ……。
今日はロザリーに買ってきてもらったとっておきがあるんだ!
名付けて、アダムをムラムラさせるお色気寝間着!!
いやさ、ベビードールとかスケスケネグリジェとか、一応この世界にもあるんだよ。エロはどの世界でも発展するからさ。ドレスの下に履く下着が丈の長いかぼちゃパンツ(ドロワーズ)なのは残念だけど。
ただね、残念ながら私のサイズだとお胸が丸見えになっちゃったり、レースとかで秘部が微妙にすけるかすけないかくらいのチラ見えがエロいのに、身長やバストサイズの問題で、見当違いの場所にレースがきて全見えになっちゃったりで、ただの露出狂になっちゃうの。
で!たどりついたのがこの寝間着。
実際は寝間着じゃなくて、子供用の見せブラ&見せパンセット。いわゆるドレスの下に着る見えても良いインナーのようなもの。だいたい十歳くらいまでの貴族女子が、コルセットやドロワーズに慣れる為に着るやつなんだけど、私にはサイズピッタリだったのよね!なぜかね!
これは寝間着!私がそう思って着ているから下着じゃないよ。
ビスチェはお胸の部分に、かぼちゃパンツはお尻の部分に段々のレースのフリルがついていて、貧弱なお尻とお胸をカバーしてくれる優れもので、色は白で清楚なイメージにしてみた。
これを着て、アダムの様子を伺うことにしたの。明らかに拒絶反応が見れれば、すぐにガウンを羽織れるように肩にひっかけ、いざ行かん!
夫婦の寝室の前で大きく深呼吸し、素知らぬ顔をして部屋に入る。
「あー、いいお湯だった」
「お疲……れ」
アダムが私を見てピシリと固まってしまった。
瞳孔……開いてない?
嫌悪感が突き抜けて思考が停止してしまったのか、それとも私のお色気大作戦が成功してドキドキして目が離せないのか、はたしてどっちだ?いっきに表情が消えてしまって判別がつかない。
「アダム、どうか……した?」
アダムの様子をもってよく見ようと、近づいてみた。顔色が悪かったり鳥肌が立っているようならば、すぐさまガウンで隠してしまおうと身構えながら、アダムの横にたって観察する。
表情は無だけれど、耳が赤くなっている。これは嫌がっていないんじゃない?
私は賭けに出ることにした。わざとガウンを床に落とし、アダムの執務机の端に「よいしょ」とかけ声をかけてお尻をのせた。
こうすると距離が近くなるから、思う存分鑑賞できるよ。なんなら、お触りもOKだよ。
背筋をピンと伸ばし、お尻とお胸を強調してみせる。強調されるのは、レースのフリルでかさ増しされたお尻とお胸なんだけどね。
アダムの視線は、お尻でもお胸でもなく太腿に結ばれたリボンあたりをガン見していた。たまにむき出しの肩あたりにも視線がくるけど、主に足が気になるみたいだ。
フム……、アダムは足フェチとみた!
それを確認する為に、私はわざと足を組んでみた。アダムの視線は動く足を追っている。
間違いなし!お胸は苦手かもだけど、足は好きとみた。やった!私でも全然いけるじゃん。というか、アダムの趣向はまさに私がドンピシャじゃない?
ムチムチの足ではないけれど、真っ直ぐでバランスが良くて、唯一私が手放しで自慢できる場所でもある。
アダムが生唾を飲み込んだのか、喉仏が上下に動いた。
「ロッティ、その寝間着は可愛いけど、お腹が冷えそうだよ。肩も冷やすと風邪をひく」
お腹や肩の心配をしているわりには、視線は足から離れませんね。じゃあ、これはどうだ?
「だって、お風呂上がりであっついんだもん」
胸のところをクイッと開けて、パタパタと手で扇いでみせた。上から覗き込めば、ラッキースケベありだよ……という思いで、わずかに身体をアダムに向かって傾ける。しかし、胸を見ることなくアダムの視線がそらされてしまう。
うーん、胸は駄目かぁ。ならばまた足を見てもらいましょう。
「あ、ごめん。書類踏んじゃった。破けないように取って」
私は足を組み直して、半分お尻を上げるように身体を捩り、下敷きになった書類をどけてくれアピールをする。
足だけじゃなく、お尻を見ても良いのよアピールだ。
すると、アダムが勢いよく立ち上があったかと思うと、落ちていたガウンをつかみ、私の膝裏に腕を通して抱き上げると、足早にベッドに私を運んだ。
もしかして、これから待望の初夜ですか?!
私は期待に胸を踊らせ、アダムの顔を下から見上げた。普通は下から見ると間抜け顔に見えるものなのに、下から見てもいい男とか、どんだけ整った顔してるんでしょうね。
アダムは丁寧に私をベッドに下ろして座らせると、手早い動作で私にガウンを羽織らせた。しかも、きちんと腰紐まで結ばれてしまう。
着せるんかい?!
