第3話 いざ、ステータスオープン!

 父ドルフと母エルカの提案から神殿で行う神託の儀式を受けてから俺の将来についての話を行う事になっていたが、その日から凡そ20日程経った。

 この世界の時間の概念は元の世界と同じだが、実はまだ世界共通の時間や日付の考え方は無い。

 単純に年末年始は凡そ一緒なのでそこだけ合わせているようだ。

 その理由は同じ大陸であっても外交が困難、いや同じ国であっても関係を持つ事が困難だからという理由が挙げられる。

 困難である理由、それはこの世界の野生動物、通称魔獣はみんな馬鹿でかいからという理由があるそうだ。

 只のオオカミがまるでトラックのようなデカさだったりクマが7メートル級だったりと基本全部デカいそうだ。

 話を聞く限りドラゴンだと、ジャンボジェット機よりも遥かに大きそうだと、俺は考えている。

 まぁ、只のオオカミを狩るのに5人以上のパーティで挑まないとまず無理なので、ソロの冒険者はほぼいないようだ。

 「そんなに大きいんだ?」

 俺が信じられないようにそう呟くと、

 「ダンジョンの中の魔獣の方が狩りやすいから人はダンジョンの周りにしか集まらないの、エルフやドワーフとかの全部の種族を含めてね。」

 母エルカがそうダンジョン文化について話すと、

 「ダンジョンはダンジョンでトラップとかそういったモノが設置されているからダンジョンも十分危ないんだけどね?」

 姉のリアがそう一言付け加える。

 「だが、シルヴァの身体能力を見ると可能性ってモノを感じてしまうのよ。」

 自慢のヒゲを撫でながら父ドルフが好奇心を宿した目で俺を見る。

 「俺達ドワーフはとにかく好奇心が強く何かに挑戦するのが好きな一族だ。だから、お前が何を成せるのかまではわからんが、それはきっとこの世界ではまだ誰も成し遂げていない事だろう。」

 父ドルフの言葉を聞いて俺は考える。

 「・・・俺にそんな大業を成せるか分からないけど、とりあえずダンジョンは潜ってみたい。」

 俺の答えを聞いて、

 「なら明日の神託の儀が終わったら、またみんなで話し合おう。」

 「わかった。」

 そうして俺は自分の部屋に戻り、寝処に入った。


 翌日早朝、俺達一家は全員で神殿に来ていた。

 「ふわぁ~・・・ちょっと早く来すぎじゃない?」

 姉のリアが欠伸をしつつそうボヤくと、

 スパァン!!

 っといい音響かせながら母エルカに頭を叩かれた。

 「端ないからもう少しビシっとしなさい!」

 どうやら年頃の娘としてあるまじき行為に喝を入れられたようだ。

 「・・・どうやらやってくれるようだぞ?」

 父ドルフの視線の先に神官の姿が見えた。

 「いよいよか、楽しみだけどどうなることやら・・・ん?」

 俺がワクワクソワソワしていると後ろの方からやってきた人達に声をかけられる。

 「あっ!?シルヴァ君だ!?シルヴァ君もこれから神託の儀を受けるの?」

 近所で宿屋をやっているシィープ一家の長女で幼馴染になるレイミィに声をかけられた。

 「あら?レイミィちゃんおはよう、マリンさんも旦那さんもおはようございます。そちらもこれから神託の儀?」

 母エルカが挨拶をすると、

 「えぇ、ウチのレイミィも神託の儀を受ける年頃になったので、親としては期待半分不安半分ですがね・・・」

 母に挨拶されたシィープ一家のご夫人のマリンさんが挨拶を返し、

 「シルヴァ君は相変わらず落ち着いているね?ウチの子達にも分けて欲しいくらいだよ。」

 シィープ一家の大黒柱のアルバさんが眠そうにしながら俺に向けてそう語りかける。

 「ハッハッハッ!子供なんぞそんなもんじゃろうて?大人しすぎるのも考えものじゃぞ?というか、シルヴァは大人しいが落ち着いてる訳では無いわい。この間も数打ちで軽く素振りをさせたら剣がバラバラになりおってな~」

