学校帰りにあなたと

ねこじゃ じぇねこ

第1話 いつも話すネコ

 いつもと変わらない道。

 それが通い慣れた中学校の通学路。

 小学生の頃に歩いていた道よりも少しだけ長いその道は、朝には朝の、夕方には夕方の良さがある。

 学校は楽しいけれど、わたしは帰り道の景色の方が好きだった。

 西の空に輝く夕日が綺麗だから。

 それに最近は、少しだけ密かに楽しみにしていることもあった。


 学校を出て少し歩いた地点でのこと。

 今年の春頃から見かけるようになったオレンジ色のトラネコが、必ずと言っていいほど下校中のわたしに声をかけてくるのだ。

 猫が声をかけてくるだって?

 そう思う人もいるかもしれない。

 でも、実際にわたしが歩いて来るのを見ると「にゃーん」と長い声で鳴いて歩み寄って来るのだからそう言わざるを得ない。

 毛並みもいいし、やせすぎてもいない。

 けれど、近所の人によればノラネコなのだそう。


「はーい、今日もお疲れさま」


 わたしがそう言うと、ネコは「にゃーん」と返事をする。

 その頭を軽くなでるのが、学校生活で疲れたわたしのささやかな癒しだった。


「今日はどっと疲れちゃったよ。授業では苦手な問題を当てられちゃうしさ。参ったよ」


 その日その日の愚痴なんかもネコは目を輝かせて聞いてくれる。

 いや、聞いてくれているわけではないのだろう。

 きっと人肌恋しいか、そうでなければご飯が貰えないか期待しているに過ぎない。

 それでも、このネコとの触れ合いは、多感な時期だとか大人たちに言われるわたしにとって、とても大事な機会だった。


「じゃあね、ネコちゃん」


 数分のやり取りの後で、わたしはネコに別れを告げる。

 ネコはやっぱり「にゃーん」と優しい声で鳴き、いつものように見送ってくれた。

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