Lesson2 クールちゃん


「もしもし」

『………………』

「あ、もしもーし?」

『あなたですか。私に好意を示したのは』

「お、おぉ。そうだ。えーっと、クールちゃん?」

『はい』

「おぉ冷たい。クールだな!」

『そうですか。あまり指摘されることはないので、自覚はありませんが』

「そうかー。カッコいいと思うぞ」

『お気遣い感謝いたします』

「……」

『…………』

「………………」

『以上で通話を終了してもよろしいですか?』

「いやいやいや! ま、待ってくれ! そうだよな、俺が引っ張らないとだな。えー、本日はお日柄もよくまた足元の悪い中──」

『晴れか雨かハッキリとしてください。また、これは電話ですが』

「……ぷっ、ははっ!」

『……? 急にどうされましたか』

「いやいや、さっきのやり取りなんだけどさ。昔、同じようなことあったなーって思って」

『はぁ。そうですか』

「そうそう。もう四年前にもなるなー。高校生の時、入ってた文芸部が一人しかいなくて。二年になって後輩が一人入ってくれたんだけどさ。最初はもうなかなか心開いてくれなくてな──」




「えー、本日はお日柄もよくまた足元の悪い中──」

「晴れか雨かハッキリとしてください。それと、高校の校則が入部必須だから入っただけであって、好きでここを選んだわけではありません。活字とか読むの嫌いですし」

「お、おぉそっか……」

「……」

「…………」

「………………」

「……そ、それでは俺の好きな小説家ランキングー」

「はい⁉︎ え、今の流れ分かりませんでしたか⁉︎ 話しかけて欲しくないオーラ出してたじゃないですか⁉︎」

「い、いやそうなんだが、だ、だって、き、気まずいじゃん……? だから、な、何か話させて?」

「気まずいからって……ぷっ、何ですかそれ。ダサい」




『……そうですか』

「ん? なんか笑ってる?」

『……っ⁉︎ わ、笑ってなどいません、断じて』

「そうか? いやぁちょっとは笑ってくれたとおも──」

『訴えますよ』

「怖っ⁉︎ って、そういやあいつも同じこと言ってたなぁ……」




「セクハラで訴えます」

「だから本当に悪気はないんだ! 下着が透けて見えてしまったので、忠告程度にだな……」

「そういうとこあるから、先輩はいつまで経っても友達も彼女もできないんですよ」

「おぉい! 出会ってまだ三ヶ月のくせに俺の何を知ってるつもりだ⁉︎ 大正解だ‼︎」

「ほんとデリカシーないですね。いや、もう……うわぁ……」

「ガチ引きやめてくれ⁉︎ 本気で謝るから‼︎」




『……デリカシーの欠片もありませんね』

「なに⁉︎」

『そういう話を再びする時点で配慮のなさを晒していますよ』

「すまん。あいつとの思い出は全て印象付いてるからつい……」

『……ほんと、そういうとこですよ』

「ん?」

『いえ、なんでも……』

「そういえば、さっきからゲームの音が聞こえるんだが……」

『ええ。ゲームでレベリングをしています。その方が効率的ですので』

「作業の一環に組み込まれてる⁉︎ しかし、ゲームかー懐かしいな〜。そうそう──」

『ふん!』

「コード引きちぎった⁉︎」

『何の話でしょう。私はゲームをしていませんし、決してまた過去回想始まるから遮ったわけでもありませんので……‼︎』

「お、おう、そうなのか」

『はい。失礼しました。取り乱してしまい』

「ああ、大丈夫大丈夫。むしろクールちゃんの意外な一面を見れたようで俺的には満足だ」

『そうですか。では、御満足いただけましたか?』

「もちろんだ! クールちゃんの声が聴けただけで百億満点だな!」

『……そうですか』


「あ、切られた。うむー、やはり難しいなぁ。いきなりおとなしいタイプと話すにはまだ俺のレベルが足りなかったか? まぁ、最後は嬉しそうだった気がするんだが……お?」


『……もしもし』

「おぉ! おつかれ! いやぁ、今日も良かったぞ! さすが美少女新人女優だな!」

『先輩。だから女の子の話ダメって言いましたよね?』

「え? 別に女子とは言ってないが?」

『分かるでしょ! 先輩の後輩は私しかいないんだから!』

「別人設定なのだから問題はないだろう」

『いや、そうですけど……というか、他に思い出ないんですか⁉︎ 身に覚えのある話ばかりで、もう憐れみさえありましたよ!』

「憐れみあるの⁉︎ 仕方ないだろ、話するとか今までのエピソードとか好きなものについて会話するしかないのだからな」

『いいですか? 先輩はさっきから会話してないんですよ』

「なんだと⁉︎」

『基本的に一人語りか、オウム返ししかしてないです』

「や、やはりハーレムまでの道は険しいな……」

『ハーレムならなおさら会話力ないと女の子たちを回すことなんてできないですよ』

「むむむ……ならば次は会話レベルがカンストしたタイプのキャラになってもらうことで、そこから会話技術を学ぼうではないか!」

『会話レベルがカンスト? えぇ、またギャルですか?』

「いや、会話には聞く力が大事だとネット記事で読んだことがあるぞ。だからそれが得意そうなキャラ……そう、お姉様だ!」

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