第77話 新たなお告げ?

 俺がアザトーイ王国を買い上げてから十日とおかあまりが経つ。


 国名をツキノガワ王国とし、国王には俺がなるが、今までの君主制ではなく、立憲君主制による政治形態へと変えていく。


 要はこの世界の政治、更に言えば現代でも政治の事にうとい俺が手をわずらわせずに、貴族の上院、市民の下院で色々と決めて、滞りなく政治、政策を進めてほしいって事だ。


 とは言え、アマノガワ王国は俺、ルミアーナ、クスノハ、シルフィで作った国だから、ここは王政にして、色々とこの世界で試していきたい。



「結婚式は建国祭に合わせて行うんだろう? まだ日もあるし、そんなに慌てて衣装とか決めなくてもいいんじゃないか?」



 アマノガワ王国の俺たちの小さな家。その家のリビングのローテーブルの上には、旧アザトーイ王国から持ち込んだドレスが山のように積まれている。



「お兄様、あと二週間しかないのよ! 衣装を決めたら髪型やアクセサリーとか、衣装に合うように色々と決めないといけないの!」


「トーマ様は何色のドレスがお好みですか?」


「ヤッパ、派手なのがいいよな! 赤か、青か、いや、ここは七色でド派手にすっかな」



 女の子たちは結婚式に着る予定のドレスを、その山の中から、あれやこれやと選んでいた。


「ん〜、俺には分らんよ。俺のいた世界じゃ、ウェディングドレスは白一択だからな」


「「「白ッ!?」」」


 

 白一択は言い過ぎだけど、ウェディングドレスは白のイメージしかない。


 しかし、この世界では白のウェディングドレスはあまりポピュラーではないらしい。目の前のドレスの山にも白のドレスは数枚が混ざっている程度だ。



「白ってこんなんだろ?」



 クスノハがその白いドレスを山から抜き出す。現代のヒラヒラとしたドレスではなく、実にシンプルなデザインだ。



「飾りっけも無くて地味だよな。白のドレスってさ――――」



 その時、リビングのドアが開き自動人形オートマターのガンマに連れられて、レオノーラさんが入ってきた。



「国王様、第2都市区に建設した小学校の件で――――」


「白のドレスってさ、イキ遅れの女の人が、目立たないように着るヤツじゃんか。イキ遅れのレオノーラ様ならともかく――」


「クスノハッ!」

「クスノハさん!」

「クスノハ様ッ!」


「あん?」



 いや、もう無理か。俺は知らん! 知らんからな!



「クスノハさん、イキ遅れの私に似合いそうな・・・・・・・・・・・・・素敵なドレスをお持ちですね」


「えっ、あれ? レ、レオノーラさ……ん?」



 背中に般若を従えたレオノーラさん。



「「アハ、アハハハハハハ」」



 死んでこいクスノハ。 屍は拾ってやる。





 オヨヨ、オヨヨと泣くレオノーラさん。



「私だって好きでイキ遅れたんじゃないんですよ! サセタ神様から紹介頂いたクソ野郎が、クソ過ぎて、それはもうクソ過ぎて、授かるギフトも剣豪だから、私も最初は我慢したんですよ! でもクソ野郎がヒモ暮らししたいからって、私に働け働けとかいうわ、男尊女卑もはなはだしく、いや、そんなにヒモになりたいのならと、大好きな紐で縛って簀巻すまきにして、クソ野郎の実家に贈り物ギフトで届けてやったら、それが貴族界隈で噂になって――――」



 レオノーラさん酔ってます? 何やらオヨヨ、オヨヨと語り始めた彼女の悲恋話。ルミアーナたちは食い入り気味に話を聞いている。


 どうやらレオノーラさんは、サセタ神様からのクエストを放棄したせいで、ギフトは貰えず、貴族界隈でも噂の鬼娘となってしまったらしい。そして今に至るって訳だ。


 レオノーラさんがイキ遅れと言っても二十二歳。この世界は結婚が早いからそうなのかもしれないが、現代なら女子大学生とかだ。俺の精神年齢は現代の十九歳だから、全然圏内・・・・である。


 あれ?



「ト、トーマ様……、トーマ様の聖紋が……」



 俺の左手の聖紋が淡い光を放っている。


「う、うん、いまサセタ神様から新たなお告げが降った……」


「「え〜〜〜〜〜〜!?」」


 

 流石は婚活の神様、サセタ・イ・ケッコーン様だ。まさか、こんなタイミングで婚活するお告げが降るとは。


「お、おかしいだろッ!」


「そ、そうよ、お兄様には私たち三人がもういるのよ!」


「オホホホホホホホホ。流石はサセタ神様ですわ」



 聖神のギフトを持つルミアーナは気が付いたようだ。いや、誰でも気が付くか。クスノハもシルフィも、レオノーラさんがヨダレを垂らして、ニヤニヤとだらしない顔をしているのを見て、目が点になっていた。



「えへ♡、いヒ♡、デヘヘ♡♡♡」



 新たなお告げを授かったレオノーラさんは…………。まっ、いっか。


 三人の婚約者フィアンセと目が合うと、クスクスと笑いあい、皆んなして新たな婚約者フィアンセを笑顔で「おめでとう」と迎えいれた。

 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る