第38話 新王国建国

「トーマ様の仰る通り、化粧品は良いアイディアですわ」  


 温泉から出た女の子達と家に戻り、俺はカウンターキッチンに立ちながら、エリクサーの売却についての考えを皆んなに話した。


 ソファーに座るルミアーナ様は、俺の化粧品戦略に同意してくれる。


「女の子は美容の為にはお金を使うからね」

「でもよぉ、何処で売るんだ? 王都に戻るのか?」


「オホホ。貧乏なアザトーイ王国では商売は出来ませんわね」

「んじゃ、何処に売るんだ?」

「オホホ。お金を持っていて、人口も多い国、グレートファング帝国ですわ」


 なるほどな。確かにあの国なら裕福な貴族も多い。市場規模は大陸の中でも指折りだろう。


「ルミアーナ様は帝国に伝手はあんのか?」

「オホホ。全くありませんわ」

「じゃあ、どうすんだよ」

「オホホ。この機会にアマノガワ王国を、併せて帝国に売り込みかけますわ」


「「「アマノガワ王国ぅぅぅ?」」」


 アマノガワ王国とは俺も初耳だぞ。それじゃまるで俺が王様みたいな国じゃないか。


「何だよ、アマノガワ王国って」

「オホホ。我らがトーマ様を盟主とする王国ですわ。今のところ王国民は三人しかおりませんが」


「アハハ、いいなそれ。アマノガワ王国! その話し乗ったぜ」

「お兄様が……国王……。分かりました。私もルミアーナ様のお考えに従います」

「オホホ。トーマ様、いえアマノガワ国王陛下、宜しくお願いいたしますわ」


 俺がキッチンから手が離せないうちにアマノガワ王国は建国されていた。その初代国王は三人の国民の為に夕ごはんを作っているんですが、そんなんでいいのか?



 それから数日、俺は作業用の自動人形オートマターを十体作って、地下二千メートルにあるダイヤモンド鉱床を掘り、ダイヤモンドの宝石を作成していた。


 ダイヤモンド鉱床の掘削はツルベ式のエレベーターで自動人形オートマターたちが地下二千メートルでキンバーライト鉱石を掘り、地下から地上に掘り出している。


 それをベータたちが仕分けして、ダイヤモンド原石を選別。そして俺が屑ダイヤモンドも含め、錬聖スキルを使ってダイヤモンドのグレードを底上げして、細かいカットを施し、アクセサリーに仕上げていく。


 イヤリングや小振りのネックレスなど、金貨一枚程度でも買える小物アクセサリーも作る。貴族ばかりが飾り立てるのは釈然としないってのが理由だ。市民の恋人たちに使って貰えたら嬉しいな。


「さて、戻って昼ごはんにするか」



「オカエリナサイませ」


 玄関に入るといつもの通り、暇を持て余しているアルファが迎えてくれる。


「誰も帰ってきてないか」


 ルミアーナ様は大聖堂。クスノハ様は土壁の外に出かけ、シルフィは特殊属性魔法の練習をしている筈だ。


 まだ昼までには時間があるから、森の哨戒に出していたドローンの映像を確認してみる。


 ソーラー発電とイオノクラフトを合わせたドローンに、テスト的に監視カメラを搭載させて飛ばしていた。


 テレビに繋げて再生をする。


「おお、綺麗に撮れてるな」


 上空からの森の映像が画面に映る。綺麗には撮れているが、深い森だけに真上から樹木を撮影している映像が続くので三分であきた。


 早送り再生にしてザッと流し見する。


「ん?」


 早送りを止めて巻き戻す。そこはシルフィが風の魔法で木々を薙ぎ倒した場所。魔物が何十匹とむらがり、何かを襲っている。画面からは分からないが、多分クルッテールの叫びで呼び出された魔物達だ。つまり、襲われているのは人間だ。


 時間を見れば、今から一時間前。まだ戦闘をしている可能性がある。


「トーマァ〜、腹減ったぁ〜」


 ナイスなタイミングでクスノハ様が帰ってきてくれた。


「クスノハ様、早くこっちに来てくれ!」

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る