第37話 温泉の効能

「オホホ。スベスベですわ」

「すっげー、髪もサラサラになるぞ!」

「はぁ〜、若返り効果もあるんですよね~」


 微だけどな、と壁越しにツッコミをいれる。


 エリクサイトの湯の源泉を少し高い場所に作り直し、そこから流れ落ちる岩風呂を作った。


 岩風呂の周囲は日本庭園風にして、その周囲を木の壁で囲っておいた。


 俺はいま、木の囲いの外にいて、岩風呂とは別ルートで流れるエリクサイトのお湯を回収している。


 源泉の湯量は毎分約一リットル。岩風呂の方はお湯を張った後は、チョロチョロ程度にして、それ以外はこちらに流れ落ちてくる。


 こちら側の樋の口に、錬聖で作ったガラス容器にエリクサイトのお湯を貯める。ガラス容器は約十リットル入るので、一時間で六瓶、ニ十四時間で百四十四瓶を作れる。問題はこれを何に使うかだ。


 普通に考えれば回復ポーションだが、その場合は世界に大きな衝撃を与えてしまう。医療に使うならよいが、戦争やブラック企業に使われたらめちゃめちゃ嫌だ。


 木の壁の向こうでは女の子たちがキャッキャワイワイとはしゃいでいる。やはり平和的な需要はそこにありそうだ。


 十リットル瓶に詰める作業は、自動人形ベータたちに任せて、俺は化粧水用のガラス瓶を幾つか作ってみた。


 一リットル瓶、五百ミリリットル瓶、三百ミリリットル瓶、百ミリリットル瓶、五十ミリリットル瓶にエリクサイトのお湯を詰める。


 借りに五十ミリリットル瓶を銀貨五枚に価格設定した場合、百ミリリットル瓶を金貨一枚としたら、一リットル瓶は金貨十枚になる。


 温泉は毎分一リットルで、一日に千四百四十リットル湧き出るのだから、一日の稼ぎは金貨千四百四十枚。


 通貨の価値観は銀貨一枚が千円、金貨一枚が一万円だから、一日に千四百四十万円の稼ぎで、月にすると四億三千万円、年商五十億円にもなる。


「まあ、需要と供給のバランスからしたら、これの十分の一ってところか」


 とはいえエリクサーを垂れ流しで捨てる訳にはいかないので、ベータ達には瓶詰めを続けてもらい、俺は十リットル瓶を大量に作りまくった。



「良いお湯でございましたわ。オホホ」

「すっかり夕方になっちまったな」

「たまにはゆっくりする一日もいいですね」


 このたちは、昼ごはんも食べずに、朝から夕方までずっとエリクサイトのお湯に入っていた。


「少し若返った気がしますわ」

「どう、お兄様! 若返った?」

「いや、あの効果は微だからな」


「トーマ、オレの胸は少し大きくなったよな!」

「いや、そんな効能は無かった筈だが。でも皆んな凄く肌や髪が輝いて見えるよ」


 お風呂あがりの艶やかさも加わり、三人の美少女婚約者はとても美しかった。


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