とあるVTuberの配信光景

アーカーシャチャンネル

どこで転売ヤーは道を間違えたのか?

【乳酸菌飲料が、まさかの転売に?】


 とあるタイムラインを見ていたバーチャル配信者はその内容に驚きを隠せなかった。


 ノートパソコンで一連の話題を拾ってはいるが、内容が内容なのでフォローしきれない。


「ゲーム機や最新スマホなどのようなものだけでなく、遂に転売ヤーは手段を選ばなくなったのか」


 この男性配信者は、手元にあるスマホでも一連の転売ヤー案件を見ている。


【転売ヤー案件は、何としても……】


【しかし、転売ヤーに対抗して商品を買い占めるという行為自体も問題がある】


【生活必需品の買い占めは、どちらにしても転売ヤーではなくても炎上のターゲットにされるだろう】


【転売ヤーに正義はない】


 SNS上のつぶやきを目で追うにしても、あまりにも内容が多すぎた。


 そして、彼は転売ヤーを題材とした小説で転売ヤーの行為が悪であることを訴えようとしたのである。



 しかし、WEB小説で類似題材の小説を探すのだが、見つからない。


「サイトは既にいくつか探したが、ランキングにもキーワード検索にも引っかからない。どういうことなのか?」


 題材が被らないという点に関しては、逆に言えば小説としては自分が初となる事を意味していた。


 それでも悩むのには別の理由もある。転売ヤー題材の小説を書いたが、何かの圧力で過去に削除されたパターンも……。


「何としても見つけないと、いけない」


 その中で、彼はある記事を発見する。それは転売ヤーの悪質転売行為を阻止するために結成された組織の記事だった。


「フィギュアハンター? 実在していたのか」


 フィギュアハンターと呼ばれた彼らは、のべぷらという小説サイトのヒロインのフィギュアを転売していた転売ヤー摘発に貢献したという。



『皆さん、今回はご報告がありますわ』


 メイド服姿だが令嬢のバーチャルアバターがモニターに表示されているが、これが配信者としての正体でもある。


『実は以前に話していた転売ヤーを題材にした小説が、予想に反して話題になっておりますわ』


 彼女の口から出た言葉には驚きを隠せない視聴者はいたが、それでもコメントからは衝撃の大きさを物語るワードが次々と……。


『しかし、私としては転売ヤーを叩きたいがために小説を出した訳ではありません。彼らの行為が無駄であることをわかってほしいからですわ』


『転売ヤーを叩いて正義をかざすような勢力もいるでしょうが、それは正義が暴走したネット警察にすぎません。権限を持たないものが転売ヤーを叩いても、同じことの繰り返しになりますわ』


『私は転売行為をなくすためにも、転売ヤーを自分で叩いて炎上させるのではなく、正攻法で対処してもらった方が……』


 彼女はどういった手段で転売ヤーに対応するべきか、それは切り取りなどでも発見できなかった。これを悪用して炎上させる勢力がいるかもしれないだろう。


 転売ヤーという存在を生み出す環境にも問題はあるだろうが、問題なのはそこではない事を語りたかったのかもしれない。

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