そのまま布団の中に押し込まれ、頭を優しく撫でられた。布団はポカポカしてくるし、頭を撫でられるのは気持ちいいしで、秒で寝ちゃいましたよ。これはもう条件反射だね。
「おやすみ……ロッティ」
泥のように沈んだ意識に、アダムのせつなそうな声を聞いたような……。
★★★
「それで、結局は気がついたら朝で、アダムは起きてもう仕事してたんだよー」
「それは……」
ロザリーに抱きついて昨日のことを愚痴ると、ロザリーはなんとも言えない顔で私の背中をさすってくれた。
「でもね、収穫がなかった訳じゃないの!あの程度の露出ではアダムは私には拒否反応はでないってことと、アダムは何気に足フェチってこと」
「……それは、あまり知りたくなかった情報ですね」
「それをふまえて、ロザリーにはもう少し足の露出の多い寝間着を探してきて欲しいの」
「あの、あれは寝間着ではなく子供用下着ですよね」
「寝間着として着てるから寝間着でいいんじゃないかな。このくらい短いやつでお願い」
足の付け根を手で示すと、ロザリーは小さくため息をついた。
「シャーロット様、私が護衛であることをお忘れですか?」
「知ってるよ」
「では、護衛対象の元を離れて買い物にいけるとお思いで?」
ロザリーはあの誘拐事件があってから、アダムのいない時間はどんなに遅くても私の側から離れなくなった。アダムがいれば早々に引き上げるんだけど、過保護なお母さんみたいに私を一人にしたくないようだ。アダムの休憩時間がロザリーの休める時間で、忙しいアダムに合わせてロザリーもなかなか休みが取れないのが現実だ。
働き方改革が必要だよね!
その時王太子妃室の扉がノックされ、ロザリーが返事をすると、扉が開いて一人の侍女が入ってきた。私の前までくると、背筋がピンと伸びた侍女は腰から真っ直ぐに腰を折りお辞儀をした。
「今日から王太子宮で働くことになりましたカリナです」
カリナ、カリナ……カリアンナ!イーサンの姪だ。
今はあの眼鏡を外しているからか深い緑色の瞳で、髪色も茶色から金髪に変わっていた。前は地味なイメージだったカリナが、髪と目の色が変わっただけで、ずいぶんと洗練された大人の女性に見える。立ち姿から違うのか、十六歳の少女には見えなかった。
「あなたが新しい侍女だったのね。今日は眼鏡はしてないんだ。髪の色も違うね」
「はい、これが本来の私です。よろしくお願いいたします」
「後宮では変装してた……んだよね?なんで?」
普通はあまり突っ込んで聞かないものなのか、興味津々答えを待っている私に呆れ顔のロザリーと、すました顔をしたカリナ。二人共顔面偏差値高いな。
「後宮には陛下のお渡りがありますから」
「お渡りがあったら駄目なの?」
「ほら、お手つきがあるかもしれないじゃないですか。それを目当てに後宮の侍女を目指す子女もいるくらいです。うまくいけば夫人になれますから」
簡潔に理由を話したカリナの言葉を、ロザリーが詳しく説明してくれた。それにしても、お渡りがあれば自分はダニエル王に目をつけられると確信しているところとか、潔いくらいの自信家だな。変装を解いたカリナは、確かにクール系美少女だけれど。
「なるほど!アダムパパリンとのめくるめく官能の世界を求めてってやつね」
「官能の世界がどんなものかわかりませんが、うまくいけば子供を授かることができますし、子供は王族の一員となります。夫人も王族の母親として、またその親族も優遇されるようになりますから」
「ええー、そんなのどうでもよくない?」
「シャーロット様くらいですよ、王の子供を生むのをそんなの扱いするの」
「……シャーロット様は、アダム様とのお子様には興味はないのでしょうか?」
カリナの言葉に初めて、行為=赤ん坊を授かるのだと気がついた。前世では避妊具とピル併用だったから、子供ができるなんて頭になかったもん。
フム……アダムとの赤ん坊か。それはもちろんいれば楽しいかも。でも、しばらくは二人でイチャイチャ官能の世界を楽しみたいしなぁ。
前にダニエル王に話した動物の腸だかなんだかを使うコン○ーム、あれを本気で試作してみようかな。
まだキスすらしていない(夫婦なのに!)し、なんならお互いの気持ちの確認すらしていないのに、私の思考はすでに避妊具作成のことで頭がいっぱいで、考え込む私をどんな目でカリナが見ているか、そんな私とカリナを心配そうにロザリーが見守っていたかなんて気づくことはなかった。
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