第61話 【国王様゛のお話】―5

「ブハアッ!」


 今日の冷えたアッヘーン入りウォーターは格別に美味い。馬車から降りては、給仕が入れたコップ一杯の水を一息に飲み干した。


「グフフフ、我が黄金城のなんたる綺羅びやかな輝きだ」


 俺様は建設中の黄金城の視察にやってきた。全てが純金で出来ているこの城は、まさに俺様の威光、俺様が俺様である俺様のシンボルだ。


「どけぇッ!」


 俺様の歩く先を、ふらふらと歩く痩せ干せた奴隷の男が横切りやがった。蹴り一発で転げ回るクソ奴隷。


「そいつは不敬罪だ。殺しとけ」


 ここで働いている奴らは、黄金を盗まれない為に、窃盗をしたら狂い死ぬ契約ギアスをしている奴隷どもだ。


 この奴隷はサディスティアのデブ大臣が連れてきた。まあ、タダで働かせる分には何処の奴隷でも大差はない。


「奴隷か。ルミアーナの奴も奴隷にしておけば良かったな。顔と胸だけは極上品だったからな」


 そうだ、そうだな、そうでなくてはならないな!


「おい、お前」

「わ、私でございますか」


 このクソお茶汲みが! 貴様以外に誰がいるってんだよ! アホか!


「そうだよ! てめえだよ、カス! さっさとルミアーナを俺様の前に連れてこいッ! 殺すぞ!」

「ヒッィ〜」


 たく、使えん奴だ。しかし、ルミアーナか、ヒヒヒ、楽しみが増えたぜ。



「国王代理陛下!」


 黄金城を見て気分よく城に帰ってきた俺様に口煩くちうるさいヤツがやって来た。内務副大臣のザーゴだ。


「何だよ、相変わらずうっせえなぁ。てかさぁ、国王って呼べよ」

国王陛下・・・・がご崩御あそばされました」


「あん? 国王陛下……ってオヤジかッ! やっと死んだか! こりゃパーティーだな、おい!」

「な、何を仰っているのですか!」


「貴様はバカか? 長寿を全うしたんだ。めでたいんだよ! 王宮はこれから一ヶ月は供養の為のパーティーやんぞ!」

「国王代理陛下、そんなお金はございませんぞ!」

国王・・だ。金が無いなら国民から集めろ。一人金貨一枚の香典だ。良いアイディアだろ。やっぱ俺様は天才だな」


「む、無茶です、国王・・陛下。多くの国民は税金が上がった事や、低賃金層の増加で貧困にあえいでいます。金貨一枚など払える筈がありません」


「国民の忠義ってもんがあんだろが! 払えなきゃ百叩き……いや、それじゃ金にはならんか。ふむ、奴隷の契約ギアスがよいな。奴隷となれば勤勉に働くし、給与も不要。各企業が潤うこと間違いないな。税金がいっぱい入ってくるぜ。それに若い女であれば裸で働かせれば、男どもも必死に働くだろうよ。まあ、程度の良い女は城に連れてこい。俺様の元で働かせてやる。クヒヒヒヒヒ、ギャハハハハハハ」


「…………」


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