第2話 知らない男の子
ゴールデンウィークが過ぎ、中間テストが終わると、うちの学校ではしばらくの間、特にこれといったイベントもない期間が続く。
何かしらの部活動に打ち込んでいるわけでもないわたしにとって、ひたすら待ちわびるのは夏休みくらいのものだろう。
それでも、学校生活というものはその日ごとに楽しいことや腹が立つことがあるもので、わたしは毎日の出来事をいつも帰り道に出会うあのネコに話していた。
ネコが聞いてくれているわけではなかったとしても、わたしにとってはちょうどいい気晴らしだった。
だから、その日の帰り道もわたしはいつもの場所でネコとの再会を期待した。
でも、そこにいたのはネコではなかった。
いつもネコが立っている場所に知らない男の子が一人。
見覚えのない子だ。他校の生徒なのだろう。私服であるけれど、小学生には見えないから、わたしと同じ中学生だろう。学校が休みだったのか、すぐに帰宅して着替えたのか、はたまたサボりか。
いずれにせよ、ネコがいないのは彼がいるせいではないだろうか。
しかし、それも仕方のない事。
わたしはネコとの会話を諦めて、彼の前を素通りしようとした。
その時だった。
「……あの、ちょっといい?」
突然、彼に声をかけられた。
まさか話しかけてくるとは思わず、わたしは動揺してしまった。
周囲を見ても、わたし以外は誰もいない。人違いではなさそうだということを確認してから、わたしはおそるおそる彼に返事をした。
「え、わたし?」
すると彼はホッとしたように笑みを浮かべ、うなずいた。
実に爽やかな表情だ。花にたとえるならヒマワリのような。
しかし、爽やかなのはいいけれど、面識のない彼の態度は、わたしにしてみればやや馴れ馴れしく感じてしまった。
「何か用?」
突き放すように訊ねると、彼は言った。
「突然なんだけどさ……僕とお付き合いしてくれない?」
それは、あまりに急な告白だった。
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