第23話 夫婦だもの!レッツ混浴!!
「ロッティ、話があるんだけど」
あれから一週間、ダニエル王はリズパインに帰っていき、スチュワートはニングスキーに赴任した。私はというと、私が壊したキスコンチェ宮殿の修復をしてます。朝から晩まで大工作業。毎日毎日ヘトヘトで、夕飯の途中で寝てしまうような日々の中、いまだにアダムと初夜なんか迎えられる訳もなく……。
「ちょっと待って。この床、もうちょいで貼り終わる」
マロンが踏み壊した床板も総取り替えなのよ。
「手伝うよ」
アダムは木の板を器用に打ち付けていく。本当に王太子かなというくらいアダムはなんでもできる。壁紙を貼らせたらプロ級だし、前世は左官職人なんじゃないのというくらい壁の補修は完璧だ。
「アダム様ってなんでもできるよね」
「器用貧乏なんだよ。(前世でいろんなバイトをしたせいもあるかな)」
「で、話って?」
アダムが手伝ってくれたおかげで、とりあえず謁見の間までの床は貼り替えられた。
「ちょっと出られる?」
人目が気になる話ってことかな。人目がないとこ……そうだ!あそこしかないよね。
「アダム様、ちょっと用意するから待って。すぐ、すぐだから」
私は急いで部屋に行き、必要な物を鞄に詰めた。アレとアレと……アレも必要よね。
大きな鞄を下げた私に、アダムは戸惑いの表情を浮かべながらも、すぐに鞄に手を伸ばして自分の肩にかけた。
「アダム様、人気がないとこならバッチリなとこがあります。裏行きましょ、裏」
「あぁ、うん」
私はアダム様の腕を引っ張って裏庭の洞までくると、隠された入口から中に入る。
「あぁ、ここなら確かに人は来ないか」
「でしょ、でしょ」
二人で手を繋ぎ、洞窟の中を壁をつたって歩く。なにせ薄暗い上に滑りやすいからね。しばらく歩くと、前に足湯をした泉についた。吹き抜けから青い空が見え、ちょうど太陽光が泉に降り注いでキラキラ反射している。
しかしだね、今日は足湯なんて甘っちょろいことしにきたんじゃないのよ!
レッツ混浴!!夫婦だから問題なし!
「さぁアダム様、脱いでください!」
「は?」
ドレスを足の方からたくし上げて、スッポンと勢いよく脱いだ。
「エェッ?!」
もちろん、ドレスの下はスッポンポンではない。残念ながら可愛らしい下着とかはこの世界には存在してなくて、上はチューブトップのような簡易コルセットに、下はドロワーズといって……膝上十センチくらいのチョイ長かぼちゃパンツみたいな感じ?
全部脱いじゃっても、私は全然かまわないんだけど、おばちゃん達も言ってたもんね。大股開きで誘うよりも、ちょっと隠したほうが旦那は燃えるってね。
「ほら、タオルと下着は持ってきたよ。アダム様も脱いで脱いで」
頭にタオルをグルグル巻いて、私は下着姿のまま先に泉の中に入って乳白色の温泉に肩まで浸かった。
「ハァ〜ッ……気持ちいいよ。ほら、下着だったら大丈夫っしょ。混浴くらい普通だって。夫婦なんだしさぁ」
アダムは右に左に行ったりきたりしていたが、やっと意を決したのか上着を勢いよく脱いだ。
ホーッ!
私からは裸の背中しか見えないが、逆三角形で背筋のついた男の背中だった。ウエストも引き締まり、腹斜筋もしっかりついてる。まだズボンは履いているものの、お尻も小さくてキュッと引き締まっているから、きっとかなりいいお尻をしているに違いない!
期待値マックスでガン見していると、アダムは大判のタオルを腰にしっかりと巻いてから中のズボンと下着をいっきに脱いだ。
女子かよ!チラッとも見えなかったじゃないか!
