第七話「涼風家の滅亡」

「涼風家は朱羅に襲われ、滅亡した」


 朔の言葉に結月は思考が停止した。

 あの時の地獄の日が思い出される。




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「お父様っ! お母様っ!」


 目の前には両親が倒れている。

 結月が必死に話しかけても起き上がることはない。

 すると、父である千里せんりが応えた。


「ゆ……づき……逃げなさい……」


「お父様っ!?」


「森の……先の……神社まで……走りなさい」


「お父様っ!? お父様っ!!!」


 そこから結月の記憶は曖昧だった。

 父に言われた通り、必死に屋敷を飛び出し、木をかき分けて走った。

 自分が走っている方向などわからなくなりながらも、必死に走り続けた。


 振り返ると、自分の育った屋敷が燃えていた。

 涙があふれて止まらなかった──



──────────────────────────────


 結月はその日のことを思い出し、目に涙を浮かべた。


「お父様……お母様……みんな…………」


 その様子を見ながら、朔は話を続ける。


「朱羅はあの日、涼風家を襲って村を焼いて滅亡させた。だが、お前が一人生きていることはおそらく知らないままだ」


 結月は涙をこらえ、朔の話に耳を傾ける。


「一条家も涼風家の知らせを受けて屋敷へ行ったが、間に合わなかった。一条家の当主として、俺はあの日の真相と朱羅の居場所をつきとめなければならない」


「私の存在が朱羅を呼び寄せるかもしれない……?」


「そうだ。そして、その策としてお前を婚約者とする」


 結月は下を向き、考えを巡らせた。

 育ての親のもとで何事もなく暮らしていた頃には忘れていた、復讐心がよみがえってきた。

 だが、千十郎と清子のことが頭に浮かんだ。


「でも、じいちゃんとばあちゃんがもうすぐ死んじゃう……会えなくなる……」


「ああ、千十郎と清子のことは嘘だ」


「え……?」


 朔のあっさりとした返答に結月は腰が抜けそうになる。


「う……そ…………?」


「だから、このまま、お前には綾城、ひいては宮廷に俺の婚約者としていてもらう。いいな。」


 もはや言葉もでなくなった結月は、自分の身の置き場が決まるのを黙って聞くしかなかった──

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