 父ドルフがアルバさんにそうしていた事を話すと、

 「あら?あなた?私はその話を知らないのですけどどういう事ですか?」

 母の目がキュピーンっと光った。

 「ねぇねぇ、シルヴァ君はどんな能力だと良いの?」

 シィープ一家の次女で一つ年下のサミィが俺の所に来てそう尋ねてくる、が、この子結構おませさんで普通に腕に絡みついてくる。

 「あっ!?サミィ、何シルヴァ君の腕を組んでるのよ!?」

 そして、レイミィも反対の腕に絡みついてくる。

 「あらあら?今から共有されちゃって・・・将来がちょっと不安になっちゃうわ~」

 とか言いながら楽しそうな母にそう言うならどうにかしろよという思いを視線に込めて睨めつけるが、

 「あら?ハルトはまだぐっすりなのね?可愛くて癒やされるわ~!」

 母エルカはマリンさんの腕の中にいる赤子のシィープ一家の長男ハルト君を見て悶えている。

 確かにハルトは可愛いけども、二人共密着しすぎて暑いを通り越して熱い!!子供の体温は高めなんです!?

 「おっ!?中に入れるようじゃな?では入りに行くか。」

 神殿に入ったら、

 「神託の儀を受けにきた方々ですね?ご家族の方はこちらで、儀式を受ける方はこちらに入らしてください。」

 と神官様に案内された。

 「これは・・・」

 案内された部屋にあったのは、大きな女神像だった。

 只、礼拝堂にある女神像と違って、

 「材質がミスリル?」

 更に艶がある白を伴った女神像だった。

 「こちらのミネルヴァ様の女神像に向かって今日まで感謝を祈りに込めて、捧げなさい。そうすれば女神様があなた達に祝福を与えるでしょう。」

 そう言われてた俺とレイミィは祈りの姿勢を取り、今日までの感謝を捧げた。

 「「女神ミネルヴァ様、あなたのお蔭で今日まで生きていくことが出来ました。これから先を生きゆく我らの行末をどうか見守り下さい。」」

 二人で同時に祈りを捧げると女神像が一瞬閃いたが誰もそれには気づかなかった。

 「・・・はい、もう大丈夫です、それでは帰ったら家でと唱えて下さい。人のいる場所で唱えても良いのですが人のステータスを見れてしまう方もいるので最初は自分一人で確認する事をオススメします。」

 神官様はそう教えてくれたので、

 「ありがとうございます。」

 「帰ったら確認して、家族とも話し合って見ます。」

 俺とレイミィがそう言うと、神官様も満足そうに、

 「いえ、これが私の務めですから、ではお帰りいただいても大丈夫ですよ。」

 俺達は部屋を退室して家族と合流そのまま家族合同でお祝いをする事になった。


 その後、父ドルフが酒を運び、母エルカが料理の材料を運び、姉のリアは先に宿屋に入りデザートを作り、シィープ夫妻が色々料理を作っていく。

 幸か不幸か調味料の類はダンジョンで結構手に入るので庶民でも結構普及しているのである。

 それよりも問題と言えるのが材木、即ち建材である。

 新しくこの街に移住出来た方は材木が集まらず結局のところ基礎の部分にテントを建てて雨風を凌いでいるようである。

 地属性の魔法を使い、祠のような物を作ってテントを建てている人もいたりするがやはりそれは稀である。

 それはともかくとして、俺は今レイミィの部屋にいる。

 何故か?それは俺もよく分からないのが本音だ。

 家でステータスの確認をしてからこっちに来るつもりだったがレイミィに引きずり込まれてしまった。

 ともあれ、俺はようやく自分のステータスを確認する。

 「ステータスオープン!」

 ドキドキしながら見えたその先には、



 名前 シルヴァ・スミス

 クラス ノービス

 祝福 全能力100倍  アイテムボックス  全適正

 各身体能力

 体力 3400

 魔力 3000

 物理攻撃力 2900

 物理防御力 2700

 魔法攻撃力 2500

 魔法防御力 2200

 敏捷 2000

 運 1000


 スキル

 鍛冶 目利き 魔力視 索敵



 ステータスを見た俺は少し驚くどころか驚きのあまり固まってしまった。

 「これちょっと能力高すぎない?いや、でも・・・」

 正直これだけあっても外の魔獣を余裕で狩れるとは思わない。

 何故ならみんな超大型サイズだからだ。

 デカいは強いと昔からの相場で決まっているのである。

 「やっぱりダンジョンで修行をしてからだな。」

 俺がそう言うと、

 「・・・やっぱりシルヴァ君、外の世界に行くの?」

 俺の隣にいたレイミィが消え入るような声で俺にそう問いかけた。

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