でもタオルならハラリと落ちてラッキースケベ的な……ってないじゃん。あの巻き方じゃ飛び跳ねても落ちないよ。
アダムが腰に巻いていたタオル、うちら(前世のAV業界)の間では定番の外折りの巻き方だったのだ。タオルを巻いて端を内側に折り込むのが一般人のやり方、タオルを巻いて外側に折り込むのがうちらの常識。女優はポロリも美味しいからわざと内折りにする場合もあるけど、男優は比較的外折りにしていたと思う。
たまたまかわざとか知らないけど、面白くないの。
アダムは私の横にやってくると、「アーッ」と言いながら肩まで浸かった。二人並んでお風呂とか、夫婦っぽいよね。
「そうだ、話ってなあに?」
アダムは私からは視線を外してわざと吹き抜けの空を眺めていたが、私がアダムの肩をツンツンと突っつくと、やっと私の方を向いてくれた。頬が赤いのは、湯あたりとかじゃないよね。まだ入ったばかりだもの。もしかして、私のこと意識してる?いい傾向じゃん!
話しにくい話なのか、アダムはしばらく視線を彷徨わせていたが、唐突に関係ないことを話しだした。
「温泉といえばさ、ゆで卵だよね」
「えー、そう?温泉卵って臭いから苦手。腐った卵の臭いしない?」
緊張を解したいのかなと思い、再度聞き返すことなく温泉卵の話題にのっておく。アダムのタイミングで話したいのかもしれないしね。
「僕は温泉卵って嫌いじゃないな。温泉地の定番じゃん」
「そう?温泉っていえば温泉饅……頭って、あれ?」
私はマジマジとアダムを見た。
この世界の温泉の名付け親は私。多分各地を回れば温泉もわいているだろうし、入る人達もいるのかもしれないけれど、私の国……というか私が知る限り、温泉に浸かる文化は周りにはないかも。山賊達みたいに、どちらかというと危険だから近づかないというのが普通。名物の温泉卵も温泉饅頭もある訳がない。
……ということは?
「ロッティは富士山は知ってる?」
私は恐る恐る頷いて、もしやもしやと聞いてみる。
「東京スカイツリーに登ったことがあったりなんかして?」
「いや……。東京タワーしかない」
「エーッッ!!」
私は勢いよく立ち上がり、アダムの肩を掴んで揺さぶった。
「チョッチョッチョッ……」
「ロッティ落ち着いて」
「ちょっと待ったァッ!これが落ち着いていられますかっての。えっ?なに?どういうこと?アダムは何人?日本人?というか地球人?」
敬称をつけるのを忘れてしまうくらい驚いた私よりも、さらに慌てふためいたのはアダムだった。というのも、アダムは勢いよく私の腕を引っ張り、そのままの勢いで泉の中に沈めたからだ。勢いつきすぎて頭まで。
「ブワッ!、ゲホゲホッゲホ!なに?正体バレはアウトなの?私を殺す気?!」
頭まで泉に沈められた私は、今度は両腕を掴まれて泉から救出された。やだ、鼻痛いじゃんか。鼻から温泉飲んじゃったよ。
「ごめん!違う、そうじゃない!立ち上がるとかヤバイから、本当にヤバイって」
「ヤバイ?」
ヤバイヤバイしつこいな。
なにがヤバイのかわからずにムッとした表情をすると、アダムは片手で目を押さえて思いっきり上を向いた。
「透けてる!無茶苦茶透けてるから」
私はアダムに背中を向けて(恥じらった訳じゃないよ。あまりにアダムがヤバイヤバイ言うから、一応確認してからって思っただけ)、泉から立って自分の姿を見下ろしてみた。
うん、いい感じに透けてるね。なにがヤバイのか、さっぱりわからない。十代男子ならさ、ラッキーって思って見ておけばよくない?
いや、今はそんなこと(?)気にしている場合じゃないし、別に私は気にしないし!
「そんなことより」
「そんなこと?!」
アダムはバチャバチャと泉から上がると、タオルを持って戻ってきて、私の身体にグルグルとタオルを巻き付けた。
「とにかく、これを外さないように!」
「う……ん」
同じ日本人だったかもしれないという衝撃の事実よりも、私の透けたアソコの方が衝撃的なのか?!えっ?そんなに!
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