第28話 ダイヤモンドは永遠の輝き

「ダイヤモンド鉱石……。マジか?」


 鑑定した結果はダイヤモンド鉱石だが、この世界のダイヤモンドってこんなにデカいのか? いや、このダイヤモンド鉱石の価値は……白金貨約一万枚ッ!? 日本円にして百億円ッ!?


「アワワワ」


 震える手からダイヤモンド鉱石が落ちた。それを慌ててキャッチする。


「あっぶねぇ、落としちまう所だった。……ぷっ、アハハハハハ、ダイヤなんだから落としからって割れないないよな」


 いや、しかしびっくりだ。まさか温泉掘ってて、ダイヤモンド鉱石を掘り当てるとは思ってもいなかった。


 いま掘っている穴の深さは、だいたい二千メートルぐらいだ。その辺にダイヤモンド鉱床が有るってことかな?


「ん?」


 自動人形オートマターのベータとデルタも小さな石を幾つか持って来て、俺に差し出した。鑑定して見ると、これもダイヤモンド鉱石だった。価値としては白金貨十二枚。約千二百万円相当になる。


 ヤバいぞ、この地下!!


 俺はベータ達に掘り出した土砂の中の、小さなダイヤモンド鉱石も見逃さないよう仕分けるように指示をして、更に掘削作業を続けた。


「あれ? 気のせいか?」


 土砂に混ざる石の中に、緑色の鉱石が混ざっていた様な気がしたが、そんな石はどこにも見当たらない。


「いや、やっぱり気の所為じゃない」


 掘削を続けると緑色が混ざった鉱石が出てくる。しかし、その緑色はあっという間に消えていってしまった。


「何なんだ、この石は?」


 更に掘削を続けていくが、ここに来てペースが上がっていく。何故かは分からないが、体調がすこぶる良い。


 掘削する程に緑色の混ざった鉱石が出てきて、その緑色が消える前にようやく鑑定が出来た。


「エリクサイト?」


 パラサイトなら知っているけど、あれは石じゃない。エリクサイトってのは初めて聞く名前だ。


 そして追加の鑑定をする前に緑色が消えて、ただの石になってしまった。俺はその石ころを、山となっている土砂にポイっと投げ入れる。


 見ればベータ達が仕分けしているダイヤモンド鉱石が小さな山を作っていた。


「おお、凄え凄え!」


 掘削を止めてダイヤモンド鉱石を見にいく。いわゆるキンバーライト鉱石の中にキラキラと光るダイヤモンド原石。ルミアーナ様が見たら飛んで喜びそうだ。


「一つ持って行ってやるか」


 少し大きな鉱石を手にとる。


「錬聖! ダイヤモンド」


 キンバーライト鉱石が消失して、手の中には三センチぐらいの大きさのダイヤモンドが残った。


 造形系スキルの最高峰である錬聖スキルで錬成したダイヤモンドには不純物が一切なく、芸術的なビーナスアローカットにより、ダイヤモンドは陽の光を取り込み眩しく輝きを放っている。


 鑑定してみたら白金貨三千枚、約三十億円相当だった!? はて? 原石の価値に比べるとかなり価値が上がっている。まあ、高いならそれに越した事はないか。


 出来上がったダイヤモンドを持って大聖堂へと足を運ぶ。


 ステンドガラスからの幻想的な光が差し込む聖堂の中、神とも見紛う神聖なオーラを纏いサセタ神像に祈りを捧げているルミアーナ様がいた。


 …………なるほどな。このダイヤモンドも神の思し召しなのかもしれない。


「ルミアーナ様」


 俺の言葉に、祈りの言葉を止めて振り返るルミアーナ様。


「……トーマ様?」


 俺は長い身廊を歩き、祭壇前のルミアーナ様の元へと行く。


「すみません、お祈りの邪魔をして」

「いえ、如何いかがされましたか」

「はい、これを」

 

 俺は百六面が鏡のように磨かれたビーナスアローカットのダイヤモンドをルミアーナ様に手渡した。


「こ、これは……ダイヤモンドッ!?」

「はい、掘削していたら出てきました」

「……こ、この輝きは?」

「ビーナスアローカットと言って、多面によって光を反射するダイヤモンドカットです」


 この世界のカットは半面をカットするローズカットが主流で、より多くの多面を持つブリリアントカットやビーナスアローカットは存在していない。


「……これを、わたくしに?」

「え、あ、は、はい!」

「……リングを付けて頂けますか?」


 ルミアーナ様の希望に従い、錬聖スキルで立て爪の付いたシルバーリングを作り、ダイヤモンドを嵌め込んだ。


「……トーマ様が付けて下さいますか」


 指輪をルミアーナ様から受け取ると、俺はルミアーナ様の左手薬指に指輪を通した。……左手薬指? あれ?


「オホホ、これで正式・・に婚約が成立いたしまたわね。サセタ神様も微笑んでいらっしゃいますわ」


 アハハ、大聖堂の祭壇。見上げればサセタ神様の神像が微笑んでいる。


「よ、宜しくお願いします」


 サセタ神様の神前だ。嘘も偽りもなく、俺はルミアーナ様に婚約を誓う。


 ルミアーナ様の潤んだ瞳が閉じられた。俺は深く息を吸い込むと、現代でも、異世界でも初めてのキスをルミアーナ様にした。


 柔らかいルミアーナ様の唇に俺の唇が重なる。


 そして細いルミアーナ様の体を優しく包むように俺はルミアーナ様を抱きしめた。


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