第34話 義妹との誓い
「……お兄様」
「シルフィか……」
「う、うん」
「こっちに来いよ。凄え物が有るから」
長い身廊を歩きながら、祭壇に祀られているサセタ神様の手に持つ超巨大ダイヤモンドに気がついたシルフィは、あんぐりと口を開けながら、俺の傍らに辿り着いた。
「お、お兄様……。あれは本物のダイヤモンドなの……」
「凄えだろ。お値段はなんと白金貨七五三万枚だ」
「……な、な、七ひゃ……」
「あんまりにも高価過ぎたからサセタ神様にあげちゃったよ」
サラッと言いのけた俺をマジマジと見たシルフィは笑いだした。
「アハハハハハ、お兄様、あれ一つで国が買えますよ。それを、あげちゃったって。お、可笑しい〜」
なおもアハハと笑い続けるシルフィ。泣いていたシルフィが笑っている。それだけで俺は嬉しくなった。
「そんなに可笑しいか?」
「うん、可笑しいよ。バカなのお兄様は。あれがあれば何でも買えて、何でも手に入ったんだよ」
「ん〜、そうかな? シルフィも、ルミアーナ様も、クスノハ様も、あれで手に入ると俺は思わないんだけどな」
「え、あ、う、うん、買えない。買えないよね。絶対に買えない!」
俺はシルフィの頭に手を乗せて「もう大丈夫か?」と優しく撫でた。
「う、うん。ルミアーナ様とクスノハ様と、少しお話ししたから……」
「そっか。なら良かった。はい、これ」
俺はシルフィとクスノハ様用に作っておいたダイヤモンドの指輪の一つを、異空間収納から取り出して、シルフィに差し出した。
「あ、うぅぅぅ、違う!」
一瞬だけ喜ぶ顔を見せたシルフィだが、次の瞬間にはプク〜と頬を膨らませて怒っていた。あれ? 違うの?
「……その前に何かないの?」
「何か? 何を?」
「……ルミアーナ様には言ったよね?」
はて? 何か言ったか?
「……今夜は野菜のスープにしますね、とか?」
「……夕食の話ししてないよ! 指輪ッ!」
指輪? あの時か……。
「宜しくお願いします、だったかな?」
「はあ〜? それだけ?」
「それだけだよ? 何か?」
「……ルミアーナ様もお可哀想に」
「喜んでたぞ?」
「それは喜ぶわよ。でも違うの。あるでしょ、指輪を渡す時の言葉が。私はそれをお兄様から聞きたいの!」
あ―、あのセリフか。
「お嬢さんを僕に下さい!」
「それ、お父様に言う言葉ッ!」
「アハハ、悪い、冗談だよ」
ゴホンっと一つ咳払いして、真剣にシルフィの瞳を見つめた。
「シルフィ、俺と結婚してくれないか」
「…………はい。私もお兄様と結ばれたい……です……」
「シルフィ……手を」
シルフィは無言で頷き、そっと左手を上げ、その左手の薬指に指輪をそっと通した。
「お兄様……」
シルフィが瞳を閉じると雫が頬を伝い落ちる。
「シルフィ……」
そして俺はシルフィの唇に唇を重ねた。
静かな大聖堂の中で、俺は義妹のシルフィと将来の結婚を誓いあった。
◆
「キッラキラ、キッラキラ」
夕食前にクスノハ様にダイヤモンドの結婚指輪をプレゼントしたら、LED照明に翳して大はしゃぎしている。
「オホホ。これでわたくし達はトーマ様に心を捧げた事になりましたわね。後は――」
「そうだよなぁ、後は――」
「後は――――ですよね」
はて? 後は何?
◆
「お兄様……」
夜、俺の寝室の扉を開けてシルフィが入ってきた。
「お、お兄様……今日はありがとう。そ、その……今夜はお兄様と……、一緒に…って、ルミアーナ様に、クスノハ様!?」
ベッドの上、俺の右にルミアーナ様、左にクスノハ様がいる。
「………出遅れた」
結局シルフィもベッドに入って来ようとしたので、錬聖でベッドをキングサイズに変更して四人で寝る事になった。
婚約初夜とはいえ、サセタ神様の教えでは結婚するまではお預けであるから、健全に四人で寝るだけしか出来ない。
豊満で柔らかいルミアーナ様の双丘が俺の右腕を挟んでいる。
く、くそう!
後は、後は、後は寝るだけだッ!!
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