第2話 お昼の電話

――プルルルル……


『もしも~し。私だよ~』


『今、電話大丈夫かな?』


『ん? なんだか周りが騒がしいけど、誰かと一緒?』


『えっ、そうなの!? ごめん、ごめん! お邪魔しました〜!』


『え? 話し続けてもいいの?』


『でも、大した用じゃないから……』


『“俺が声を聞きたいから”って……。もうっ! 後ろの人たちから“ヒューヒュー”って茶化されてるじゃん!』


『あー、ごめん! すぐ終わらせるね!』


『今朝聞き忘れちゃったんだけど、今日は何時頃帰ってくる? 遅くなるのかな?』


『“なんで?”って……、もし早く帰れるなら晩御飯は好きな物を準備しようかと思って』


『ん? “終わったらダッシュで帰る”? フフ……そんなに嬉しいの? じゃあ腕によりをかけて頑張っちゃうゾ!』


『メニューは何がいいかな? ハンバーグ? 唐揚げ? それともカレー?』


『……え? “晩御飯は私がいい”? それ朝御飯の時も言ってなかったっけ!? もうっ! 後ろで聞いてる人たち絶対に引いてるじゃん!』


『“別に引かれてもいい”って……。どんだけ私のことが好きなのよ〜』


『えっ!? まさかの宇宙規模!?』


『……私? もちろん私も同じだよ〜!』


『“どう同じ?”って……、話の流れから言わなくても分かるじゃん!』


『え? “ちゃんと言って”? もうっ! イジワルなんだから〜!』


『……う、宇宙一大好き……だよ』


『……こ、これでいい?』


『えっ!? “今すぐ帰って押し倒したくなった”!?』


『いやいやいや、近くに人がいるのに何言ってんの!?』


『“もう離れてるから大丈夫”って……、そりゃそーだよね! こんなこと聞かれたら“バカップル認定”されちゃうもんね!』 


『あれ? じゃあ今は二人きりってこと?』


『まだ話せるのかな?』


『やった〜』


『ねぇ、お昼ご飯は何食べたの?』


『そっか〜! 美味しかった?』


『え〜! “私が作ったご飯の方が何百倍も美味しい”って? それは褒めすぎだよ〜! でも、ありがと!』


『あ〜、声聴いたら会いたくなっちゃったなぁ〜。夜まで我慢できるかなぁ〜……』


『……なに!? “今から帰る”!?』


『いやいやいや! ちゃんと我慢しますから!』


『え? “何を?”って……?』


『……もうっ、分かってるくせに……。でも、そんなイジワルなとこも好きだよ!』


『あ〜ぁ、電話切るの嫌だなぁ……』


『あっ! そうだ! ねぇ、最後にチューして?』


『ね? お願い』


『キャー!! じゃあ私も! ちゅ〜!!』


『へへ……、じゃあ午後からも頑張ってね〜』


『バイバ〜イ!』


――ツー、ツー、ツー……

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