第25話 クスノハ無双
「ウリャ! ホイ! ソリャ!」
クスノハ様を先頭に俺たちは森の中を下流目指して、下水道を錬聖スキルで地下に作りながら進んでいた。
道中でクルッテールに見つかってしまい、魔物が次々に呼び出されている。
ゴブリン、オーク、デスベア、六角鹿、ブレイドウルフ、レッドスパイダー、ウッドマン等など、わんさかわんさかと出て来るが、クスノハ様が二刀の剣を振り回し、オラオラ無双状態になっている。
俺とルミアーナ様、シルフィは、俺が作ったドーム型のシェルターに避難し、窓ガラス越しにクスノハ様もオラオラ無双を傍観している。
クルッテールに呼び出された魔物達は、まるで洗脳でもされているのか、勝ちはあり得ないクスノハ様に玉砕アタックを仕掛けている。
「雑魚ばかり呼ばないでドラゴン呼んでこいよッ!」
無茶苦茶な要求をクルッテールにしているが、ドラゴンとかは来ないで欲しい。何せ、俺は異世界に来て数日しか経っていないのだ。ゴブリンやオークでも、まだまだ怖いモンスターだ。最強ドラゴンとか、マジ勘弁して欲しい。
嵐の様な連撃と鮮血の旋風が止むと、「チッ」とクスノハ様はボヤキながら、投げナイフを投擲して、木の上のクルッテールを簡単に仕留めた。
「……瞬殺できるなら、さっさとやってくれ」
◆
森の中を流れる綺麗な渓流。このまま飲用としても使える程に、水は濁りなく透き通っている。
ちらほらと魚影も見えるので、この川の水を開拓村に引き込めば魚釣りも出来そうだ。帰ったら用水路から村の中を流れる小川を作ろう!
渓流の下流と村からの下水道を繋げ、下水道口には魔物が入り込まないための頑丈な柵を立てる。
「王都にもしっかりとした下水道があれば、あれ程の悪臭に悩む事もないのですが……」
そう呟くルミアーナ様。王都の下水は側溝に流れる用になっていた。汚物も道路沿いの側溝に流れる為に、どうしても異臭が漂ってしまう。
「地下下水道であれば異臭は大丈夫ですよ」
「オホホ。素敵な街が出来そうですわね」
街か……。今はまだ四人しかいない、村にもなっていない開拓村。ルミアーナ様のビジョンは国造りだから、まだまだ前途多難だよな。
◆
川の上流まで上がる。途中もクスノハ様の無双は続く。最後の方はクルッテールが魔物を呼んでも魔物が来なくなった。この辺りの魔物は狩り尽くしてしまったようだ。
上流に行くと、そこから錬聖スキルで上水道のトンネルを作りながら開拓村に戻る。トンネルから用水路に繋げ、土壁の手前の堀には架橋を立てて、壁の向こうに作っておいた村の用水路に繋ぐ。
土壁には用水路より少し小さなトンネルを通した。トンネルに入りきれない水はここで堀の中へと落とす。これで村の中の用水路の流量を少しは調整できる筈だ。
◆
「お兄様、水車が回ってる!」
開拓村に入る大きな門を開けて直ぐに、シルフィが藤原式揚水機の大きな水車が回っている事に気がついた。
「雄大な眺めですわね。あのような水車は世界中でもここだけですわね」
藤原式揚水機は揚水するだけではなく、この開拓村のシンボルタワーになりそうだな。
「家の中の水道が出るか確認してみよう」
ようやく上下水道が完成した。次はルミアーナ様から依頼があったサセタ神様の聖堂造りだな!
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