第27話 大聖堂と穴掘り作業

「んでさぁ、トーマ」

「な、なんですか?」


 隣に裸のクスノハ様がいる。俺やシルフィ、ルミアーナ様と同じ歳のクスノハ様だが、背が低く幼く見える。


 何気に背徳感を感じるのは気の所為に違いない。


「トーマのスキルって『スキルメイク』じゃんか。そしたら剣聖や大賢者も取れんだろ? 取らないのか?」

「う〜ん、取らないかな。今は必要ないし、そっちはクスノハ様とシルフィに任せますよ」

「欲がないな、トーマは」


 欲か。俺も『スキルメイク』を貰った時に異世界無双は夢を見た。でも頑張っているシルフィやクスノハ様を見て、チートは無しだなって思った。


 現代にいた時にやっていたソシャゲ。課金プレーヤーに勝てないのは仕方ない。しかし無課金チートプレーヤーにはガチムカついていた。


 そんな俺が、チートしてシルフィやクスノハ様を追い抜くスキルを手にするのは間違っている。命が掛かっている訳でもなく、冷やかしでやっていい事ではない。


「今は街造りが楽しいですからね」

「ふ〜ん。それとさ、その敬語、止めてくれよな。オレとトーマは……そ、その……こ、こ、婚約者……なんだし……」


 ブクブクと湯船に顔を沈めていくクスノハ様。そんなクスノハ様を見ると湯船の中に可愛いサクランボが見えてしまった。


 俺は慌てて顔を背け、白いタイルを凝視した。


「そ、そうですね。い、いや、そうだな。これからはタメ口でいいのか?」

「オウ!」

「って!?」


 行き成りクスノハ様が俺に抱きついてきた。スキンシップ宜しく、柔らかくない双丘と二つの突起が俺の背中に当たっている!


「や、やめれッ!」

「恥ずかしがるなよ」

「恥ずかしがれ!」



「素晴らしい大聖堂ですわ!」


 翌朝、さっそく俺はサセタ神様の聖堂を造った。素材はクスノハ様がゴブリンやオーク等の魔物を無双したお陰で沢山ある。


 大聖堂のモデルは、ラノベ系アニメ『異世界天使のお裾分け』に出てきた大聖堂のモデルにもなった、イギリスにあるウィンチェスター大聖堂だ。


 正面のゲートの上にある大きなガラス窓が特徴的で、俺の記憶の曖昧さはあるが、多分こんな感じの筈だった。


 大聖堂の中は長い身廊があり、高い天井と大きな窓ガラスは色鮮やかなステンドガラスが嵌っていて、そこから明るい光が差し込んでいる。


 祭壇には美しいサセタ神像があり、ルミアーナ様を初め、俺たち四人はサセタ神様に祈りを捧げた。


「本日、わたくしはここで祈りを捧げておりますわ」


 ルミアーナ様は大聖堂に一人で残り、クスノハ様とシルフィは修行の為に、土壁の外へ魔物退治に出かけ、残った俺は道路造りからの分譲作業を始めた。


 今は四人しかいないが、今後を見据えて五階建ての大きな庁舎や衛兵詰め署、消防署や学校等を造る。街造りゲームみたいでめちゃめちゃ楽しい。


「あれ?」


 土地改良の為に『地形把握』の魔法を使っていたら、地下のかなり深い場所に温泉らしき反応があった。


「温泉が出るのか?」


 温泉が出るか出ないかで街造りのコンセプトが変わってくる。温泉が出るのなら、箱根のような温泉街を造りたい。


 俺は『スキルメイク』の糧として、異空間収納から魔物のむくろを取り出す。


「スキルメイク、土壌掘削魔法!」


 土壌掘削の魔法を覚えると、温泉を求むて穴掘りを初めた。


 穴の幅は大体ニ十センチ程度にして、ドンドン魔法で堀り進んでいく。掘って出てきた土や石は錬聖スキルの素材となるので、自動人形オートマターを三体造り、仕分け作業をさせた。もちろん自動人形オートマターは可愛い女性型だ。名はアルファの続きでベータ、ガンマ、デルタにした。


 俺が掘削魔法で穴を掘り続けていると、肩を叩かれた。振り向けばそこには仕分け作業をしていたガンマがいた。


「ごシュジンさま、コレを」


 ガンマはそう言うと右手を差し出し、手には岩の塊りが乗っかっている。


「なに、それは?」

「ホウセキのゲンセキです」

「はい?」


 ソフトボールより大きい岩の塊り。俺は『スキルメイク』で鑑定スキルを取得して調べてみる。


「マジか!?」


 それは、めちゃめちゃデカいダイヤモンドの原石だった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る