第二十一話「閑話 ~千佐木 実桜編~」

 結月は自室目の前にある小さめの庭にいた。


(やっぱりここは癒される……)


 ここに来た当初からすれば、徐々に結月の軟禁状態という名の外との隔離生活も解けてきていた。


(あ……実桜さんだ)


 庭を挟んで反対側のほうにうっすらと実桜の姿が見えた。

 座って何かをしているように見えるがこちらからはよく見えない。


(なにしてるんだろう)


 結月は近づいてみた──



 近づくにつれ、実桜が何をしているのか判明してきた。


(あ、武器の手入れをしてる)


「? 結月様でしたか」


 気配に気づいた実桜が話しかけた。


「あ……すみません。お邪魔でしたよね」


「いいえ。武器の手入れをしておりました。結月様は……」


「はい、少し外の空気を吸いにきました」


 実桜の持った薙刀に目を移すと、通常の薙刀よりもかなり大きく柄の長さだけでも4寸か5寸はありそうだった。

 それよりも刃の輝きに比較し、目立つのが柄の年季の入りようだった。かなり古いことがわかる。


「大切にされているんですね」


 結月は年季の入りようから実桜が大切にしていると予想した。


「はい、これは代々千佐木家の当主に受け継がれているものですが、実際に使ったのは私の代からです」


「え……」


 結月は2つのことに気づいた。一つは12年前の涼風家の悲劇から、守り人が実際に妖魔退治をおこなうことになった証の品だということ。

 もう一つは、つまりそれが実桜一人の鍛錬の証での年季の入りようだということ。

 結月を模擬戦で負かせただけのことはあり、その力は並大抵の努力ではなかったことを示している。


「実桜さん、稽古をしませんか?」


 結月は実桜に稽古を申し込む。

 手入れを終えた実桜は立ち上がり、結月に向かい合った。


「私も同じことを依頼しようとしていました」


「ふふ。やはり、『武人』同士、気が合いますね」


「はい」


 二人は夕暮れになるまで稽古をおこなった──

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