第87話 最終話 永遠の幸せを誓います

 俺は空を見上げた。


 異世界の秋空も、現代と同じように、澄み渡る爽やかな青空が広がる。



「女心と秋の空か」



 いや、良い意味での女心だ! 移り変わる女心じゃないぞ!


 自動人形オートマターのアルファ、ガンマ、ベータ、デルタに見送られ、俺は一人で白のタキシードを着て家を出た。


 今日という生涯の記念日を俺は一生忘れないだろう。


 左手がうずく。見れば聖紋が光っていた。



「ありがとうございます、サセタ神様」



 そしてリオン、君のお陰だな。なんかリオンの幸せを俺が奪ってしまったのかな……。


 また左手がうずいた。


 アハ、そうですね、サセタ神様。今という時を作ったのは俺だ。俺が三人の婚約者女の子を愛し、そしてまた、彼女たちも俺を愛してくれた。


 それに、なんとなくだけど分かるんだ。リオンも現代で、俺のお宝たちで、楽しい現代ライフを満喫している事が。


 えっ!?


 サセタ神様からのビックリなお告げがあった。リオンに彼女が出来たらしい! マジか! めちゃめちゃ嬉しいんだけど!


 よっしゃああああ! 気合い入れてけトーマッ!!





 家の周囲、つまりは王家の敷地内には今のところ、俺たちの家と、グレートファング帝国の皇帝別荘、迎賓館に、ダイヤモンド鉱床の作業小屋、ノーラちゃんが遊ぶ公園にエリクサイトの温泉、そして大聖堂ぐらいしかない。


 敷地を囲む土壁の向こうは、第一都市として行政の建物や貴族たちの建物に、貴族向けの商店街などになっている。


 更にその壁の向こうは第二都市区。市民たちの街だ。


 旧アザトーイ王国から一時避難をした人達も三分の二は、今のツキノガワ王国へと帰り、残りの三分の一にあたる三千人ちかくの人達は、このアマノガワ王国に残ってくれた。


 また、帝国からの移住希望者もいて、こちらはエルフリーデ皇帝陛下が人選をしてくれた。


 第一都市に住む貴族は、貴族家の次男や三男が多い。更には学院のクラスメイトなんかもいたりして、ルミアーナ、クスノハ、シルフィとは仲良くして貰っている。


 かく言う俺も友達が出来た。教室で初めてトーマに声をかけてきた彼らも、今では友達付き合いをしている。


 まあ、どちらかと言えば女の子の友達が増えたかな。近々、俺たちの結婚祝いを兼ねたクラス会をやる予定になっているらしい。


 そんな事を考えながら歩き、ブレードガーディアンズが警護する大聖堂に着いた。


 大聖堂の大きな扉を開ける。


 高い天井と大きな窓ガラスの色鮮やかなステンドガラスから七色の採光が、長い身廊を照らしている。


 静かな大聖堂の中。


 側廊にはレオノーラさん、ミレーヌさん、イレーヌさんが立ち、俺を見て頭を下げた。


 結婚式にはレオノーラさんたち以外は呼んでいない。エルフリーデ皇帝陛下含め、他の方々はこの後の披露宴で挨拶をする事になっている。




 正面の祭壇には美しいサセタ神像。その手には超巨大なダイヤモンドがあり、いつにも増して眩い輝きを放っている。


 そしてその聖なる輝きに照らされているのは、純白のウェディングドレスを着た、俺の花嫁たちだ。




 長い身廊を静かに歩く。


 アハハ、無理だわ。


 我慢できない!


 俺は身廊を走った。


 花嫁たちも我慢出来なくて、ドレスをつまみ上げて、俺の方へとゆっくりだが、走ってくる。



 そして、俺は三人を抱きしめた。



「結婚しよう!」


「「「はい!」」」



 俺はサセタ神様に誓う。



「愛してる!」


「「「はい!」」」

 


 俺は三人が大好きだ。



「愛し続ける!」


「「「はい!」」」



 あたり前だろ!



「絶対に離さない!」


「「「はい!」」」



 これから三人で暮らすんだ。



「アハハハハハハ」


「オホホホホホホ」


「エヘへへへへへ」


「フフフフフフ」


「よし、サセタ神様にきちんと報告と宣誓をしないとな」


「「「はい」」」





「サセタ神様、俺とルミアーナ、俺とクスノハ、俺とシルフィを導いて頂きありがとうございました」



 祭壇のサセタ神像の前に俺が立ち、三人の花嫁は俺の後ろに立っている。



「俺たちは今日、今、この時に、楽しみも、悲しみも、喜びも、苦難も、俺とルミアーナ、クスノハ、シルフィと共にし、お互いが支えあい、助けてあい、人の世の命が尽きるまで、いや、尽きたとしても、永遠の愛を誓います」



 俺は振り向き、ルミアーナの前に立った。



「ルミアーナ、俺をこれからも支えてくれ」


「はい、トーマ様。わたくしはトーマ様だけを永遠とわに愛し続けますわ」



 ルミアーナが瞳を閉じると、涙が溢れ頬を伝い落ちる。


 俺はルミアーナの唇にキスをして永遠の愛を誓う。




「クスノハ、大好きだよ。一番最初に俺を信用してくれたのはお前だからな」


「エヘへへ」



 あれ? 左右の二人がピクって動いたような気がしたのは気のせいかな?



「オレもトーマが大好きだ。宜しく頼むぜ!」



 俺は身をかがめ、背の低いクスノハと視線を合わせ、クスノハの小さな唇にキスをした。




「シルフィ、俺の大好きな義妹いもうと。シルフィが俺を受け入れてくれて凄く嬉しかった。リオンもそう思ってくれると思う。あっ、そうそう、サセタ神様からのお告げで、リオンも向こうの世界で彼女が出来たらしいぜ」


「えっ、リオンお兄様が……。そっか、リオンお兄様も向こうで幸せに暮らしているんだね」



 まあ、一つ心配なのは俺のお宝が彼女様にバレた時だな。リオン、健闘を祈るッ!



「ああ、だから俺たちも幸せになろう。愛してる、シルフィ」


「私もお兄様を愛してる……」



 涙を溜めた瞳で微笑むシルフィ。そんなシルフィの唇にそっとキスをした。




 誓いのキスをした俺たち。




「もう夫婦でいいんだよな」


「オホホ、あ・な・た」



 キタぁぁぁッ! 人生初のあ・な・た!



「そうだぜ。でもオレはこれからもトーマって呼ぶぜ。い、いいだろ?」


「ああ、そうしてくれると助かる。俺もクスノハって呼ぶしな」



 俺とクスノハは、ガチコンと拳を合わせた。



「わ、私は……」


「シルフィが嫌じゃなければ、『お兄様』って呼んでほしいな」


「い、いいの?」


「勿論よ!」



 俺はサムズアップしてみせた。夫なのにお兄様! 嫁なのに義妹いもうと! 完璧すぎるだろがッ!





 俺たちは再び祭壇のサセタ神様の前に立った。



「サセタ神様、この聖紋に誓って」


「サセタ神様、この聖紋に誓いまして」


「サセタ神様、この剣紋に誓うぜ」


「サセタ神様、この賢紋に誓い」 





「「「「幸せになりますッ!」」」」




〜〜〜〜〜〜終わり〜〜〜〜〜〜


  【よし、国を買おう】


 


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