第八話「決心」

 結月は必死にこの3日間の出来事を思い出していた。


(えーっと……じいちゃんとばあちゃんのイグが尽きるって言われて、それで綾城に向かってたら、手配書に書かれてて──)


「ああああああーーーーーーーーー!!!!!」


「「「「っ!」」」」


 結月の大声にその場にいた者が驚いた。朔を除いては。


「手配書ー! 手配書にわ、私の名前が!! ってあれ? 私捕まるの……? ……ですか?」


 控え目に丁寧に話すと、答えはすぐに返ってきた。


「ああ、あれは私が貼りました」


「え……?」


 結月が驚いたのは何度目だろうか。

 凛があっさりと自分の仕業だと白状した。


「どういうことだ」


 朔が凛に問う。


「朔様からは『家を出た涼風結月を連れてこい』としか言われませんでしたので、一番手っ取り早く会う方法はこれかと」


 なんの悪びれもなく発言する凛。


「それでいきなり手配書にして出したんですか?!」


「よっぽどそのほうが危険じゃないですか!」


 金髪の男と蓮人はそれぞれ意見した。


「しかし、私一人で探し当てるのはかなり無理がありますし……」


「あの……では、私は偽の手配書で冤罪になり、場合によっては死にかけたと……」


「そういうことですかね」


 結月はこの場で一番恐ろしいのは、凛ではないかと思った。

 にっこり笑いながら人が死にかけることを、平気でおこなったことに恐怖を覚えた。


「あまり勝手なことはするな」


 朔が凛を叱ったが、本人に届いているのかさえわからなかった。


「安心してください。運よく自力であなたを見つけられたので、手配書は取り下げておきました」


(手配書を出された街で暮らすのは不安で仕方ない……)


 結月は心の中で思ったが、育ての親の危篤も嘘であり、涼風家の仇ともいえる存在の正体がわかった以上、ここは一度その婚約者になってもよいと考えた。


(婚約者になることで朱羅が姿を現すかもしれない。涼風家の……お父様やお母様の仇が討てる)


 結月は決心をした。


「一条朔様! 私は……あなたの婚約者になり、朱羅を倒します!」

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