あやしあやかけ

黒白 黎

あやしあやかけ

 日本のどこか、それはあった。

 奇妙なお面をかぶった少年たちがはしゃぎながら野を駆けまわっている。

 賑やかに楽しそうに走っている。

「おっと」

 少年のひとりがぼくの足に引っ掛けて転んでしまった。

「大丈夫?」

 少年の手を引っ張った時、風が吹き、少年のお面が空高く舞い上がった。偶然にも少年の素顔を見えてしまった。少年の顔は整っておりそれは少女ともともとれるし少年ともとれた。とても美形で年頃なら惚れてしまうほどだろう。

 少年は両手で顔を隠し、ぼくから慌てて逃げるように走っていく。捨て台詞かのように

「顔のことは内緒にしておいてね」

 そう言って、少年たちの中に混ざり込み、森の中へと消えていった。


 そんな話を先日、祖母に話した。

 すると祖母は懐かしそうにあることを話した。

「あやしあやかけ」

「え、なに?」

「ひみつの言葉」

 シーと唇に人差し指を当てて見せた。他の人には話してはダメだよという、祖母の独特のニュアンスだ。他人に漏らしてはダメ。昔から言いつけられていたぼくは、祖母から「あやしあやかけ」を詳しく聞いた。

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