第60話 バルンバルンと般若様

「トーマ国王、お店の方はだいぶ好評のようだな」


 帝国にアマノガワブティックを二店舗出して、一週間になる。一店舗は貴族専用の敷居の高いお店。もう一店舗は誰でも入店できる敷居の低いお店だ。


「皇帝陛下が良い場所にお店を用意してくださったお陰です」

あまの水は皇宮でも凄い評判だぞ。ばあやも十歳は若く見えるようになったと喜んでおった」


 グレートファング帝国のエルフリーデ皇帝は、二週間の逗留の後も、皇宮の一室に作ったゲートを通じて、毎日足を運んでくれている。


 今も、リビングで一人、この一週間をかけて行った作業に区切りが付き、休憩に戻ってきた俺の元へ、皇帝陛下が現れた。


「まさか一週間程度で十歳は若返りませんよ」

「いやいや、ばあやも顔のシワやシミが無くなり八十歳を越えた老婆の顔には見えなくなったとはしゃいでおったし、妾の胸も張りが戻ってきて、まるで二十歳の時のような触り心地じゃ」


 陛下がふくよかな胸をモミモミと揉みしだく。胸元が広いドレスからは、もう既にはみ出しそうになっている。


 ゴクリ、と思わず生唾を飲んだ時に、皇帝陛下と目があってしまった。


「ふむ、なるほどな」


 妖艶な笑みを浮かべる皇帝陛下。


「トーマ国王には、色々と借りがあるからな、揉んでもよいぞ」

「はい?」


「サセタ神様にお預けをさせられているのだろ。あれは、女性は清らかであれ、との教えだ。男子ならばサセタ神様も多少は目を瞑ってくれる。何なら吸うか? ホレ、遠慮はいら―――」


 その時、リビングの扉が開いた。


「なぁにぃを〜、されてぇ、いるのですかぁぁぁん」

「ル、ル、ルミアーナ様!?」


 入り口に立っているルミアーナ。いつにもない微笑みを浮かべるその背後には、この世界にはいる筈がない般若様が見える。 こ、怖えぇぇぇ。


「何をトーマ様に吸わせるのですか? オホホホホ」

「ア、アハ、アハハハ。いやね、若者のストレスを少しでも減らしてやろうとだな」


 ルミアーナの背後に浮かび上がる般若様の目がカッと見開いたように見えた。


「トーマ様?」


 俺かッ!?


「トーマ様は、何かストレスをお持ちなのでございましょうか? ん?」


 ストレスは有る。毎晩、美少女三人とナニするでもなく、同じベッドで寝ているんだからな。


 たまに、偶然で、本当に偶然でルミアーナのふくよかな胸や、クスノハのちっパイや、シルフィの可愛い胸に当たったりすることも有る。


 でもそこで、アンアンを始めてしまえば、クエスト失敗もありうる。


 でも第三者の胸ならありな気がしてきた!


「ナイヨ。ストレスナンカナニモナイヨ」


 魂の叫びとは裏腹にルミアーナの言葉を肯定する。


「オホホ。結婚した暁には、吸うなりに舐めるなり、トーマ様の好きになさって構わないですわ」


 ああ、そうだな。


 俺はエルフリーデ皇帝のバルンバルンを横目に、うんうんと頷く事しか出来なかった。


「ルミアーナ、準備は整ったぞ」

「ええ、わたくしもの上から見回して参りましたわ。さすがはトーマ様ですわ」


「シルフィとクスノハ、ミレーヌさんが戻ってきたら、いよいよ決行だな」

「セバスチャンの喜ぶ顔が目に浮かびますわ。オホホホホ」

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